第七章【願い】
――あれから一度も私に不思議な時間が訪れることはなく、晴海に再会出来ることもなかった。晴海は一体、誰だったのだろう。大人になった私だったのか、私の心情が具現化したような、もう一人の私とでも言い表すべき存在だったのか、あるいは、イマジナリー・フレンドだったのか。考えて答えが出るようなことではないと思ったし、答えがあるようなことでもないように思えた。
私以外の皆――とは言わずとも、誰かしらは私と似たような経験をしているのだろうかと気になったこともある。だが、それを尋ねることを私はしなかった。根拠などないが、そうしてしまうことで私は、あの不可思議で大切な時間の輝きを自ら失わせてしまうような、あるいは、あれは夢であったのだと自ら認めてしまうような、そんな気がしたのだ。
確かに七夕飾りは風に揺れていたし、葡萄のゼリーも冷蔵庫にあった。けれど、あの朝、家族と共にカレンダーを見た時、日付は七月七日ではなかった。携帯電話のカレンダーも同様だ。時は七日前に戻っていた。あるいは、最初からその点を動いていなかったのかもしれない。ゆえに、私はあれが自分のみた夢だったという可能性を未だ否定し切れない。
それでも、こうして大人になるまで誰にも言わずに時間を過ごして来たのは、他ならぬ私自身が、あれが現実に起こったことだと――もしくは現実と、そうではない場所との境目で起こったことだと――認識しているからだろう。
どちらにしろ、自身の叶えたい夢を探し続けることが出来たのは、あの時間のおかげなのだ。たったの七日間が、私の人生とでも言うべき長い時間に影響を与え、私を変化させるに至った。無為に時間を流れさせ、子供から大人へと、ただ変化することを回避出来たことが、あの七日間が形あるものであったという証にはならないだろうか。
しかし、どれ程に考えても、あの時間に対しての的確な表現は見当たらず、比較対象がない以上、どう言い表せばいいのか、こんなにも時間が過ぎ去った今も私は分からないままだ。叶うならば私はまた彼女に会いたいと願っている。あの日も、それ以降の七夕の日も、私は同じことを短冊に綴って夢をみている。
今年も美しい夜空が見える。星が幾度も瞬く。私は今日も同じことを星に願うだろう。手元の五線紙を閉じて、私は短冊を作る為に立ち上がった。
高校生の頃に書いたものがベースになっています。




