環心
そして鳥達を追うように七つの光が八方に飛び散る。
その光はナサムのペンダントの石が弾けて発生したものだった!
しかし、石化は止まらない。
そのすぐ近くの王座では、国王に死の影が降りて来る。
身体が力を失い、左に傾き、隣で支えていた王妃に頭を預けた。
「外からの干渉がなければ、今までの平和が続きましたのに…」
王妃は国王の頭を抱いて、そのまま目を閉じた。頬を次々と涙が伝う。
しかし、唇をかんで王妃は立ち上がると、国王を真っ直ぐに座らせて手を離すと大きく息を吸い込む。
「還身化水・拡散」
呟いて手の平を胸に当てると、王妃の身体が透けていき…そして、意識が都全域に拡散して行く。
「私は、ウィルタータを愛しております。
今までも、そしてこれからも愛し続けるでしょう。
民達よ。私達と精霊達で都の中に火の心を封じます。
都の再建のために、今はここを離れなさい。
その時が来るまで、自然を愛し、精霊を慈しみ、志しを忘れないでください」
空気中の水蒸気いっぱいに拡がった王妃の声に、都中の人々が涙していた。
ある者は道端で兵士がいるのも忘れて。
ある者は部屋の隅で縮こまったまま。
ある者は机に突っ伏して泣いていた。
「あなた…もういいですか?
…還身化土」
王妃が空気に溶けかけた手で国王の髪を撫でると、国王の体は服ごと砂化した。
「お休みなさい…痛みが癒えるまで」
砂が崩れ都中に散って行った後に残った、宙に浮く光に微笑む。