祈り
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ルフィアスは、一面銀色の世界にいた。
よく見ると、石造りの建物の中らしい。
壁自体が光を発していて月光の下のように明るい。
傍らには赤ん坊が入っている揺りかごがあった。
ルフィアスは揺りかごの前にひざまづくと手を組み合わせ祈り始める。
ウィルタータの平和を…
神殿のいくつものカーテンの奥で、祀られている半透明の白い石が赤い光の帯に囲まれていた。
軍隊の兵士達が、都の正門から一斉に入り一般の人々を襲ったり捕まえようとするのを、都の術師達が押し留めていた。
「縛化木っ!」
ある術師が杖に力を集めて言うと、術師周辺の兵士が持つ、木を部品に使ったあらゆる武器から芽が吹き出し、兵士の動きを封じていく。
それを振り払った者、金属の武器を使う者が続けて襲いかかって来る。
「崩化光っ!」
一人の術師が言葉を口にすると、杖の発した光を浴びた金属の武器防具がすべて溶けるように砂と化した。
その中で赤毛の術師達が特に率先して人々を避難させて行く。
よく見れば進行してきた兵士達の多くも赤みを帯びた髪の者が多い。
都の赤毛の術師達は懸命に動きながら歯噛みする。
何故この兵士達と相対せねばならないのか……彼らは同じ国の出身者だというのに……