表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特異点 -特殊怪異対策庁第10課-  作者: 霜月真
一章 マモリガミ
8/20

8 憤怒

11月30日 福岡県

特殊怪異対策庁 第10課管理区画

        戦術訓練区画 AM10:00


 ……正直に言う。

 この前より、キツい。


 「右!遮蔽物使え!」

 三雲の声が飛ぶ。


 「遅い!!」

 ——ドン!!


 俺の横で爆風。

 模擬弾が壁を削る。


 「うわぁっ!?」

 『……ひだり……!』

 マモリガミが警告。


 転がる。

 床スレスレを光弾が通過。


 心臓に悪すぎる。


 ここは、模擬市街地。

 廃ビル。 車。 標識。 全部、本物そっくり。

 「状況は——」  三雲が冷静に続ける。

 「敵三体。5号想定」  

 「視界不良」  「民間人ダミーあり」

 「ミス=死亡です」


 ……プレッシャー。


 「前進!」

 赤霧が突っ込む。


 ——ガン!!

 壁を蹴って跳ぶ。


 模擬怪異の頭部を粉砕。


 相変わらず人間じゃない。


 「ついて来い、村野!」

 「はい!!」


 俺は深呼吸。

 ——考えろ。


 この前の失敗。

 守られすぎた。


 今日は——動く。

 「マモリガミ、右後方!」


 『……りょうかい……』

 影が薄く展開。


 防御“半分”。

 顕現しない。


 ——制御。


 敵が跳ぶ。


 俺は滑り込み盾のような影で押し飛ばす。


 「今だ!」

 赤霧が拳を叩き込む。


 ——粉砕。


 連携。

 できてる。


 数分後。


 ——ピィィッ!

 終了音。


 全停止。

 俺は地面に座り込んだ。


 「……生きてる……」


 三雲が近づく。

 端末を確認。


 「……合格です」


 珍しい。

 褒めた。

 「判断速度、向上」  「侵食の抑制も安定」


 赤霧も腕を組む。

 「……まぁ、マシになったな」


 最大級の賛辞。


 「やった……」

 胸が熱くなる。


◆ ◆ ◆


 その夜。

 食堂。

 ラーメン。

 あのお店じゃないけど、念願の。

 「……うま……」

 泣きそう。


 『……うまい……』


 一緒に喜ぶな。


 そこに——


 「よっ」

 虫喰がトレー持って現れた。


 ニヤニヤ。

 嫌な予感。


「ねぇ、村野くんちょーっと授業なんだけど」

 声が低い。

 「4課って、知ってる?」


 「……いえ」


 「処理班」


 即答。

 「失敗作回収係」


 空気が凍る。


 「簡単に言うとね」

 虫喰はスープを飲む。


 「“適合失敗者”を殺す部隊」


 ……は?


 「暴走」  「侵食過多」  「制御不能」

 「そうなった人間を——消す」

 「人間ごと」


 喉が詰まる。


 「で、最近さ」

 虫喰は俺を見る。


 「福岡に、4課の人間来てる」

 「二人」

 「視察名目」

 「……でも実態は——」


 スプーンを置く。

 「ターゲット確認」


 『……?』


 マモリガミが不安げに揺れる。


 「……誰を?」

 分かってる。

 聞きたくない。


 虫喰は、静かに言った。

 「君だよ」

 世界が、止まった。


 「侵食率、上がってるでしょ?

 相棒くんとの対話も増えてるし」


 「東雲さん、隠してるけど」

 「黒野さん、もう切り替えてる」

 「三雲さん……気づいてるか微妙」


 「赤霧さんだけは——知らない」

 「知ったら、暴れるから」


 ……想像できる。


 「じゃあ、俺はどうなるんですか」

 震える声。


 虫喰は、珍しく真面目だった。

 「二択」

 「制御を完成させるか」


 「処分されるか」

 フォークで指す。


 「期限、近いよ」


 沈黙。


 ラーメンが、伸びていく。


 「……なんで教えてくれたんですか」

 俺は聞いた。


 虫喰は笑った。

 でも、目は笑っていない。

 「研究者だから」

 「奇跡が見たいんだよ」

「あと、貴重な実験体がいなくなるのは悲しいからね!」


 ◆ ◆ ◆


 その夜。

 ベッドで目を閉じても。

 眠れなかった。


 『……だいじょうぶ……?』

 小さな声。


 「……わかんねぇよ」

 正直な答えだった。


 でも。

 心の奥で、決めていた。


 ——絶対、生き残る。

 普通に生きて普通に死ぬんだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ