大地へ
少し空を眺め、王妃はナサムの前まで流れて行く。
「ナサム。お前がカ【か】国の者達を連れて来た為に、この国は幕を閉じます。わかっていますか?」
『はい…母様』
石化している為に声は出ず、心が伝わって来る。
「それならば、お前も還りなさい。ウィルタータの地へ。その石化は精霊の怒り…解く事は叶いませんが」
『こんな私でもここで…ウィルタータで眠ってもよろしいのですか?』
「もちろんです。その石化は、お前とこの国との絆の糸でもあるのですから」
王妃は優しく微笑んで、己の息子の石化を見守る。
石像の顔には小さな笑みが浮かんでいるようにも見えた。
都の人々は王妃の言葉を受け取り、カ国の兵士達が居ようと構わず祈り始める。
「国守護者【ガーディアナ】ルフィアス…どうか、この都を守って」
一人の老人が呟くと、無言だった人々が同じように繰り返し始めた。
撤退を始めていた兵士達から見たらかなり無気味な光景である。
そんな中で苛立った兵士が一人、老人を蹴り飛ばした。
老人は軽々と飛ばされるが、他の人々が受け止めてくれた。
皆が心配して声をかける。
老人が頷くと人々の輪が和む。
そして、老人は改めてその兵士を見て悲しそうな目をする。