6話 事情聴取 その2
朝。
あくびを吹かしながら登校していると、紗世ちゃんに声をかけられた。
知らない仲でもないので、その場の流れで一緒に登校することに。もっとも、オレの行き先は高校で、紗世ちゃんは中学なので、途中までになってしまうが。
「朝はどうしたんだ?」
我が妹がいないことに疑問を持ったオレは、紗世ちゃんに尋ねる。
「朝ちゃんなら風紀委員のお仕事があるみたいで、先に行きましたよ」
「へぇー」
……あいつ、風紀委員だったのか。
一応、同じ家に住んでいる訳だが、コミュニケーションをしなさすぎて、今の妹のことを何も知らない。
妹との関係修復を手伝う、と紗世ちゃんは言っていたが、これはもう手遅れなのではないだろうか。
すると、紗世ちゃんが視線を逸らして尋ねてくる。
「お兄さんは、レナさんとご一緒ではないんですね?」
「ん? まぁ、あいつとオレの通学路は被らないからな」
というか何故いきなり後輩の話が出てくるんだ?
「レナさん、お姫様みたいな方でしたね」
「まぁ、外見だけ見ればそうだな。けど、
一癖も二癖もある奴だぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ、この前なんて『踏んでやるから横になれ』といきなり言われて、断ったら首に脚を巻かれて危うく絞め殺されそうになったからな」
「へ、へぇ〜」
そのとき、いつも完成されつくした笑顔を見せてくれる紗世ちゃんの笑顔が崩れかけていた。
「どうした? 体調悪いのか?」
「いえ、大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」
紗世ちゃんは一瞬で表情を整えてそう応える。
本当に大丈夫なのか?
「お二人は仲がよろしいんですね」
「今の話のどこでそう思った?」
「…‥ずるいです(小声)」
「え?」
「いえ、何でもありません」
そう言って紗世ちゃんは前を向く。
……ふむ。
小声で聞き取りづらかったが、いま紗世ちゃんは『ずるい』と言ったのか? うん、確かにそう言ったはすだ。FPSで鍛えたオレの耳に間違いはない。
「紗世ちゃん、嫉妬してるのか?」
「え⁉︎」
そのとき、紗世ちゃんは露骨に動揺した。
……やはりそうだ。
「もしかして紗世ちゃん──」
「っ⁉︎」
「ゲーム、したいのか?」
「……」
オレは同志となりうる人材を見つけ、無性に高揚してしまう。
オレは紗世ちゃんに顔を近づけて提案する。
「もしよれば、試験が終わったらオレの家でゲームしないか? 紗世ちゃんにオススメのタイトルがあるんだ!」
「え、え⁉︎」
突然すぎたか、紗世ちゃんはあたふたする。
それを見て我に返る。
「って、流石に強引すぎるか。すまん、忘れてくれ」
「い、いえ!」
引いたオレを掴むように、紗世ちゃんは言った。
「わたし! ゲーム興味あります!」
そんな紗世ちゃんの言葉に、オレは目を輝かせた。