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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 冒険者編
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冒険者編32 襲撃

 竜人が倒れた一人を食い終わると、その竜人の雰囲気が一気に変わった。


 強くなっている。そのようなことを俺は感じた。何が起こっているのかなんてわからない。それだけしか分からなかった。



 残った竜人はもう一人いる倒れた竜人の下まで行き、その体を先ほどと同じように食い始める。


 俺はそこではっとして、すぐに切りかかった。

 あれをそのままにしてはいけない、と体が訴えかけているようだ。



「主!ダメ!」


 ラズの声が聞こえたが、俺の体は止まらなかった。

 切りかかった俺の剣を、その竜人は軽く跳ね飛ばし俺を蹴り飛ばした。その力はこれまでに食らったことがないほどのものだ。多分、眷属王のドグよりも強い一撃。


 俺の体は洞窟の壁に強くぶつかった。



「主!大丈夫!?」


「がはっ……ぐほっ…。あ、あぁ。大丈夫、だ。」



 体勢を立て直し、あの竜人の方を見るともうひとりの竜人も食い終わった様子だった。



 竜人のそれは、もはや眷属王と肩を並べるほどのものだ。感じる圧があまりにも強すぎる。身の毛のよだつ恐怖。

 俺は何もせず、足を振るわせることしかできない。



 竜人は俺のことを目の端に入れたが、すぐにその視線は洞窟の出口に向いた。竜人はすぐにその羽根をはばたかせ洞窟を出ていった。



 その時、初めて空気を吸えた。


 大量の空気を吸い、肺が勢いよく動き出したときに、俺の息が止まっていることに気づいたのだ。



「主、大丈夫?」


「はぁ、はぁ……問題ない。」



 あの竜人の目には相変わらず憎しみの念が込められている。ただ、さっきまでの竜人とは憎しみそのものの次元が違う。


 まるで、……何度も何度も殴られ、辱められ、殺された。あいつの目にある復讐の炎はそのようなものが感じられるものだった。


 俺は自分が生きていることに安心していた。

 だが、あいつは洞窟の外に行ったのだ。

 ということは……



「……領地が危ない!ラズ!すぐに領地に行くぞ。」


 そうして、ラズを手に乗せて、俺はラダーバの店に置いておいた剣と俺たちをすぐさまチェンジした。





「は!?キリアス!?どうしてここにいんだ!?」


「すまん!説明は後だ。」



 俺はすぐに武器屋の外にでた。

 できるだけ早く居住地にいる人たちを逃がさないといけない。

 俺はそうして、洞窟があった方向の空を向いた。


 だが、領地近くにあの竜人がいる様子はなかった。


 ただし、俺はとても遠くの空にとんでもない速度で移動している竜人を視認する。

 あの竜人の向いている方向の先にあるのは、……シータだ。


「クッソ!シータに行く!もう一回だ、ラズ!」


 もう一度俺はラズを手に乗せ、シータの宿の中にある刻印石と俺たちをチェンジした。転移をしたことが分かった瞬間に、宿の窓からすぐに外に出て、街中にいるみんなに声をかける。


「みんな、早く逃げろ!

 ここに化け物が来るんだ!……早く!」


 俺はとにかく町から逃げるよう、周りに言いながら、ギルドへと向かった。

 ギルドについた瞬間にミールに声をかけた。


「ミール!今すぐ町全体に報告してくれ!深くは説明できないが、早くシータから逃げろ!」


「キ、キリアス君!?帰ってきて、どうしたの?」


「とにかく、早くしてくれ!説明する暇なんてないんだ。早く!

 じゃないと……」



 俺がそう言おうとした瞬間に、ギルド周辺にとんでもない衝撃が走った。とんでもない質量がこの町に降ってきたような……まるで隕石が降ってきたような感覚だ。


 崩れていく周りの建物によってシータは大きな煙に覆われた。





 周りの煙が晴れると、そこには最悪な光景が広がっていた。


 半壊した建物に瓦礫の山。周りには血を流した人たちが多く倒れ、遠くからも近くからも人の悲鳴が聞こえてくる。


 その中央にはさっきの竜人がたっていた。立ち姿を見ただけで分かる。あいつはこの町にいる人間の全てを殺すきである、と。身がすくむほどの殺気。その闘気だけで周りの空気が揺れているようにすら感じる。




 そのような感想を抱いていた時、竜人を挟んで反対側にある瓦礫の中から冒険者三人が自分に乗っていた瓦礫をどかし、その竜人の前に出てきていた。



「なんだ?……これ、お前の仕業……か?」


 そうして、その三人は竜人に立ち向かおうと得物を構え、地を蹴っていた。



 ダメだ、どうやっても勝てる相手じゃない。


 あいつらも何度か話したことがある冒険者なのだ。一度だけはパーティとしてダンジョンに行ったこともある。良いやつらではなかったが話していて面白いやつらではあった。


 悪態をついていたが、シータのことが好きなことは伝わる。



 そういうやつらなのだ。


 だが、今。

 ……目の前でそいつらは……




「ダメだ!やめろ!!!」



 次の瞬間にはその三人はただの肉塊になっていた。


 あの鉤爪を直接食らったのだ。体は原形すらとどめておらず、その場には血が飛び散りあまりにも悲惨な光景がそこにはあった。



「チッ!」


 クソッ。

 俺は自分の唇を噛み、口から血を流した。


 痛みよりも自分の無力さに腹が立ったんだと思う。

 あんな死に方はだめだ。だめなんだ。



「誰も、あいつに近寄るな!!早く逃げろ!

 立ち向かっちゃダメなんだ!!」



 俺は町中に響き渡るほどの声を出した。もう誰も死なせない。死なせたくない。


「ラズ!時間稼ぎでいい。

 全力であいつを食い止めて、逃げる時間を用意してくれ!」


 俺の言葉に答えるようにラズは実体化した。


「はいはーい!

 アーティファクトも全部使って全力で行くよ。」


 そうして、ラズは竜人の方へ行き、戦いを始めた。あいつに戦わせたら、街の中がとんでもないことになるが、今はそんなことを考えている暇はない。


「早く、街全体に連絡を……。」



 ………………………………。



 ミールは……?

 ミールの姿が見つからない。



 そのことに気づいた瞬間、俺はギルドがあった方へ向き声を上げた。


「ミール?どこだ?返事をしてくれ!」



 俺は全力を出して、その声を出した。

 その時、とても弱弱しい声だったがミールの声が聞こえた。


「キリ……アス君……。」




 声が聞こえたほうを向くとそこには、頭から血を流し下半身を瓦礫に潰されているミールがこちらを向いていた。

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