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手鏡

この光の玉と、何とか意思疎通がしたい。


おかしな繰り返し現象が始まってから、7回ほど。その間、こんな光の玉に出会ったことはなかったし、さっきのような不思議な映像を見せられる事もなかった。


ディランは、この繰り返しの日々に突然現れた取っ掛かりを逃したくはなかった。


「………そうだ、俺の言葉は分かるんだから、イエスなら1回、ノーなら2回光るってのはできるか?」


「――――!!」


ディランの言葉に、すかさず光の玉が反応する。


「一回光った……ってことはイエスだな」


何から聞いたものか。

ディランはまず、さきほどの不思議な現象について尋ねることにした。


「さっき、すごく綺麗な女の人と赤ん坊の思い出みたいな映像が急に見えたんだ。あれは、お前が俺に見せたのか?」


「――――!」


光の玉は一度発光した。つまり答えは、イエス。


「えーっと……俺は、今日死んで、今日の朝に戻るっていうのを何回か繰り返してるんだ。これは、お前と関係があるのか?」


「――――!」


再び一回の発光。こちらもイエス。


「それじゃあ……さっきみた映像と、俺の繰り返しには関係があるのか?」


少し考えるような間の後、一回の発光。

つまり、イエスだ。


となると、次は何を聞くべきだろうか。

ディランは目まぐるしく考える。


「俺が認識してる限り、俺は6回死んでる。今回が7回目だと思う。お前と会ったのは今回が初めて――」


「――――!」


ディランの言葉の途中で、光の玉は2回発光した。

つまり、ノーの合図だ。


「え……6回死んだって認識が違うってことか?」


「――――!」


また2回の点滅。ノー。


「違う………ってことは、え、お前と会うのが初めてっていうのが違うってことか?」


「――――!」


一回の発光。イエス。

つまり、今までの繰り返しの中でも、ディランはこの光と会ったことがある、という事になる。


しかし、ディランにはその記憶がない。


「一体どういう事なんだ……俺はお前に会った覚えが無いんだけど……」


「――――――」


光の玉はぐるぐると室内を飛び回っていたが、しばらくすると、何かを伝えるように、ディランの机の引き出しのあたりで、繰り返し発光し始めた。


「え、何だ?そこ?……そこを見ればいいのか?」


「――――!」


「何か入ってたっけな……?」


引き出しを開けると、ペンと紙、ハサミの他に、小さな手鏡があった。


光の玉は、伏せられた手鏡の上に陣取ると、何度も発光する。


「この鏡に何かあるのか…?」


ディランは手鏡を手に取った。


これは、少し前に、母が使わなくなったからとくれたものだ。


庶民の持つごく一般的なもので、飾り気のない使い古された木作りの手鏡だ。


捨てるのも勿体無いということでディランが貰ったものだが、ディランも特に使うことはなかったので、引き出しに仕舞い込んでいた。


鏡面を覗き込むと、寝癖のついた自分の顔が見返してくる。


と、その時、止める間も無く、光の玉が鏡の中に勢いよく飛び込んだ。


「あっ……おい!!―――うわっ!!」


途端に、七色の光が鏡から溢れ出す。

あまりの眩しさに、手鏡を持ったまま、ディランは思わず目を閉じた。


一体、何が起きたのか。


光がおさまったのを感じ、ディランは薄目を開いた。


恐る恐る手鏡を覗き込む。


するとそこには、金色の髪と瞳を持つ、ディランと同じ年頃のように見える可憐な美少女が、こちらを見返していた。

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