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 ぱちぱちと火が燃える音がする。

「気がついたか?」

「騎士……様?」

「動かないで。傷口が開くと私ではどうしようもない。痛みを抑える薬湯だ」

 そう言って騎士様は私に薬を口移しで飲ませてくださった。


 あれから、十日ほどたっていると騎士様は教えてくださった。

 ここは国境付近の山小屋であること。

 雪で覆われているため、少しの間時間が稼げること。

 そんなことを優しく教えてくださった。

「それから、私のことを名前で呼んでもらえないだろうか。カルロッテ」

「……フレード様」

 恥ずかしく思いながら、私は初めて彼の名を呼んだ。


「ラッセ殿があなたとの挙式の少し前に頼まれた」

「え?」

 私がラッセ様を選んだこと。私がフレード様を見ていらしたこと。そして、陛下に側室にと私を願われ、断ったこと。

「……存じ上げませんでした」

「だろうね。ラッセ殿はそれはもう、掌中の珠のように愛でていらしたからね。あなたにあまりいい話を聞かせたがらなかった」

 そのあとも話が続いた。

 ラッセ様が私の側室入りをお断りしたことによって、「王家御用達」の看板を取られることになるかもしれないこと、ブラド様と陛下が会っていらっしゃることに気がついたこと。そして、ラッセ様はご自身が殺されるかも知れないことに気がついたこと。

「ラッセ殿にとってあなたは誰よりも愛おしい方だったようだね。あなたがラッセ殿を選び、添い遂げると言ったことが何よりも嬉しく、最期まで守れないことが悔しいようだったよ」

「き……フレード様」

「親子ほども歳の違う私に頭を下げて頼んでくださった。私は陛下の近衛騎士だと言うのにね。

 私も陛下のことが言えないとその時思ったよ。手を離れたはずのあなたが、私のところにどんな形であれ、戻ってくるということが嬉しかった」

 だから、とフレード様は続けた。私を守らせて欲しいと。

「私はラッセ殿と違い、剣を振るうことしか能のない男だ。それでもあなたを守りたい。あなたの傷が癒えたらこの山小屋を発ち、隣国へ不法侵入する。

 そのあとは傭兵崩れのようなことしか出来ないと思う」

「フレード様、私は贅沢をしたいわけではないのです」

 私はただ、愛する人と幸せになりたいだけなのだ。

「カルロッテ、あなたは私よりも強いかもしれないね」

「フレード様」


 傷が癒えるころ、私たちはその山小屋をあとにした。あえてそこにいた形跡を残して、隣の国へ入っていく。

「海の見える国だよ。あと数国渡り歩けば、不法侵入をあまりとがめない新興国があるという。そこに落ち着こうと思っている」


 痛む傷と、慣れない旅。ゆっくりと私たちは歩いていた。


 フレード様は本当に盗賊以外の仕事なら何でもなさっていた。

 私も出来る限りで、フレード様をお手伝いしていた。


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