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「陛下」
玉座に座っている男、リュリュ様に私は声をかけた。
「如何した?」
「間もなく陛下の即位式典がございますが故、治安維持のための警備を強化したいと」
「ふむ」
リュリュ様は御歳二十五歳。十五歳でこの国の王に即位され、早十年。賢帝として名高い方でもある。
「フレード」
「は」
「少し息抜きがしたい」
「駄目です」
「何ゆえ」
「式典で御召しになる服が仮縫いすらまだです!」
侍女や侍従に戒めるよう頼まれていた。
「では、仮縫いが終わったら息抜きをしたい」
「……かしこまりました。その代わり、私もついていきますがゆえ」
「しかたないのぅ」
二人の攻防を他の臣下が見て苦笑していた。
私とリュリュ様は乳兄弟である。それ故、気心が知れていた。
「……ここに一時間後に集まるで、いいか?」
「何言ってんですか、リュリュ様」
「余も一人で歩きたい!」
リュリュ様の言う「息抜き」はお忍びで城下を出歩くことである。
民のことを知りたいという大義名分の下、リュリュ様は出かけたがる。
「分かりました。一秒でも遅れたら今度から一人歩きは無しですからね?」
そう、釘をさし私の家でリュリュ様と別れた。