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幕間-1-

 とある日の午後。昼食を取るために街をぶらつくアルド。

いつもは安さ優先で、ほとんど同じ店、同じようなメニューで済ませることが多いが、この日はエレナと2人、割の良い依頼を終えた直後で懐に余裕があった。


「つまり食事の価値は味と値段だけじゃないんだよ。早さの重要性を軽く見ちゃあダメだと思うな」

「早い、安い、うまい、だっけ?変な標語ね」

前世の記憶から得た格言は、不思議とアルド自身の価値観にもピタリと一致していた。

「果たして本当に行列に並んでまで食べる価値があるのか?その十数分、ともすれば数十分、もっと価値あることに使えるんじゃないか?おれの前世の世界では、立ったまま食べる店もあったぞ?」

エレナが眉をひそめ、訝しげな表情を作る。

「行儀が悪いわね……。そんなに急いで、あんたは何をするってのよ?例えば今日、この後やりたいことでもあるの?」

「……明日に備えてゆっくり休むよ」

大げさに手を広げ鼻で笑われた。どうやら分が悪いようだ。

「どうせダラダラするだけなら、食事をゆっくり取っても同じじゃない。命の恵みと今日の幸運に感謝して、仲間と語らい楽しい時間を過ごす。心身ともにリフレッシュされて、食後もパリッと動き始められるって訳……」

ふと、何かに気が付いたように言葉を切るエレナ。

「もしかして、仲間とか友達のいない奴の考え方なのかしら……?」


胸の奥がキュッと締め付けられるような心地がした。

心当たりはないはずなのだが、遠い記憶が図星を突かれて悲鳴を上げている。

「そういうことでは……ない……はず……」

このままでは精神に致命的なキズを負いかねない。必死で左右に泳ぎ回る目が雑踏の先に脱出口を捉えた。

「あそこにしよう!おれ、入ったことないな!」

アルドが指差す先にはレンガ造りの建物があり、丸い窓の先には食事を取る人々の姿がわずかに見える。看板から見てもレストランと見て間違いないだろう。

エレナからも特に異論なく、他愛ない雑談を切り上げることに成功した。



 レストランの中は混んでいるという程ではないが、それなりに賑わっていてなかなか人気の店なのではないかという様相だ。

威勢の良い声を上げながら獣人の給餌がキビキビと動く。

丸い木製テーブルは年季が入っているが、しっかり清掃されている。

丸太で作った椅子も不思議と座り心地が良い。


店内に漂う匂いが食欲をそそる。

どうやら肉料理だ。

しかしどこか珍しい、嗅いだことのないような匂いである。

店内の目立つところに掲げられた黒板には

【本日のランチ】として、やはり見慣れない料理名が白墨で書かれていた。


「てりやき?知ってる?」

「聞いたことないわね。……これはきっと当たりね!」

エレナは上機嫌に店内を見回す。

「たぶん、前世の記憶から再現された、異世界の料理よ!」


 前世の記憶から得た知識で画期的な発明を為すことは、創造者(クリエイター)の本領であり、それは道具や科学技術だけとは限らない。

優れた料理人は前世の料理の記憶を自分の経験値とすることはもちろん、未だこの世界に発想されていない異世界のレシピをも再現することができるという。

ただしそのレシピは想像力で補って成立する場合も多く、その記憶の持ち主がいなくなれば再現不可となるのが常である。

つまり、異世界の料理は巡り合うのが難しい、貴重な一期一会グルメなのだ。

「まだ人が集まっていないってことは、このメニューが出たのは昨日か今日かってとこね!」

エレナも望外の新たな味覚との出会いに興奮気味だ。



ほどなくして運ばれてきた【てりやき】。

甘みのある匂いが鼻腔を満たす。

香ばしく焼かれた鳥肉にたっぷりとかけられたタレが、店内の明かりを受けて宝石のように艶めいている。


そろって感嘆の声を上げる2人。

給餌はそんな客達の反応をどこか楽しんでいるようにも見える。

「なるほど、照り、焼き、ね」

「美味そう!いただきます!」

とろみのあるタレが纏わりついた肉を口に放り込む。

甘みと塩みが織り混ざった初めての味わい。肉は柔らかくほのかに炭火の香りがする。

「「おいしいー!」」


***


「ラッキーだったわね……。たぶん夜には行列できてるわよ」

「そうなっていたらおれは入ってないだろうなあ……」

ひと通り食べ終えて、初めての異世界料理の余韻に浸っていると、不意に背後のテーブルからポンッという破裂音が聞こえ、思わず振り返る。

ひとりの男が細長い瓶に入った、黒い液体を口にする光景が目に入る。

どうやらあの瓶を開栓したときの音だ。


―あれは……!?

「あ、私もあれ飲みたい。すみませーん」

エレナが給餌へ飲み物を2つ注文する。

アルドは未だ別の客が飲んでいるものから目が離せないでいた。

「エ、エレナ。あれが何か、知ってるの?」

「あら、知らないの?あれもどこかの創造者が再現した、異世界の飲み物ね。オリジナルのレシピは記憶の持ち主しかわからないみたいだけど、あんまりにも美味しいから、あちこちでなんとか真似して作っているのよ」

「へい、コーラ2つ、お待ち!」


テーブルへガチャンと音を立てて置かれた瓶。

黒い液体には気泡が浮かんでいる。


心臓は激しく脈打ち、呼吸が荒くなる。

震える手を伸ばし瓶を手に取る。よく冷えたそれはわずかに汗をかいている。

「い、いま、なんて?」

注文したよな?と給餌がエレナに目で確認する。

尋常ではない様子のアルドに2人は引き気味だ。

「コ、コーラ、だけど……」


―コーラ!!そう!こーら!Coke!!コーラだ!!!


言葉にならないうめき声を上げながら椅子から崩れ落ちる。

脳内にかつて感じたことのないほどの歓喜が溢れて止まらない。

「ちょっと!?大丈夫!?」

「なぜ、おれは、これを忘れて、いや思い出せずにいたんだ……」

どよめく店内。

しかし周囲の好奇の目も、心配するエレナの声もアルドには届いていない。

前世の記憶に由来する強烈な感情がアルドを支配していた。


這い上がるように椅子に戻り、恐る恐る瓶のコルクを抜く。

炭酸の弾ける音が鼓膜を揺らす。

「お、おおぉ……」

甘く爽やかな匂いに口元がにやける。

「……乾杯しよう。ここに至るまでの全ての巡り合わせに……」

「怖いんですけど……」

ドン引きしているエレナと瓶を軽くぶつけ、一気にコーラをあおった。


ガスが弾け、フルーティな甘みが口を満たす。

てりやきでこってりした口内がすっきりと流される爽快感。

独特なスパイス由来の香りはわずかに記憶のなかのモノとは異なってはいたが、確かにそれはコーラだった。

かつて毎日のように飲み、もはや中毒とも言えるほど愛していた燃料。


「……ふっ」

「な、泣いてる……!?」


***


 賑やかな街の喧騒のなかに、ガチャガチャと瓶がぶつかる音が混じる。

「多すぎる前世の記憶は人格に影響が出るってやっぱり本当だったのね……」

ホクホク顔でコーラの入った紙袋を抱えるアルドを憐れむような視線を送るエレナ。

「そんな怖い話じゃないさ!酒場のおっちゃんからコーラの話を聞いて、いつか飲みたいと恋焦がれるのと、そう変わらないだろ?」

「えぇ?変わらない……か?」

「なんだか他にも前世で好きだった食べ物とかがあった気がするんだよなあ。どこかで誰か創造してくれていないかなあ……」

「そもそも、あんたの前世と同じ世界ってそんなにありふれた記憶なの?」

「……確かに。でもコーラだけがたまたま世界を跨いで存在していたってのも逆に変じゃないか?」


 前世や異世界、そして今この世界との繋がりについて、答えのない議論をしながら歩いていると、通りに面した酒場に人が集まっているのが見えてきた。

何かを指差し盛り上がっている様子だ。


「何だろう?」

「ケンカ……じゃあなさそうね」

近付いて行くと、賑わいの先から張り上げられた大声が聞き取れるようになっていく。

「さあさあ!締め切り間近だよ!チャレンジしたい奴はもういないかい!?」

手に持つメガホンを口元には当てずに振り回している男は酒場の主だろうか、何やら呼び込みをしているようだ。


「大食い大会、とか?」

「あぁ、なるほど……」

遅めの昼食を済ませたばかりの2人は特に足を止めるつもりもなく、

通り過ぎざまに横目で催事の中身をうかがう。


縁や巡り合わせというものは不思議なもので、昨日までまったく目にしなかったモノに今日だけで2度遭遇することとなった。

「……コーラ、飲み放題…!?」

テラス席の軒下に吊り下げられているのは

【コーラ早飲み大会】と力強く書き殴られた横幕だった。

そしてその下方にある立て看板にはこれまた雄々しい文字でイベントの賞品が紹介されている。

「当店オリジナルのコーラレシピ完成記念!コーラをたくさん飲んだ奴が優勝!優勝賞品は、1年間うちでコーラ飲み放題だ!」


人生一周ぶりに魂の燃料に再会したばかりのアルドにとって、およそ数週間分の生活費に相当する参加費もさほど高いハードルにはならなかった。

優勝すれば賞品プラス参加費返却。それはつまりタダ同然。

「優勝できなかったらしばらくは自給自足ね」

「もちろん勝つイメージしかしていないぞ」


***


「それでは!大会本番の前に予選を始めるぞ!」

創造者のもたらした発明でもあるコーラは、市井による模倣であっても贅沢品と呼ばれる類のものである。

それが飲み放題ともなれば好事家にとっては非常に魅力的な賞品だ。

さらにはその権利を譲渡することで一儲けを狙う者も現れて、大会参加者は20人を超えていた。

「予選のルールはスピード一本勝負!最も早く飲み干した3人が決勝進出だ!」

参加者は2つのグループに分けられ、ふるいにかけられるようだ。

最初の組に振り分けられたアルドの元に開栓されたコーラが配られ、同じ組の参加者たちと横一列に整列する。

昼食をとった店のものとはまた違ったフレーバーがアルドの口元をだらしなく緩める。


「おいおい、ずいぶん小さい坊主だな。店長の子供か?」

参加者のほとんどが縦にも横にもでかい大男で、アルドは完全に見劣りしていた。

隣に並んだ男に侮られたアルドは眉を持ち上げ鼻で笑いながら応じる。

「おっさんこそ、もう腹がパンパンに見えるぞ?コーラ入るか?」

大会と好物でややハイになっているアルドが他の参加者と睨み合う様は催しを盛り上げるよいスパイスになり、見物客から煽るような野次が飛ぶ。

「いいぞ!盛り上がってきたな!第1グループ、準備はいいな!?」

ようやくメガホンの使い方を思い出した店主が叫ぶ。

「―はじめっ!」


一気に瓶を立てて黒い液体を喉奥へ流し込む。

―これはっ……!

店主がニヤリと笑いながらまたもメガホンを使わず声を張り上げる。

「言い忘れたが、ウチのコーラは、ガスが激強だ!」

想定していなかった炭酸の強さに何人かの参加者がイッキ飲みを断念する。強行して、むせ返り吐き出しているものもいる。

「もちろん吐いたら失格だぞ―!」


アルドは一瞬だけ強炭酸に面食らったものの、ペースを落とすことなくそのまま一気に飲み干した。

「しっかり味わうことができないのが残念だ……」

「おおっ!コーラを抱えながらやって来た少年、アルド選手!イチ抜け!」

野次馬の歓声の中に聞き慣れた声が混じる。

「いいぞー!アルドー!」



アルドに遅れること数秒で2人の男が飲みきり、1組目の予選が終了。

そのまますぐに、残りの参加者が瓶を片手に整列する。

2組目の中には大男たちの中にあってもなお目を引く、1人の巨漢が含まれていた。

「さあ!続いて2組目!用意はいいか!?」

ちなみに、と言葉を切った店主はまたもニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「この人一倍でかい男はウチのシェフ!優勝候補だ!」

獅子のたてがみのようなザンバラ髪をかきあげながらシェフが手を挙げ応える。

このとき全ての参加者が、やられた、と己の判断を呪った。

店側は最初からこのシェフを優勝させるつもりで大会を開いているに違いない。


「大会で消費したコーラは参加費でトントンか、いくらかプラス。優勝賞品は身内が抑えてノーリスク、宣伝大成功ってとこね」

エレナが笑いながら隣へやって来てアルドの肩を叩く。

「いい社会勉強になったわねー」

「ぐ……いや、まだだ!勝てばいいんだろ!」


 インチキくさい構造を隠そうともしない店主は、

不満を申し立てる参加者たちを無視して開始の声を上げた。

それと同時に巨漢のシェフはなんと瓶の飲み口を親指でへし折り、

大きくなった開口部でドボドボと自身の口に注いでみせた。

あっという間に空になった瓶を掲げてガッツポーズを決めるシェフ。

大盛りあがりの観衆。意気消沈の参加者たち。

「わははは!さあ!決勝戦を始めるぞ!」

店主の高笑いが通りに響き、アルドは頭を抱えるのであった。



 憮然とした表情で席につく参加者たち。

有り金のほとんどを参加費に出してしまったアルドもまた、一時のテンションに身を委ねたことの後悔で頭がいっぱいであった。

エレナに持たせたコーラの入った紙袋をぼんやり眺めていると、隣に件のシェフがどかっと座る。

「よお、なかなかいい飲みっぷりだったな、坊主」

「はあ、どうも……」

「がはは。心配するな、さっきのはパフォーマンスだ。決勝は公平に全員ジョッキで勝負だ。まあそれでもおれには敵わんだろうがな」

豪快に笑い、アルドの背を叩くシェフ。

確かにあのスピードは飲み口を広げる云々に関係なく圧倒的だ。

同じ条件でも勝つイメージがわかない。

しかしこのままではあまりにも悔しい。なんとか、一泡吹かせることはできないものか……。

「……あっ」


アルドが何かを思いつくのと同時に店主の声が響く。

「決勝戦のルールを説明するぞ!まあルールというほど難しいことはない!制限時間10分以内に一番たくさん飲んだ奴が優勝だ!」

おそらく普段はこの酒場で働いているのであろう給餌らしき女性たちが器用にジョッキを抱えて運んできた。

まずは1つずつ参加者の前へ置かれたジョッキ。

コーラが並々と注がれている。

「予選でも言ったが、吐いたら失格だぞ!」


コーラの表面に弾ける気泡を見つめながら、アルドは突如舞い降りた悪魔的アイデアを脳内で検証する。

「……危ないか?また憲兵に連れて行かれるのはごめんだ。いや、でも……。そもそも理屈もわからないけど……」

ブツブツと呟くアルドの思考を再び響く大声が中断させた。

「ジョッキは持ったな!?いくぞ!ぃよぉーい……はぁじめぇ!!」


慌ててジョッキを持ち上げ、一気に口へ運ぶ。

開栓直後ではなくてもやはりかなり強烈な炭酸だ。

目が覚めるような刺激を一息に飲み干す。

「―ぷはっ」

アルドが1杯目のジョッキを空にしたとき、隣のシェフは2杯目のコーラを持ち上げるところだった。

ニヤリと勝ちを確信するような笑みを浮かべたその顔を見た瞬間、頭の血流が一気に増すのを感じた。

―なめやがって……!やってやる……!


***


 シェフの飲むペースはまったく衰えることがなく、時間が経つほどに他の参加者との差は開いていくばかりだ。

早々にギブアップしている者もいる。

必死で追いすがるアルドも2杯差の状態から追いつくことができないままであった。

「残り時間、あと3分!!」


観衆はもはやこのシェフが最終的に何杯飲むことができるのかということにしか注目していなかった。

給餌係は彼の前に常に3杯が置かれる状況を作り流れを維持している。

―ここだ……!

アルドは自分のコーラを飲みながら、ある一点を凝視している。

視線の先はシェフに飲まれるのを待つ3杯先のジョッキ。


―白い楕円形。表面は固く、中は柔らかい。甘くて、フルーツの香りがする。

思い描くのは、とある菓子の輪郭。

現世においては見たこともなく、前世の記憶でさえ別に好んでいたわけではない。

奥歯にくっつく感触の他にただ思い出せるのは、特定の飲料との組み合わせで発生する劇的な光景だ。


ともすれば命がけの戦闘時にも匹敵する必死さで、アルドは小さな白い石のような菓子を創造することに成功した。

それはシェフが次に飲むために並べられているジョッキの上に現れ、すぐに音もなくコーラに沈んでいく。

次の瞬間にそのジョッキは持ち上げられて、男の口元へ。


シュワシュワと炭酸の弾ける音がする。

喉奥へ流し込まれるコーラの中に白い固体が共に流されていくのが見えた気がした。

瞬く間にその1杯を飲み干したシェフの動きが突如止まる。

「おおっとお?流石に限界か?」

店主が煽り、観衆の声援と指笛が響く。

シェフは自分の身体に起きている事態が飲み込めず、目をひん剥いて正面を向き、固まっている。

「ごぶっ」

シェフの口からガスが漏れる。

「ごぶごぶっ」

最前列の野次馬が「まさか」という表情で距離を取ろうとする。

一瞬の静寂のあと、シェフは口から茶色い泡を滝のように吹き出した。

阿鼻叫喚の渦のなか、アルドは心のなかで手を合わせ、もくもくとコーラを飲み進めた。


***


 賑やかな街の喧騒のなかに、ガチャガチャと瓶がぶつかる音が混じる。

「コーラのためにあそこまでするとはね……」

呆れつつ怯えたような表情をするエレナから目を背け歩く。

「……なんのことかな」

「まあ、証拠はないかもね……。でもタダで飲みに行く度に嫌な顔されそうね」


コーラでパンパンになった腹をさすりながらアルドが少し後ろめたそうな声で応える。

「そうだなあ、あんまり行かないかも。……実は、あんまり好きな味じゃなかったんだよね」

「えっ……。あの店主がそれを聞いたところが見てみたいわ」

大会の結果発表時の引きつった笑顔の店主が思い出される。

ちなみに文字通り泡を吹かされたシェフも怪我などはせず大事ないようだったが、やはりやり過ぎたかとは思う。


「……エレナ、代わりに行く?」

「いやよ。それ見せた途端にあんたの仲間ってばれるんだから、気まずいのは一緒じゃない」

しかし考えれば考えるほど気まずい。

飲み放題の権利を示す証書を筒状に丸め、肩を叩き歩きながら思案していると、雑踏の先から金髪の美丈夫が向かってくるのが見えた。

「ロイ!」

「よぉ、デートか?」

「違うよ、ご飯食べただけさ。そんなことより、いいもの、あげる」


アルドはロイへ証書を広げながら手渡す。

エレナが眉をひそめている気がする。いや気のせいだろう。

「なんだ?……コーラ、飲み放題?なんだ、いらないのか?」

「えーと……。いつも、お世話になってるから、お礼?みたいな」

エレナは明確に信じられないといった様子で非難の目を向けているが余計なことは言わないと決めたようだ。

「おいおい、なんだよ急に。かわいい奴め」

ロイは茶化しながらも上機嫌でアルドの頭をがしがしと撫でる。

「じゃあ、早速今日の夜に3人でいこうぜ?」

「あー、いや……。それを手に入れるために、やり過ぎた、いや飲み過ぎたから、おれはしばらくはいいかな……」

「……あたしは、予定がある、かも」

「なんだ……。じゃあひとりで行ってみるかあ?」

残念そうに頭をかくロイは今は予定があるとのことで、話もそこそこに再び人混みの中に消えていった。


「……あんた、後が怖いわよ」

「はは……大丈夫だろ、たぶん」

もちろん大丈夫なはずもなく、後日アルドは気まずいディナーを味わったロイからしっかり目の説教を受けるのであった。

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