27話 友達のもう1人の妹 その1
期末試験最終日。
試験終了のチャイムがなると、皆の表情が一斉に緩む。
良いデキだろうと、悪いデキだろうと、重りが外れたようなこの開放感は皆味わっている事だろう。もはや、オレたちを縛るものは何もない。
帰ったらとりあえずゲームをやろう。コントローラーを無駄に強く握りしめ、液晶から照射されるブルーライトを全身に浴びてやるのだ。
担任の話が終わり、ようやく帰宅の時間がやってくる。
帰り支度をしていると、ルークがオレの席にやってきた。
「夜、今日これから遊ばないかい?」
「ん、いいぞ」
友人が居ようが居なかろうが、ゲームはできる。何も問題はない。
「じゃあ、オレの家に──」
「いや」
そこでルークがオレの言葉を止めた。
「いつも押しかけて悪いし、今日は僕の家でゲームしないか?」
***
「大は小を兼ねるというが、オレは必ずしもそのロジックが全ての事象に当てはまる訳ではないと思うんだ。そりゃ大きければ大きいほど人の目は引くさ。けれど、それは同時に外面しか見ていないことになる。違うだろ? オレたちが求めているのはそんな単純なものじゃないはずだ。小さいものには小さいもの良さがあり、それらを同じカテゴライズに仕分けること自体がそもそも間違っている」
「じゃあ夜はどっちの方が好きなんだい?」
「大きい方だ」
「あ、着いたよ」
会話をしているうちにルークの自宅に到着した。
思えば、ルークの家に来たことがない。そのため、今回が初めての訪問になる。
「……」
ルークの家は、一言でいえば豪邸だった。
……嘘だろ。三階建て住宅かよ。
「それで夜はどうして大きい方が好きなんだい?」
「え、あぁ、抱擁力がダンチだからな」
「まるで抱擁された事のあるような言い草だね。ちなみに僕は小さい方が好きかな」
「ほう、その心は?」
パスワード入力によって解錠される玄関の扉を開けて、ルークは言う。
「僕はね。柔らかいより硬い方が好きなんだ。──脂肪より、肋を感じていたい」
***
家の中に入ると、案の定、広々とした空間が広がっていた。
その広さを存分に生かすためか、壁には絵画が飾ってある。
玄関からは螺旋状の階段が見えた。
その階段から、1人の少女が降りてくる。
……後輩、か?
そう思ったが、よく見ると違う。
後輩より明らかに背丈がなく、肉付きも少ない。
それに髪の色も微妙に違う。後輩は金髪だが、この少女は色が少し薄く、どちらかというと白に近い。
しかし、一瞬見間違えてしまうほど、その少女は後輩と似ていた。
「ルキにぃの友達?」
階段から降りてきた少女は、オレとルークの元にやってくると、ルークに視線を向ける。
「あぁ、友達の夜だよ。それで夜、こっちは僕の3つ下の妹の──」
「ミア・シュナイツです。兄と姉がいつもお世話になっています」
ルークのもう1人の妹、ミアが軽くお辞儀をする。
こちらを見るミアの瞳は、後輩と同じ青色をしていた。




