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リュリュ様のお忍びにまた付き合っているときに、あの少女に出会った。共にいる女を見る限り、やはり裕福なところに嫁ぐのだろう。
あの少女が幸せになれればそれでいい、そう私は思った。
「美しいというより、愛らしいというべきか」
「?」
誰を見ているのか分からなかったが、リュリュ様が見ているのがあの少女でないことを祈るしかなかった。
後日、その祈りは届かなかった。
「あの女の素性を調べろ」
私も知らない彼女の素性を調べろとリュリュ様が側近に命じていた。
まずい。彼女は結婚するといっていたではないか。それを覆すつもりなのか?
分からないまま時が過ぎていく。
頼むから、このまま分からないままでいてくれ。
涙も出ないほどに悲しみを背負った彼女が、笑っていられるように。
それからまたしばらくして、宮殿で舞踏会を開いた。
リュリュ様の気まぐれだ。もし、彼女が上流社会の出身であれば出てくるだろうからと。
なんと我侭なことか。
あの時と同じではないか。
賢帝と名高い今でも、変わりはないのか。私はそれに絶望した。