序章7 復讐と協力者
俺は……自分でもびっくりするほど落ち着いていたように感じる。
ただ絶望してただけなのかもしれない。ただひたすらにあいつらについての情報を集めた。
だが、わかったのはあいつらが危険であるという風に知られているぐらいのこと。
関わりたくないからか、話すら聞かせてくれない人がほとんどだ。ただ、それでも俺がかわいそうだからなのか……話してくれる人がほんの少しだがいた。
やはり情報が集まりにくい。とにかく数年前から犯罪をしだした悪い連中であること。一人だけとんでもない実力を持ったやつがいて、傭兵を雇っても犯罪を防げないこと。
(そんな情報があっても、まったく意味がない。俺が欲しいのはあいつらがいる場所だ。今すぐにでもリアを取り返しに行く。そして、あいつらを殺す。それだけだ。)
「なぁ、領主さんの息子さんよ。」
情報収集をするためにちょっとした酒場にいた俺に話しかけてくる奴がいた。
「あんたは…誰だ?」
そこにいたのは中年、小太りの男。ひげを生やし、そこに清潔感はなかった。
「あぁ、そうだったな。俺はラダーバ。武器商人のラダーバだ。あんたがあいつらの情報を集めてるっていうのを聞いたんでな。ちょっとうちの店に来ないか?」
「……ただ、商売をするだけなら俺は行かないぞ。一瞬、一秒でも時間が惜しいんだ。」
どうせ冷やかしついでに売りつけようとしてくるだけだ。
そう思っていたが、男はこんなことを言い放った。
「俺は、あいつらがいる場所を知っている…………って言ったらどうだ?」
こいつの目は嘘を言っている目じゃなかった。それに、その目の奥には……俺と同じような感情があるように感じた。
「……。分かった、話を聞こう。」
俺はそういって、ラダーバの後ろをついていった。
「ここが俺の店だ。ほしい武器があるなら売ってやるぞ。一番の武器は少し高いがな。」
そこにはたくさんの武器防具が置かれていた。品揃え自体はあまりよくない。都会の方の武器屋を見たことがあるから、そのギャップを感じた。
「そんなことはどうでもいい。……ラダーバ、本題に入れ。」
「あぁ、そうだな。俺からは情報と武器を。あんたはその力を貸してくれればいい。」
ラダーバはそんなことを言った。ただ……
「俺に力はないぞ。お前が求めていることは俺にはできない。」
「……。いいや、ある。
あんた学園に行っていたんだろう。つまり、少しの剣術があるってわけだ。だったら十分戦力としてみることができる。」
戦力としてみることができる、か。
「情報と武器があるだけの俺じゃ、あいつらには勝てない。そんなことわかりきってるだろう。いったいどうするんだ?」
悔しいが実際そうだ。あの力は通常のものじゃなかった。ただの素人じゃない。
「あんたにはおとりになってもらう。」
「……。本気で言ってるのか?俺に見殺しになれ、と?」
「当然だが、そういうわけじゃない。
あんたがおとりとしてあいつらと戦ってる間に俺が仕掛けた罠を作動させて、あいつらを窮地に追い込んでから俺も武器を持って戦う。これならどうだ?」
確かにそれなら勝率は高い……か。
「そういうことならわかった。さっそくだが、行くぞ。時間が惜しい、妹のことが心配なんだ。」
「いや、待て。心配なのはわかるが、行くのは夜にした方がいい。
夜になるとあの連中は酒を飲み始める。素面の相手と、酔ってる相手、敵にするのなら酔っている方を相手にした方がいい。」
「……よく調べてるんだな。なら、夜まで待とう。その間に詳しい場所を教えてくれ。」
「分かった。……だが、その前に。」
そういって、ラダーバは店の奥に入っていった。
奥から物音がした後、ラダーバは一つの鉄剣を持って帰ってきた。その鉄剣を俺に差し出してくる。
「あんたにはこれを渡す。なかなかの業物だ、うまく使ってくれ。」
ただの剣のようにしか見えないが、俺自身剣を持っていないのでありがたく貰っておこう。
「後で、金を請求してきても払える金はないからな。」
「そんなつもりねえさ。」
そんなことを言い合って、俺たちは夜が来るのを待った。




