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幸せですわ

作者: トム


A子はイケメンの医者の彼氏と結婚して、今は2児のお母さん。

しかも上の子供は慶応幼稚舎に通ってて、ママ友の中でもリーダー格。ママ友からは羨望の的だ。

下の子ももちろん慶応幼稚舎に入れるためにお受験頑張っている。

慶応幼稚舎の受験はあと9ヶ月に迫っていた。

幼稚舎の受験は子と親の試験。

知性と美貌を向上させるため、エステや、読書、絵画巡り、クラシックコンサートは欠かせない。

しかし、A子はもともと貧乏育ち。貧しくみじめな少女時代。上流階級の人と付き合うために持って生まれた美貌に教養マナーを磨き、医者の彼氏と結婚した。


ある日、ママ友B子とお茶をしてると、よく当たる占い師があると聞く。いつもなら話半分で聞くところ、息子のお受験の手前、占い師に占ってもらうことにした。


『息子の慶応幼稚舎のお受験について占ってもらいたいの。』

A子は話を切り出すと、占い師はいう。

『今のままでは受かりません。』

A子は内心怒りながら

『どうしてですの?息子に何か問題が?』

『いえ息子ではありません。あなたに問題があるのです。』

『私の何に問題があるんです?』

『あなたは疲れているんじゃないですか。今の生活に?』

『何を言っているんです?家族に友人に囲まれて、私は幸せですわ。』

当たっていた。A子は今の生活に疲れていた。幼稚舎での人付き合い、真面目だが気難しい旦那、

自分とはかけ離れた地位にいる旦那の親族、そして、息子のお受験。毎日すり減らして生きていた。幸せを追い求める自分自身に対する虚無感を彼女は感じていた。

そんな心の空洞を見透かされたような気がした。

『あなたみたいな人は多いのよ。幸せを追い求めるがあまりに鬱になっちゃうような人。あなたは幸せではないわ。他人に幸せだと思われるために四苦八苦してるのよ。』

占い師は私の心の中を知っているようだった。内心、心を掴まされながら、彼女は反論する。

『そんなこと関係ないわ。それがお受験とどう関係するのよ。』

『子供は敏感なものよ。親がそんな状態だったら、萎縮するの。そして、あなたは無意識に息子に過度なプレッシャーをかけているの。

私に恥を欠かせないでって。

あなたのエゴが息子のお受験を台無しにするの。あなたが本当に息子のことを思って受験させないのなら、息子は必ず落ちるわ。』

『じゃあ、どうすればいいのよ。』

『簡単なことよ。』すると占い師はパンフレットを持ち出した。

『これは、あるボランティア団体のパンフレットよ。あなたは今までいろんなものを着飾って、自分を防衛していたわ。きづつかないですむように。心を真っ裸にしてごらんなさい。そして、他人に奉仕するのよ。あなたはそれで本当の幸せが何かっていうことにきづくはずよ。その時にはきっと息子をいい方向に導けるはずよ。』


A子はB子に占い師のことを相談した。息子のお受験に落ちると言われたこと。ボランティア団体を紹介されたこと。

B子はいう。

『なーんだ私もよ。あの占い師、心を読まれてるんじゃないかって思うわよね。実は私もパンフレット渡されて私も参加してるのよ。』

A子は少し安心した。悩みを共有できる友を持つのはいいものだ。

『そうだA子もいってみない。ボランティア。心が清らかになるっていうか、清々しい気持ちになるわよ。』

『B子がいくんなら、私も一度くらいいってもいいかな。』

A子はボランティアに参加することを決意した。


ボランティアには意外と多く人が集まっていた。

ボランティア団体は、にこやかでいい人だった。

A子はみんなで汗をかいて他人にボランティアすることがこんなに嬉しいことだなんて知らなかった。今では、占い師に感謝の気持ちを伝えたいくらいだ。

A子はボランティア活動をすることにどんどん熱中していった。

A子は、B子がやめても活動し続けた。もうその頃には仲間もできて、居心地が良かったのだ。

B子の子供はお受験に合格した。

A子の子供はお受験をしなかった。なぜならA子は、幼稚舎の受験になんて本当の価値何てないと悟ったからだ。幸せは己の中で感じるものだということを真の意味で理解したのだ。

A子はこの上ない幸福感を感じていた。

『あーなんて私は幸せなんでしょう。それもこれも、教祖様のおかげですわ。』

カルト宗教団体にはまったA子をみてB子はほくそ笑んだ。













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