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逆転バレンタイン

作者: 雨宮千鶴

ずっと小さい頃の記憶。

男の子が私の名前を呼んでいる。

一体あなたは・・・


今日は2月14日、バレンタインデー。

これは好きな男子に女子がチョコを渡し、想いを伝える日である。

そして私は悩んでいた。

事の始まりは昨日、姉が見たこともないメーカーのチョコを買ってきたことからだった。


「日和~」

「どうしたの、お姉ちゃん」

いきなり姉が私の部屋に入った来た。

「はい、プレゼント」

「何これ?“お願いチョコ”?」

「近所のスーパーで5割引だった」

えぇ!?それって大丈夫!?

「賞味期限とか色々書いてないけど・・・まぁいけるでしょ!」

よくない、よくないよ、お姉ちゃん!?

「日和、あんた好きな男子とかいないの?ほら、明日バレンタインデーだし」

「い、いるわけないじゃん!!」

「顔、超赤いし~絶対いるね、これは。さぁ、白状しなさい!」

「分かったよ」


彼との出会いは今年の1月15日。場所は塾の2階の前から2列目の席。

時間、10時11分32秒の事だった。

私はついうっかり(決して狙ったわけではありません)消しゴムを落としてしまった。

すると隣の席の彼は床に落ちた消しゴムをすっと拾い、

「はい、これ」

とさわやか~な笑顔で渡してくれた。

ズキューンッ!!

私のハートは狙い撃ちっ!!彼はまさに私の王子様!!


「で、誰よ、そいつ」

「絶対半分以上話聞いてないでしょ」

「いや、『彼との―――』までは聞いてた」

「それ、一番初めだし」

もう、ヤダこんな姉・・・

「あとさぁ私、その人とどっかで会った記憶があるんだよ」

「気のせいじゃないの?」

あっさり否定ですか。

「とりあえずその人にチョコ渡してみたら?」

「え?ムリムリムリ!!」

「何で?」

「恥ずかしいし・・・名前もどこの高校かすらも分からない」

「えっ!?あんたこの1ヵ月何してたの!?」

「ずっと見てたぁ(ニヤッ)」

「あんたはストーカーか!!とにかくチョコ作って、明日の塾で渡せ!!」

マジですか~!!


てなわけで冒頭に戻る。

ちなみにもしかしたら学校にいるかもしれないのでチョコも持参である。

「・・・で、高梨はここな」

「はい!?なんでしょう、王子!!」

「・・・後で職員室に来い。お前の席は16番な」

あぁ、そうだった。今は席替えに最中だった。

16、16・・・っとゲッ!?

私の学校一の地味男、佐竹 駿!!

あのメガネでウザそうな奴であと1ヶ月でクラスが終わるっていうのに声聞いた事ない人じゃん!

終わった・・・私のハッピーバレンタイン運、凶だ・・・

いや、まだだ!まだ大凶ではない!

私は机の中に入れていたチョコ(ハート型に加工)の入った箱を握りしめ、願った。

“どうかあの人にチョコが渡せますように・・・”

「ん?」

チョコの箱が一瞬ピンクに光ったような・・・気のせいか。


担任からガミガミと長-いお説教を食らった後、私は下足室に向かって歩いていた。

その時、夢にまで見たあの声がした。

「高梨!」

あぁ、このなんとも言えないさわやかな響きって・・・

「王子!!」

「うわっ!」

これは王子の叫び!王子はこの学校にいらしてたのね!!

が、振り返るとそこには・・・佐竹(地味男)がいた。

あれ?王子はどこへ?

まさか・・・

「あんた、王子を食ったの!?」

「お前何言って・・・」

「いいから出せー!!」

私は佐竹の胸ぐらを掴んで揺すった。

「ちょっ、うわっ」

カシャーン・・・と佐竹のメガネが廊下に落ちる音がした。

そして私の前にいる(胸ぐらをつかんでいる)人は王子・・・?

どゆこと?

私の頭はフリーズした。

「・・・で、俺は何で胸ぐらを掴まれているんだ?」

「私の・・・塾の隣の人ですかっ!?」

「そうだけど」

もしや・・・佐竹=王子?

「こ、これ」

私は鞄からチョコを出す。

「あげる」

強引に相手にチョコを持たせる。

「じゃっ!」

「あ、ちょっと・・・」


あれから家に帰ってすぐ自分の部屋に入り、ベッドの上に寝転がった。

もう、何もかも終わった。

私の(実は初恋だった)恋も。全ての希望が消えた。

絶対嫌われた。もうあの時のような笑顔を見ることは出来ない。

でも・・・やっぱりどこかで見たことがある気がする・・・彼を。

何かが引っ掛かっている。


気が付くと、もう完全に日が暮れ、すっかり真っ暗になっていた。

そろそろ塾の時間だがすっごい今は休みたい。

でも行かないと母親が怒るので私は準備をして家を出た。

そこにはなぜか佐竹がいた。

「・・・どうしたの?道に迷った?」

「いや、ちょっとなぁ・・・これから塾だし、一緒に行ってもいいか?」

どーぞ。私には拒否権はありません。

「じゃあ、まず俺はお前の事が好きだ」

ブッ!

「何かの冗談、それ?」

「折角隣になれたし、思い切って告ろうとした」

はぁ。

「が、いきなり胸ぐらを掴まれた」

その節はどうもスイマセンでした。

でも少し疑問。

「どうして私の家を知っているの?」

「小さい頃、ここら辺に住んでいたから。お前の家によく行ったんだが・・・」

ようやく分かった、ずっと引っ掛かっていたことが。

「全然分かんなかった。だって今と昔じゃ雰囲気違うし」

「そうか?」

それすら知らなかったのか、あなたは。

「・・・私的にはメガネがないほうが好き」

「じゃあ今度から」

「あと・・・佐竹、今日は何の日か知ってる?」

「さぁ?」

「今日はバレンタインデー。つまり女子が男子に告白する日だよ」

「え・・・?」

彼は呆然としていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 微笑ましい二人のやりとりを楽しく読ませていただきました。
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