21話 虚ろな世界 その3
映画館で映画を観た。
内容は、主人公と病気のヒロインのラブロマンス。
ヒロインが病死するまでの間に繰り広げられる時間制限付きの恋愛模様が描かれている。
まぁ、よくある内容だ。
この手の作品は何度も目にしているので、ある程度の耐性がついてしまっている。よくできた内容だとは思うが、御涙頂戴の結末だと分かっていば、特質して思うことはない。
けれど、後輩はそんなテンプレ映画に涙を流していた。
「くすんっ、節子が、節子が〜‼︎」
ここまで感情移入する人も珍しい。
「残された彰人が可哀想すぎますよぉ〜!」
オレは思わず目を見開いた。
今知った後輩の新たな一面。
……そういえば、こいつと出会ってからまだ一ヶ月ちょっとしか経ってないんだよな。
知った気になっていたが、オレはまだこの後輩のことをあまり知らないのかもしれない。
人目も気にせず、後輩は泣き続けた。
***
昼食を摂るため、オレたちは近場のファミレスに訪れた。
後輩は目の下を赤くしながら、ドリンクをストローで吸っている。
「……先輩」
「ん?」
「……天国ってあると思いますか?」
なんかヤベーこと言い出したぞ。
「節子は、幸せにしてるんですかね……」
「主人公にあんなに想わて死んでったんだ、幸せなんじゃないのか?」
……知らんけど。
「そうですよね!」
吹っ切れたのか、後輩は笑顔になった。
オレはずっと、こいつのことをただの生意気な後輩だと思っていた。
けれど、もしかして、こいつは元々とても純粋な奴なのではないだろうか。




