冒険者編37 グルークたちの帰還
あの襲撃から二か月くらい経ったころだろうか。
遠征に行っていたグルークたちが帰ってきた。
それを確認したのは俺とラズが一通り働いて避難所に帰ってきた時だった。
久しぶりに見る後ろ姿。騒がしく耳に残る声。
そんなやつらは全員で何かを囲んで大声を出していた。
どうやら、おっさんどもに囲まれているのはミールらしい。ドンキに関しては大声を出して泣いていた。
ドンちゃんは涙もろい。
これ、シータギルドの常識問題です。
ミールが困っていそうなのが何となくわかったので、俺はおっさんどもに声をかけた。
声を掛けたら、俺に気づいたドンキが泣きながら俺に抱き着いてきた。普通に拒絶したのだが……。
全員が落ち着いてから何が起こったかを一通り説明して、この一件で亡くなった冒険者や住人の墓参りに行くことになった。
シータギルドの冒険者が死んだら、ドンキはこうして墓参りをすると決めているらしい。
もちろんグルークや遠征に行っていた冒険者、みんなで墓参りに行った。
改めて墓の数を見るとこの事件がどれほどの規模だったのかがよくわかる。クリターが治癒魔術を使ったからといって死人は少なくないのだ。
全ての墓所に手を合わせた後、みんなで避難場所に帰るタイミングで俺はグルークに呼び止められた。
「なぁ、キリアス。お前はこのまま冒険者を続けるのか?」
「急になんだよ。
当たり前だが、俺は冒険者を続けるぞ。」
「……お前はこのギルドを、シータを救ったんだ。お前の言うヒーローにはもうなってるんじゃないのか?」
恥ずかしいことを言ってくれるが、確かに一理はある。だが……。
「確かに、俺はシータを救った。ただし、守れていないものもある。抵抗できず奪われていった命がある。
……なら、俺はまだ冒険者をやめられない。」
俺がそう口に出すと、心底安心しきったような声でグルークはその意図を口に出した。
「そうか、それならよかった。
……ドンキとさっき話してたんだ。お前をギルドマスターにするのはどうかって。」
「……。
は!?お、俺がギルドマスター!?
そんなのできないぞ。お前だって俺の強さは知ってるだろ。Aランクにもなってないんだ。さすがに無理があるぞ。」
慌てて否定すると、グルークもそうして返答が来ることを予想していたように俺の否定に肯定した。
「あぁ、そうだ。それはさすがに無理がある。
それに……ドンキと話してたって言ったが、実はドンキだけじゃないんだ。
……………。
ミーちゃんの両親とも…話した。」
「……。」
ミールの両親というと、ドンキやグルークとシータギルドを発足した人だったか。
もう亡くなったと聞いている。
「それで、どんな話をしたんだ?」
「俺たち以外に、ミーちゃんを任せられる奴がいる。俺たちが先に言うのもなんだが、結婚式にはお前らも参加してくれ。ってな。」
「……え、は!?
ちょ、ちょっと待て!それって、俺の話……か?」
「……?何当たり前のこと言ってるんだ。
お前以外に誰がいる。」
おいおい、グルーク。それは早合点にもほどがあるだろう?!
「いやいや、待て待て!
俺たちはまだ……その……付き合ってすらないんだぞ?」
「なんだよ、まだお前ら付き合ってなかったのか!?
てっきり婚前交渉まで済ませてるもんだと思ってたぞ。」
あほらしくそんなことを言うグルークに俺は大きい溜息を洩らした。
「は、はぁ……。
もしそれで俺がそこまで済ませてるって聞いたら、お前らどうするよ?」
「もちろん、ぶっ殺す。」
「ほら、見ろ。子離れできない親じゃねえか。」
「はははっ!冗談だ、冗談。
……ただし、お前にならミーちゃんを任せられるってのは本当だからな。」
「……そんなこと言われても今はできないぞ。
今は復興作業の方を優先しなくちゃいけないんだ。」
「あぁ、わかってる。今すぐとは言わねえさ。…いつか、……な。」
「……あぁ、そうなったら俺のこれまでの全部を話すよ。」
話に一区切りついたと思ったタイミングでグルークはもう一度俺に頭を下げた。
「……キリアス、ありがとな。
シータを守ってくれて。お前は俺たちの誇りだ。」
そして、俺たちは避難所に向かい、あの騒がしい日々の続きを再開するのだった。




