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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 序章
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序章6 悪夢のような

 そうして、……僕は急に眠りから覚めることになった。馬車の御者さんが起こしてくれたのだ。


 しかし、その声はどこかおかしいものだった。


「キリアス様,キリアス様!起きてください。何かおうちの様子がおかしいです。」


「う、うーん。……様子がおかしいって、何ですか?」


 僕は目をこすりながら御者さんの方を見る。



 何かの冗談かと思いながら僕は窓の外から家をみた。この時間であれば普段は夕飯を食べている。リビングは南向きにあるので少しだけだが声が聞こえてくるはずだ。


 だが、今日のうちにはその騒がしさがなかった。確かに雰囲気がおかしい。



「私がお供しましょう。万一のことがありますので。」


「……大丈夫ですよ、僕も今年で成人です。もう子供じゃないんですよ。」


「そうですか。……そうですね。キリアス様も成長しましたね。」


 心配そうな顔をしていたが、僕だってもう子供じゃないのだ。

 僕は馬車から降り、御者さんに感謝し御者さんを見送った。さて、どこか雰囲気がおかしいがいったいどういうわけなのだろう?



 あの人たちのことだ。もしかしたら僕の卒業祝いの準備をしているのかもしれない。


 この年になってから祝い事をされるのは少し恥ずかしいので遠慮したいが。


 ……と、僕は玄関のドアを開けた。



 聞こえてきたのは家族の愉快な笑い声ではなく、知らない男の笑い声だった。冷汗をかいた僕は急いでリビングへ走る。

 リビングのドアを開けるとともに、僕は声を上げた。



「おい、誰だ!」


 リビングのドアを開けるとそこに広がっていた光景はあまりにひどいものだった。


 リビングのソファーに座っている四人の知らない男たち。見たところ盗賊のような恰好をしている。

 その男たちは妹のリアを縄で縛りつけていた。縛られているリアは気絶させられている。


 ………………。

 ……だが、一番はそこじゃない。そんなことじゃないのだ。

 荒れたリビングでもなく、部屋の中に入った瞬間に漂ってきた汚臭でもない。

 そこにあったのは………………。





 ……母さんと父さんの死体だった。二人とも血を流して動いていない。



「な、……んで?」


 僕が声を上げた瞬間に男たちは僕の存在に気づき、こちらの方を向いた。


「おぉ!お前は息子か!?いいタイミングで来たな。どうだ、両親の死体を見た感想は!」


「…ああ、…あぁぁ。おまえら、お前らあぁ!」


 俺は何も考えずその男たちに殴りかかっていた。


「殺してやる!殺してやる!」


「なんだよ、ちょっとは感想聞かせろよ。」

 男はそんなことを言いながら、殴りかかった俺を軽く蹴り飛ばした。



「がはっ、はぁ、はぁ、ぐっ!ふざけるな!」


 俺はもう一度その男に殴りかかる。だが、男は当たり前のように俺を殴り飛ばす。


 男は俺の方を見てこう告げた。


「いやあ、はは…………。おまえの両親は本当に、」


 男は一拍をあけて、


「馬鹿だったよ。娘を人質に取ったらすぐに降伏したんだからなぁ!天下の領主様も稀代の魔術師も自分の娘には弱いわけだ。

 それに子供には手を出さないでくれって言っても死人との約束なんて護る必要がねえしな。無能で使えないお前とは違って娘の方は優秀だ。使い方なんていくらでもある。11だからあれにはさすがに使えないけどよ。」


 ……あぁ、屑だ。

 あいつは……あいつは絶対に殺す。


 俺は殴られて、ほとんど動かない体を無理やりにでも動かして立ち上がった。こぶしに力を入れすぎて手のひらからは血が出ている。


「お前を殺す。絶対に!!」


 力強く、宣言した俺に対してこの男は余裕だ。


「はっはっはっ!お前みたいな無能が俺を殺すだ?無理に決まってんだろ。

 両親、妹はこんなに優秀なのにお前だけは何にもできねえもんな!」


「くっ!」


 また俺はその男に殴りかかる。さっきまでとは違ってこの男は俺の首をつかんだ。


「がっ!うぐぅ……。」


「ほんとにお前は見苦しい。見苦しすぎて、吐きそうになる!本来ならお前も殺す予定だったんだが、これだけ見苦しい奴なら殺す価値すらねえ。」


 男はそういうと俺のことを投げ飛ばした。


「おい、お前ら。娘を連れて帰るぞ。」


 男どもの一人がリアを担いで家から出ようとしている。

 そんなの許さない。

 俺は必死にリアの方へ手を伸ばした。


「リア、リア!」


「うるせぇ,ガキが!無力で無価値な人間は搾取されるしかねえんだよ!お前の抱いた絶望もその心も、全部世界が決めたことで運命だ。弱者がみっともなく世界にあらがおうとしてんじゃねえ!


 ……お前ら、さっさと行くぞ。」



 男たちそういって、家から出て行った。この家に残されたのは俺と、母さんと父さんの死体だけ。



「…父さん…母さん。」


 俺は這いずりながら母さんと父さんの死体を抱きかかえ、涙を流した。


「父さん、母さん!ごめんなさい。ごめんなさい。俺が……弱いから。」


 何度も謝った。何度も死なないでと願った。


 だが、二人の身体は冷たいままだった。





 その後、御者さんの家に向かい、事情を説明し死体の処理や今後のことを任せることにした。


 俺にはそんなことをする暇はない。


 俺にはやらなくちゃいけないことがあるから。


「リアを助けて、二人の敵討ちだ。」

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