46話 真夏の戦い その8
分岐点。
今までにも何度もあったはずだ。
大小はあるだろうが、それら全てが大切な分かれ道であり、全部が積み重なって今のオレになっている。
後悔は──ない訳がない。
あの時、あぁしていれば、あるいは、こうしていなければ、と思うことも珍しくない。
何を選んだとしても、きっとオレは何かしらの後悔をしてしまう人間なのだろう。
けれど、後悔なんてどうでもいい。
そんな感情が今のオレの胸には宿っている。
言ってしまおう。
ずっと臆して言えなかったことを。
「オレは──」
そのとき、スマホの着信音が鳴り響いた。
「……」
「……」
それが某有名なアクションゲームの主題歌だったので、雰囲気が台無しになる。
「……どうぞ」
珍しく気を遣った後輩がそう言う。
オレは携帯を耳に当てて電話に出る。
「……もしもし」
『あ、夜? 今どこにいるんだい?』
約束していた時間に過ぎたからか、ルークが電話かけてきた。
……なんて間の悪い。
「別荘近くの海沿いを歩いてる。後輩もいるぞ?」
『あー、もしかして邪魔した感じ?』
「……邪魔も何も、ただ散歩していただけだ」
『そっか。ならよかった。それはそうとバーベキュー始めたいから早く帰ってきてくれないかい?
「……あ、あぁ、分かった」
電話を切って後輩に向き直ると、後輩は笑っていた。
「じゃあ帰りましょうか」
そう言って、後輩は歩き始める。
オレはそんな後輩の後ろ姿に手を伸ばすが、それは届かない。
このとき、後輩を引き止められなかったことを、のちオレは後悔することになる。




