表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 序章
9/52

序章9 あの日あこがれた瞬間移動

「どこだ、ここ?」


 意識を失った俺が目を覚ますとそこには、宇宙空間のような場所が広がっていた。

 果てがなく壮大。遠くの景色はみんな同じで、浮いているような感覚があるが、呼吸できないというわけではないようだ。



「おい、キリアス。」


 そんな世界で一つの声が聞こえた。


「誰だ!」


 あたりを見回すと、俺の後ろには……。



「よお、久しぶりに見たか?お前ではないお前の顔を。」


「……。俺?」




「ここはいったい、どこなんだ?」


「お前の心の中。いわゆる精神世界だな。」


 俺ではない俺がそんなことを言っているが、いったいこれはどういうことなんだ。


「気絶したから精神世界に来た、ということか?」


「いいや、少し違う。お前に聞きたいことがあったから私が呼んだんだ。キリアス。」


 聞きたいこと?いったい何のことだ。



「お前には失ったものがある。それが何かわかるか?」


「失ったもの……?家族、か?」


「いいや違う。お前の中にあったもので明確に消滅したもの。もしくは完全にお前が忘れ去っているものだ。」


「そんなこと言われてもわかんねえよ。」



 こいつはいったい、俺に何を伝えたいんだ?


「では、問おう。……キリアス、お前はなぜ魔術学園に通ったのだ。」


「……魔術学園に通った理由……。魔術理論を勉強するためだ。」


「いいや、違うな。」


「違わない。」


「いいや、違う。お前は何もかもが違う。お前は間違っている。」


 いったい何なんだこいつは。

 こいつのこのわけのわからない態度に俺は腹が立った。


「何なんだよ、お前!俺を馬鹿にしに来ただけか!?急に精神世界に呼ばれたと思ったら、……お前は間違ってるって、何のことだよ!」


「お前が私であったという事実が悔しいよ、とても。……とても……。」


「さっきっからバカにするだけかよ。俺も嫌だよ。俺がお前だったなんてな。」


「…では、再び問おう。これを聞いて少しは思い出してくれ。」


 そういうと、俺ではない俺は息を深く吸って……、


「いったい私は、なぜあの世界で生きていたんだ?!」


 そんなことを大声で言った。




「私はなぜ、あの世界で孤独だった?私はなぜ、あの世界であれほど学を身に着けた?

 私はなぜ、あの世界であんな思いをして死ぬことになった?…………私はなぜ、この世界に転生した?」


 それは俺ではない俺の叫びであり、苦痛だった。

 もはやそれは疑問ではない。俺に対しての不満そのものだった。


 その嘆きを聞き終えた俺は大切なことを思い出したように感じる。


「なぁ、教えてくれよ。私ではない私よ。……どうしてだ?」


「……。」


 一拍を置いて、俺は告げる。


「みんなのヒーローに、なりたかったからだ。」


 そうだ。そうだったじゃないか。俺が目指したのはヒーローだ。いつだって……そうだった。


 誰かのピンチに駆けつけて、絶対に助けてくれるかっこいいヒーロー。

 みんなの夢をかなえてくれる優しいヒーロー。



 俺ではない俺は微笑み、こんなことを聞いてきた。


「その通りだ、キリアス。……では、如何にしてお前のいうヒーローになる?」


「俺は、」



 あの世界で過ごしたあの人生はきっと、この世界でヒーローになるためのものだったのだろう。


「あの日、あこがれた瞬間移動で!」


 次の瞬間、俺の視界はまばゆい光に包まれる。俺ではない俺の顔はどんどんとホワイトアウトしていく。ただその顔は、あの世界にいたころの俺の顔ではないように感じた。


 そして、そして、そして……。


 あの洞窟で目を覚ます。




 叫び声が聞こえた。

 この声は聞いたことがある。ラダーバだ。

 目を覚ますとそこには血の付いた剣を持ったあの男と、片腕をなくしたラダーバがいた。


「ラダーバ!!」


 俺もすかさず叫んだ。が、ラダーバはもう倒れ、気絶していた。


「クッソ!なんだよ、関係者かよ。だから邪魔してきたのか。」


(助けに来てくれたんだな、ラダーバ。)



 俺はこの男の視界の真ん中に立ち、剣の切っ先を向ける。

「……今度こそリアを返してもらう。最終ラウンドだ!」


「何言ってんだ。そんなボロボロな体で戦えるわけねえだろ。」


 男の口調は強いものだったが、それに比べ足はふらついていた。麻痺薬が効いている。ならば、勝機はある。




 俺は次の瞬間、頭の中に計算式を作り始めた。


 ついさっきまで忘れていたものだ、俺じゃない俺に教えられたもの。

 大切なピースたちは……あいつがそろえてくれた。

 あの世界の俺は何度も何度も失敗し続けてきた。

 だが、今の俺は失敗しない!だって、……


 俺に足りなかったピースは今、この世界でそろった!



「魔術理論、構築!」


 頭の中の計算式にこの世界で学んだ魔術理論をぶち込む。

 俺に足りなかったのは神秘そのものだった!


 あの世界で手に入れた学問とこの世界で手に入れた魔術理論、この二つを掛け合わせたものこそ


 ……俺だけの魔法なのだ!



「転移!」


 俺は剣を構えた状態で男の後ろにこの体を転移し、その剣を振り下ろす。


「はあああぁっ、はあぁ!!」




 洞窟の中に金属音が鳴り響く。それは金属と金属がぶつかり合う音だ。つまり、


(防がれた!?)



 男の剣によって俺の剣は弾かれた。


「何が起きたか分かんねえが、そんなので勝てると思ったか、このクソガキが!」


 俺の剣を防いだとともに振り上げられる剣。

 その剣が振り下ろされる。



 …………無理だ……死ぬ。


 ここから魔術理論を構築しようとすると間に合わない。

 だが、諦めてたまるか。ここで死ぬわけにはいかないのだ。

 だって……。



「俺は、リアを助けるんだ!!」


 次の瞬間に洞窟に響いた音は俺の体が引き裂かれる音ではなかった。


「何?!」


 それは男の声。振り下ろされた剣は誰の手によってかはわからないが弾かれていた。今からならば間に合う。

 もう一度、あの魔法を……!



「魔術理論、構築!」


 剣を強く握りしめ、その言葉を強く叫ぶ。


「転移!」



 再び、俺は男の後ろに転移し、剣を振るう。


「さっきと同じ手は通用するかよ。」


 男はまたも俺の転移に対応し、剣と剣がぶつかり合う。


 その瞬間に、俺が持っていた剣は砕け散った。

 男の行動は素早く俺の剣を砕いた後、すかさず剣を構え俺に切りかかる。


「これで何もかも終わりだ!ルドルーファ!!」


 狙うのは首。俺を殺す一撃はすぐ目の前まで来ている。



 …………………。


 だが、俺が構築したのは一度だけの転移ではない。もう一つ、転移魔術を構築している!



「転移!」


 俺が転移したのは男の目の前。男が剣を振ったタイミングで同じ場所に転移し、その攻撃を避ける。


 次の瞬間に俺はそのこぶしを握りしめた。

 俺は足を強く前に踏み込み、全身全霊の力をもって拳に向ける。



「俺はヒーローになる。そして……リアを救うんだ!!」


 俺の拳は男の顔面を殴り飛ばした。

 そして、男は地面に倒れこみ気を失った。



 これでようやく、あいつを倒すことができたのだ。


 安心した次の瞬間、俺の目、鼻、頭から大量の血が流れた。

 それとともにものすごい眩暈と吐き気もしてきた。


 転移を多用した影響だろうか。だが、ここで倒ちゃダメだ。


 俺はそのボロボロな体でリアのもとにたどり着いた。

 リアを縛っている縄をほどき、リアを強く強く抱きしめた。


「リア、リア、リア!!」


 救えてよかった。本当に良かった。




 そうして、俺は次の瞬間、その意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ