また、会えますよ
掲載日:2026/05/02
ワイパーの音だけが、車内に響いていた。
ルームミラーに、女性の顔が映る。
スマホの明かりに照らされて、どこか青白い。
「〇△駅まで」
それきり、車内は静かになった。
ネオンが流れ、光が車内をかすめていく。
ルームミラーを、もう一度見る。
そのとき、その頬に、何かが一瞬だけ光った。
雨足が、少しだけ強くなる。
規則的な音だけが、時間を刻んでいた。
「……会えない時間が長くなると、つらいですよね」
スマホが、わずかに跳ねる。
「……えぇ。ずっと、待ってたから」
それきり、また会話は途切れた。
雨は、いつの間にか弱くなっていた。
「……〇△駅、着きました」
車が止まる。
女性は小さく礼を言って、ドアを開けた。
降りる直前、スマホの画面が一瞬だけ見える。
——そこには、笑顔のツーショット。
ドアが閉まる。
女性は、少しだけ背筋を伸ばして歩き出した。
その背中を、ミラー越しに見送る。
「……よかったな」
小さく、そう呟いた。




