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桃島物語  作者: 鴇時
1/2

1話 黒い角

 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴る。


 つまり、俺は今日も遅刻することが確定したのである。


 ガラッ


「すみませーん! 遅こぐぁ!」


 スパーンと叩かれた俺の頭は後ろ……どころか横へ吹っ飛ぶ。

 正面から頭を軽く叩かれたようにみえたのにうしろではなく横に吹っ飛ぶなんて常識から逸脱している。いや、まあウチの担任に常識を求める方が間違っているのだけど。


「で、きょうの言い訳はなんだ?」


「きょうの……っていつもほんとのことっすよ!!」


「で?」


「はい……昨日はドラえもんをみて夜更かししちゃって」


「いつのだ?」


「へ?」


 一瞬何を言われたのかがわからなかった。この言い訳をつかうのは初めてなため、この返しは予想していなかった。


「だからいつのドラえもんをみた?」


「えっと、昔の30分映画です」


「タイトルは?」


「おばあちゃんの思い出」


「いいよなぁ! あれは感動作だよな!!」


「あ、はい」


「声もやっぱり昔が好きだぞ、先生は! よし、お前の趣味の良さに免じてきょうの遅刻はなかったことにしてやる! だがこうも毎日遅刻していると冗談じゃなく進級が危なくなるから気を付けろよ? この学校じゃなかったらとっくにアウトだからな?」


「はーい」


「じゃあ席に着けー。HRの連絡は隣のやつにでも聞いとけよ。じゃあ授業始めるぞー」


 私立桜大附属高等学校。C県のある桜大の附属高校であり、俺の通っている高校である。

 この高校は生徒主義を謳っており、俺のような遅刻魔の生徒に対してもある種の救済処置がある。


それが“教師の好みにあえばOK制度”。この制度を考えたやつは名前を考えるのが面倒だったのはまあわかる。だがこの制度のおかげで毎日滑り込みギリギリ遅刻の俺でも担任に呼び出される程度で済んでいるのである。


 制度自体は名前通り、教師が許せばそれでいいのだ。生徒主義のくせに結局は教師である。解せぬ……。できれば俺の担任のように言い訳ですべてを決めるのではなく、隣の茜先生のように気分で決めてほしいものだ。彼氏と喧嘩しなければ基本OKなんだし。ただ彼氏と喧嘩した日に遅刻すると地獄をみる……らしい。隣のクラスに聴いても口を開かないからどんな地獄かは知らないが、実体験だけはしたくない。










 そんな教師に吹き飛ばされる日常を過ごした次の日、俺の頭に何かがあった。


「頭に……なんだ? このとんがってるの。こぶ?」


 最初はとうとうこぶができたのか、そう思っただけだった。毎日のように担任に吹き飛ばされてきた俺だったが、いままであの担任に吹き飛ばされても何の傷もできていなかったのが自慢だったというのにここに来て、とそう思った。

 できれば本当にこぶであって欲しかった。


 こぶを治療するために鏡の前に立った俺はやっとそれが何なのかということに気が付いた。

 頭にあったのは黒いとがった何かが生えていた。触ると固く、尖った部分を押すと少し指が痛い。髪をかき分けて鏡にその姿をうつしたそれはまぎれもなく――。





 俺の頭には黒い小さな角が生えていたのである。






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