来年のハロウィンは…
俺と彼は、ゆっくりと寛ぎながらニュースを見ていた。
駅前のスクランブル交差点でのハロウィン対策について特集している。
「最近のハロウィンって、すっかり大人しくなったな。前はもっと派手にやってたのに。」
俺がそう呟くと、彼が答える。
「感染症があったからね。」
「あ〜あ、つまんなくなった。」
俺が背伸びをすると、彼は少し笑う。
「そうかい? 良いことじゃないか。」
「楽しくないよ。俺は混乱が大好きなんだ。」
不思議そうな顔をするので、俺は説明してやる。
「みんなでバカ騒ぎするってのは、日常の鬱憤を晴らすのに必要なことなんだ。」
「ストレス発散って事か。」
「ああ、そうだ。サッカーの代表チームが勝利した時も、同じようにみんなで集ってバカ騒ぎしてたろ。」
彼は思い出して溜息を吐く。
「…してたね。感染症が収束しきってないのに、青い服着て駅前に集まってた。」
「いつもと違う服を着て、みんなが集って騒ぐ。代表の勝利もハロウィンも一緒さ。」
「確かに、普段とは違う服を着ると必要以上に盛り上がる。」
彼が納得したので、俺は調子に乗って更なる持論を展開する。
「要は、神社や地域のお祭りと一緒なんだよ。」
「お祭り?」
「ああ。神輿をぶつける祭とか、半裸で奪い合う祭とか、山車で街を駆け回る祭とか。そんな激しいお祭りと、やってることは同じだって話。」
「騒ぐお祭りもあるけれど、それは伝統に則ってやってるじゃないか。ハロウィンみたいな無秩序ではないだろ。」
彼の意見に俺は反論する。
「まともな頭で考えて、あんなお祭りが出来あがると思うか?」
「冷静な発想では生まれないね。」
「絶対、酒飲んでストレス発散するような無秩序から生まれたんだ。それを毎年繰り返していくうちに、徐々にルールができていったんだよ。」
彼は少し悩む。
「それ、本当かい?」
「きっとな。」
「なんだ、妄想か。」
「割と当たってると思うぞ。『人間』って、そんな秩序の塊でも無いだろう。」
「まあね。」
ニュースは、続けて役所の迷惑行為対策を報じている。
「こうやって老人たちが、若者のストレス発散を抑え込むから、若者たちが爆発して事件を起こすんだ。」
「僕は、その方が良いよ。」
彼は笑った。
その笑顔に、俺は呆れる。
「そうかぁ? 集まって騒ぐ方が、事件が大きくなって良いだろ。」
「数は少なくても、静かな方が好きかな。」
「効率悪そう。さてはコツコツタイプだな。」
彼は苦笑した。
「来年はハロウィンが週末だから、盛り上がるよ。」
「そうだな。じゃあ来年こそは派手な事件が起きてくれると信じて、今年は寝ておくか。」
俺が布団をかぶると、彼は出掛ける準備を始めた。
「どこへ行くんだい、『死神』?」
「収穫だよ。早速、ストレスの溜まった若者が、事件を起こしてくれたらしい。」
「行ってらっしゃい。」
「おやすみ、『悪鬼』。」
そう言って彼が出ていくと、ニュースは次の話題に移っていた。
「……三人を死傷させた容疑者は、自身が勤めていた会社に強い不満を持っており、我慢ができなかったと証言しています。」
死神には寿命が見える。
そんな彼が来年は盛り上がると言うんだから、俺も彼も楽しめるハロウィンになるはずだ。




