29話 友達のもう1人の妹 その3
ゲームをしていると、隣に座るミナが立ち上がって言った。
「すみません、お手洗いに行ってきますね」
ミナはリビングを出ていく。
……あの子がいると、心臓がもたないな。
そんな鼓動が止まらないオレにルークが諭すように言う。
「夜のために言っておくけど、ミナは別に夜のこと好きじゃないよ?」
「……だろうな。初対面であんな好意的なやつ普通に考えておかしい」
「分かってたのか」
ルークは少し驚いた顔をする。
「でも僕には満更でもないように見えたけど?」
「キャバ嬢と楽しくお喋りする奴は普通の範ちゅうでも、間に受けて恋する奴はただの馬鹿ってことだ」
「夜はキャバクラ行ったことあるのかい?」
「ある訳ないだろ」
オレは未成年だぞ。
ルークはソファの背もたれに背中をつけると、天井を仰ぐ。
「あの子はね。レナに強い対抗心を持ってるいるんだ」
「仲が悪いのか?」
「いいや、そういう訳じゃないんだけどね。……ただ、ミナは昔から、レナができる事に強く固執して、レナが持っているものをいつでも欲しがる」
「兄弟、姉妹あるあるな気がするが」
「……そうだね。あるあるだ」
けれど、それが深刻なものだというのはルークを見ればなんとなく分かる。
「オレはどうすればいい?」
「ミナは満足するまで、夜の元を離れないと思うからそれに付き合ってくれればいいよ。問題はレナの方かな」
「後輩の方?」
そのとき、玄関の扉が開く音がした。
『ただいま〜』
聞き覚えのある声がする。
少しして、後輩がリビングにやってきた。
オレはそんな後輩に声をかける。
「よう、邪魔してるぞ」
「せ、せせせせせ先輩⁉︎ なぜうちに⁉︎」
「……遊びに来たんだよ」
そこでミナが戻ってくる。
「お待たせしました。──あぁ、レナねぇ、帰ってたんだ」
そのままミナはオレの隣に座る。
「う、うん。ただい、ま……」
すると、ミナはオレの腕に抱きついてきた。
「⁉︎」「⁉︎」
そして、唖然とする後輩に見せつけながら言った。
「夜さんって素敵な人だね。私、好きになっちゃったかも」




