40話 真夏の戦い その2
砂浜に建てたビーチパラソルの下に座って、海パン一丁のオレはふと口にする。
「なぁ、もしかしてオレって物凄く幸せな部類の人間なんじゃないか?」
それを聞いた、同じく海パン一丁のルークが微笑して返事をする。
「どうしてそう思うんだい?」
「……どうしてって、そんなの決まってるだろ」
「──先輩」
「──お兄さん」
声に反応して振り返ると、そこには幸せの象徴たちがいた。
色白な肌。
後ろで結んでいる艶やかなブロンド。
白い肌によって強調された黒のビニキ。
そんな後輩の水着姿。
愛嬌のある顔立ち。
まず一番に視界に入る大きなたわわ。
露出が少なめなワンピース型。
そんな紗世ちゃんの水着姿。
「──っ」
2つの幸せが一斉に視界に入り、オレの脳みそはキャパオーバーを起こした。
そんなオレに紗世ちゃんが言う。
「お待たせして申し訳ありません。朝ちゃんとミナちゃんは後から来ますので」
「あ、あぁ…、そうか……」
「せ〜んぱい」
すると、後輩がオレの前に立った。
「どうですか?」
どうですか。
それが何を指している言っているのかは決して難しくない。
けれど、捻くれ者は思ってもいないことをペラペラと口にしてしまう。
「露出が多い。……せめて腹を隠せ」
「昭和の考え⁉︎」
目のやり場に困ってオレは目を逸らす。
それを見た後輩はいつもの小悪魔のような笑みを浮かべた。
「へぇ〜」
後輩はオレの隣に座ると、顔を近づけてくる。
「先輩。日焼け止め塗ってくれませんか〜?」
「……⁉︎」
後輩の白いスレンダーな身体が目に入る。
……日焼け止め、塗る⁉︎
「──あ、だったらわたしが塗りましょうか?」
そのとき、紗世ちゃんがそう言う。
「わたし、日焼け止め塗るのとっても上手なんですよ? よければお兄さんにも塗らせてください」
紗世ちゃんの水着には収まりきらない大きなたわわが目に入る。
……日焼け止め、塗られる⁉︎
熱射病だろうか。
そのときオレの鼻からは血が出た。
幸せな味は、鉄の味なのかもしれない。
***
遅れてやってきたミナと朝に、ルークが尋ねる。
「あれ? 2人はどうして上着を羽織っているんだい?」
「……別に」
「……日焼け予防です」
その表情は何故か暗い。
「そっか。なら仕方ないか」
ルークは日焼け止めクリームを手に取って朝に言う。
「よかったら日焼け止め、塗ろうか?」
「……」
すると、朝は軽蔑の視線をルークに向けて言い放った。
「結構です」
「……うっ!」
ルークは顔を赤くして悶える。
……そういえば、こいつドMだったか。
その時、ミナと目が合う。
しかしミナはすぐに顔を逸らしてしまった。
……やはり敬遠されているか。




