序章5 学園編はカットです
学園での日々はとても楽しいものだ。
魔術が使えないせいで一部の人から避けられているけどそれでも関わってくれている人がいたからとても楽しい。
それに知らないことがたくさんあったのでそれを学ぶのも面白い。学ぶことは魔術についてのものがほとんどで一般教養の教科は数学ぐらい。数学といってももちろん簡単なもの。
前世でほとんど履修しているので結構いい成績を残していた。家族にも自慢できるくらいのもので、一年に一度の帰宅の時にはしっかり自慢した。
魔術についての教養も高くなり、その中で魔術理論についてもたくさんの知識をつけることができた。
魔術理論を知ることは魔術効率の向上が主な目的らしい。魔術理論を知ることによってより少ない魔力量でより強い魔術を使うことができる。母さんも嫌っていたように、この世界には魔術理論が浸透していない。
こんな素晴らしい魔術理論がこの世界に魔術理論が浸透していないのは、魔術効率を向上させても生まれつきの才能と血筋には負けてしまうというのが理由だ。いくら勉強して努力しても俺のような才能のない人間はどうしようもない。
………………。
…なんていう悲しい話はおいておいて。
しかし、魔術理論を知ることによって魔術の向上を確認できたものは多い。入学前の魔術の威力と、魔術理論を学んだあとの魔術の威力はだいぶ違う。
約1.5倍ほど威力が上がるのだ。数字で見るとどんなものかわからないが実際に見てみると圧巻なものなのだ。
一本の木を破壊するぐらいの魔術が一つの家を破壊するぐらいの魔術になる。魔術訓練の時間ではそういう成長が如実に現れていた。ちなみに僕は、というと……。
右手を前に突き出し、自分の神経を集中させる。手のひらには赤い光を放つ炎。そして、僕はトリガーとなるその言葉を言い放つ。
「ファイアボール!!」
その炎は僕の声とともに前方へ発射され、見事に的を撃ちぬいた。
ようやく魔術を使えるようになったくらいだ。大きさはピンポン玉くらい、威力は…良くて時速50キロぐらい…か。
……………………。
「って、なんでやねん!!!」
僕は大きく地団太を踏み、芝生に寝転んだ。
「まぁまぁ、キリアス。魔術使えるようになったからいいじゃないか。な?」
僕の横にいる黒髪メガネの美青年は僕の数少ない友達の一人。ユート・ジルアート。こうやって荒ぶる僕を慰めてくれる優しいやつだ。
もちろん普通に魔術が使える。それにとても優秀で、五大魔力元素、火、水、植物、土、風。すべてに適性を持っている奴である。ほかの属性も使えるが、割愛。
「なぁ、おかしいと思わないか?筆記試験だったらお前にさえ勝ってるのに実習・実践ってなったら学年……いや、学園最下位だぞ!?もう、魔術は不公平だ!」
「いつにもまして、荒ぶってるな。キリアス。」
「あ、先生。」
「ま、五年間勉強して魔術を向上させたんじゃなくて、ようやく使える段階に立っただけだもんな。さすがの俺も同情するよ。」
このチャラそうな金髪は僕たちの先生。バイアス・クラント。先生っていうよりただの友達。距離感バグってて、生徒達との距離がとても近い。その中でもよく僕とユートにはよく突っかかってくる。
「馬鹿にするつもりはないが、お前みたいなやつは初めて見たな。
……入学の時点で相当異質だった。魔術が使えないのに魔術学園に来るなんて、聞いたことがない!
それに今だってそうだ。五年間、この学園に、毎日、まじめに通い続けてきたのに、魔術行使ができるようになっただけ。とんでもない逸材だ!」
「先生、そこらへんにしてあげてください。キリアスが死にそうです。」
「周りのやつらと自分の差を考えると泣きそうです。」
「ま、もう泣いてるけどな。それよりキリアス、時間は大丈夫なのか?」
……時間?いったい何の……
「今日家に帰る、ってこの間言ってなかったか?」
……あ、完全に忘れてた。
「やばあああい!!先生、教えてくれてありがとう!」
勢いよく起き上がり、寮の自分の部屋まで走り出そうとしたとき。
「おい、ちょっと待て、キリアス。」
なぜか、引き留められた僕。
「なんですか、先生。急いでるんですよ。」
「お前もきっと、地元に残した幼馴染の一人や二人いるはずだ。だからな……」
僕はそれから急いで部屋に帰り、帰宅の準備を済ませた。この間卒業式があって、今日は家に帰る日だ。
にしてもとても早い五年間だった。
…………というかなかった。(おい!カットしてんじゃねえぞ!)
まあ、僕の目的である魔術理論の知識は手に入ったし、それなりに面白い学園生活だったから満足だ。
何度も通ってきた校門に頭を下げる。少し感慨深いものがあるが、きっとすぐに帰ってこれるさ。
そうしてすぐに振り返り、駅に走った。
駅に行くと大勢の人が汽車に乗っていく。もちろんその大勢の中には僕も入っている。
駅を使って実家に一番近いところで降りる。それから馬車に乗って家に帰るのだが、その道のりがまあ長い。一日はかからずとも半日はかかってしまう。
それに汽車の通り道には山道があり、そこではたまに魔物が発見される。そのせいもあって二、三度待ち合わせの時間に遅れて馬車の御者さんに謝ったことがある。
………………。
なんてことを考えていたら、やっぱり魔物に出くわした。
汽車に乗っていた冒険者によって何とかやり過ごしたが一時間以上は遅れてしまった。
家に帰るのは八時くらいになってしまいそうだ。そんな感じでやっぱり遅れた僕は馬車の御者さんに謝り、馬車に乗った。
馬車に乗ってから家までの道のりもそこそこ長いので、僕はゆっくり眠ることにした。




