37話 お泊まり会 その2
「ただいま〜!」
最近のレナねぇは、鼻歌混じりに帰宅することが多い。
玄関で靴を脱ぐだけの動作でも、幸せなことが全身から伝わってくる。
「……おかえり」
ちょうど階段を降りていた私がそう声をかけると、レナねぇは笑顔で返す。
「あ、ミナ。ただいま〜」
そうしてレナねぇは私の横を通って階段を登ろうとする。
「……そっか。お泊まり会、今日だっけ」
「え?」
振り返ると、階段には善光寺さんの姿があった。
「お邪魔してます。レナさん」
「……」
じっと見つめ合うレナねぇと善光寺さん。
……なんだこの空気。
今、絶対に空気が悪くなってる。
***
夕ご飯はレナねぇとルキにぃも含めて全員で食べた。
私と善光寺さんが作ったカレーが食卓に並ぶ。天峰さんも手伝おうとしてくれだけど、包丁の持ち方が殺人鬼のそれだったので、休んでもらった。
「……」
食卓をさっきの空気が嘘のように、レナねぇと善光寺さんは穏やかに話している。
……さっきのは気のせい、だった?
それから私たちは5人でお話しをする。
会話の中で、名前についての話題が上がった。
私のことをシュナイツさんと呼んでいた2人だったけど、この家にはシュナイツさんがが他にもいるから、ややこしいと。
そのため、ミナで呼んでもらうことになった。それに伴って、私も2人の事をしたの名前で呼ぶことになった。
……朝さんと紗世さん。
***
食事が終わって、次にお風呂に入ることになった。
しかも、話の流れで、なんでか3人で入ることに。
ぼいん。
ストーン。
ストーン。
「朝さん! 私たちずっと友達だよ‼︎」
「……今そう言われるのはとても癪なのだけれど」
「?」
紗世さんが首を傾げてる中、私は朝さんを抱きしめる。
そう。これでいいんだ。
だって、ハグするときに、邪魔になる物がないんだから。
紗世さんは、朝さんの背中を洗う。
私はさっと体をゆすいで湯船に浸かった。
……横から見る紗世さんは、余計にボリュームを感じる。前にいる朝さんと比較してしまうって言うのもあるとは思うけど。
「どこかかゆい所はありませんか〜?」
紗世さんはノリノリでそんな事を言う。
「ないわ」
一方、朝さんはいつも通りのテンションでそう返した。
「そういえば朝ちゃん。わたし思ったんだけど」
「?」
「ルークさんって、朝ちゃんのこと好きだよね?」
「え……」
それは私も薄々思っていたことだ。
「……そんな訳ないじゃない」
「え〜絶対にそうだよ〜。さっきの夕ご飯のときも朝ちゃんばっかりに話しかけてたし」
「……」
「ミナちゃんはどう思う?」
「……あんな積極的なルキにぃは初めてかも」
「ほら!」
ルキにぃはあまり人に関心を抱く人じゃない。だって、抱かなくても、ルキにぃには人が寄ってくるから。ましてや異性ならなおさらだ。
「もしかしたら朝ちゃん告白されちゃかもね」
「本当に私のことが好だったならね」
「えー、結構脈あると思うんだけどなぁ。もしかして朝ちゃんってルークさんのこと苦手?」
「……ミナさんの前で言うのもなんだけど、少し苦手ね」
「え〜、ルークさんカッコいいし、優しいし、いいと思うけどなぁ」
「……」
気が進む話ではなかったのか、朝さんは黙ってしまう。
それを察した紗世さんは、別の話題に変えた。
身内の話だったけど、恋バナって、なんだがとってもお泊まりっぽい気がする!
それっぽいイベントを消化できて私は大変満足だ。




