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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 冒険者編
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冒険者編29 緊急クエスト。そして、再会

 ギルドに帰ってくるとやけに騒がしい様子がうかがえた。その騒がしさはグルークやドンキがいるときのような騒がしさじゃない。

 いつもの様子ではないのだ。


 ギルドの中にミールを見つけたので、俺はすかさず声をかけた。



「ミール、何かあったのか?」


 俺に気づいたミールは不安そうな顔をしながら声を出した。


「キリアス君……。

 ……緊急クエストが出たの。しかも、……ルドルーファ領の近くで……。」




 緊急クエスト。


 ……何か普通ではない異常事態が起こったときにのみ出される特別なクエスト。

 緊急クエストを受注できるのはAランク以上の冒険者だけ。それだけの異常事態が起こったときにのみ発生するのが緊急クエストだ。


「……。

 詳細を、教えてくれ。」


「……ワイバーンの特殊個体。竜人と呼ばれる魔物が出現したらしいの。

 報告では竜人が一人で居住地に入り込み暴走した。犠牲を出しながらなんとか撃退できたけど、竜人の巣に帰っていっただけ。

 ……竜人の巣では三体の竜人が確認されてる。

 領地の傭兵団だけじゃ、対処できないから応援要請を出した、と……。」



 ワイバーンは魔物の中でもなかなかに強力な魔物だ。

 そんな魔物の特殊個体、竜人。

 もちろんだが聞いたことがない魔物だ。



「竜人、ってのはこれまでに出現したことはあったのか?」


「聞いたことはないし、記録もない。何もかもが謎。

 緊急クエストとしては最高クラスかもしれない。とにかく、未知数なの。

 ……でも、うちのギルドにはAランク以上の冒険者はいないし。

 ほかのギルドに任せるしかないけど……それだと対応にものすごく遅れちゃうからもっと被害が出るかもしれない。

 ……私としては、キリアス君の判断に任せるしかないと思ってる。無責任に任せることもできないし、心配だからって行かせないことも私にはできない。

 ……キリアス君はどうする?」




 ……グルークからこのギルドを任された。俺にはこのギルドを守る責任がある。だから、今日はできるだけこの町の中にいようと、シータの中でできる簡単なクエストをこなしてきた。



 だが……その理由が俺の故郷を放っておいていい理由にはならない。



「当然だが俺は行く、あそこは俺の故郷だ。竜人なんて言うふざけたやつに荒らされてたまるかってんだ。

 ……それに、ヒーローは誰も見捨てない。

 故郷とか関係なく、誰かが助けを求めるなら、俺はそれを今すぐ助けたい。」


 俺の言葉を聞いた瞬間、ミールの不安な表情は明るくなった。


「うん!キリアス君ならそう言うと思ったよ。

 無茶しないで。調査だけでもいいから。」


「あぁ。ただ、もしもいつも通り傷だらけで帰ってきたら笑って迎えてくれ。」


「もちろん!

 行ってらっしゃい。」




 その後、俺とラズはルドルーファ領に向かうため遠出をするときにはいつも利用している汽車に乗った。

 この町の汽車の車掌の人は俺がこの町に来る時に助けたあの人だ。融通を聞かせ早くルドルーファ領に迎えることになった。



 ただし、汽車を降りてからは走りで行ったので時間と労力がそこそこ削がれた。やはり記者を降りてからあの領地までは遠すぎる。


 街についた俺たちはそのまま傭兵団の事務所に向かうことにした。




 傭兵団の事務所は、いわば前世の警察のようなものだ。


 中に入るとそこには傷だらけになっている人たちが寝そべり、その人たちを看病している人がいた。傷を負っている人の方が多く、看病が間に合っていないのがすぐにわかった。



「あなたがシータギルドの冒険者さまですか?」


 その状況を見ている俺の隣から話しかけてきたのは傭兵団をまとめている老人のようだった。老人事態にけがはなく、もはやこれほど年がいっていれば統率することすらできないということがわかる。


「その通りだ。状況を教えてくれ。

 ……ラズ、範囲治癒魔術を使っといてくれ。」


「はいはーい。」



 そういって、ラズはけが人の真ん中にいって、治癒魔術を始めた。


「あなたは精霊使いなのですね。お手数おかけして申し訳ございません。では状況を説明しますのでこちらへ。」



 そうして、俺は面会室のようなところで話を聞くことになった。

 基本的な情報はミールに聞いていたが、被害が相当出ていたようだ。

 撃退した、というよりも、本当に、ただ「帰っただけ」という認識のが正しいそうだ。



 巣がある場所は町からずいぶん離れたところ。巣は縦穴の洞窟。鳴き声、足音からして三匹の竜人を確認したが、その詳細な数は分からない。


 竜人に知性はなく人間の容貌だけはあるがただの魔物。破壊力はとてつもないものでその鉤爪は家を半壊させてしまうほどだそうだ。


 伝えられた情報はそれだけ。町の傭兵団には申し訳ないが情報が少ない。実際に戦ってみないとわからなそうだ。


「とりあえず分かった。

 あんたたちは街の復興に力を入れてくれ。」


「気を使ってくださりありがとうございます。私たちにできることでしたらなんでも致します。遠慮せずにお願いします。」


 気を使ったつもりはなかった。正直邪魔しないでくれよっていう感じだったんだが……。


 一通り話は聞いたので、俺はラズを連れて、ある場所に行くことにした。俺の戦いにはそれなりの準備が必要なのだ。




 俺が立ち寄ったのは武器屋。

 何の特徴もなければ、目立つところもないただの武器屋だ。


 ここに来るのはあの日以来ないので、三年越しの入店になる。


 俺が店に入ると、そこには右腕をなくした中年の男がいた。店に入る音が聞こえただろうが、こちらには顔を向けずに店の武器を調節しながら、男は俺にこう言ってきた。



「すまねえが、今は営業できねえ。

 みりゃわかると思うが被害を多く受けてんだ。帰ってくれや。こっちは忙しいんでな。」



 店の中は半壊しており、武器は散乱している。横顔しか見えないがげっそりしているのが見えた。



「はっ!確かにこれはひでえな。あの時よりは顔に清潔感が出てるのにげっそりしてるぞ、ラダーバ!」


 俺の声が聞こえた瞬間、急に顔を向けてきたラダーバ。

 驚いた顔をしているのが分かった。



「キリアス?」


「久しぶりだな、ラダーバ。」






「お前、…ほんとに冒険者になったんだな。

 噂だけは聞いてたが本当だったとは……。」


「今日だって、冒険者の仕事としてきたんだ。この店には武器を調達しに来たんだが……まさか売れねえなんてことはないよな?」


 俺がそう言うと、ラダーバは大きくため息をついた後俺の問いに返答する。


「……まったく、あんたからそういわれたら断れねえよ。

 ……わあったわあった、売ってやる。あんたに借りた恩は返しきれない。

 ……特別だからな?」


「あぁ、感謝するよ。」



 そうして俺は適当な鉄剣を十本手に取り、ラダーバに渡した。


「これ、全部か?

 金持ちアピールでもしに来たのですか、キリアス様?」


「そんな呼び方するな。実際に必要なんだよ。」


 そうして俺は金を払い、その十本の武器全てに魔術刻印を付けた。


「買ったのに申し訳ないんだが、これ全部預かっててくれ。」


 ラダーバはとことん意味が分からないという顔をしている。

 まぁ、そりゃそうだよな。


「預かるといっても、安全な場所においてくれてたらいい。説明しようとしたら長くなるから聞かないでくれ。」


「……。

 ははっ!本気で十本もお買い上げとは、こりゃ参った。一瞬でお得意様だ。

 お得意様の言うことは聞かなくちゃな。

 何も聞きやしねえさ。」


「助かる。それじゃ、俺はもう行く。

 積もる話もあるが、そんなことをしに来たわけじゃないからな。」


「あぁ、わかってるさ。

 ……今は、冒険者のキリアス。だもんな。」


「そうだ。またいつか、この土地の元領主の息子として帰ってくるさ。

 ……じゃあな。」



 俺はそういって、ラダーバの武器屋から出て行った。

 ラダーバも成長しているようだ。あの時よりもずいぶんいい顔をしていた。積もる話を話してやりたかったなぁ。




 やれる準備はこれだけ。あとは持ってきているポーションと自前の剣があれば十分だ。


 ちなみに俺は防具をつけていない。理由は簡単で、防具をつけてたらまず身動きが取れないからだ。


 俺以外の剣士はもちろん防具をつけている。何なら盾も持っている。これはほかの冒険者の筋力のパラメータが狂っているだけ。……いやほんとに。



 考えても見てほしい、体に鉄をぶら下げた状態で動けるのか?と。俺は動けなかった。


 何度も他の冒険者から、



「防具をつけていないから、いつも重傷を負うんだ。」


 と言われる。

 何度言われても。絶対つけないけどな。





 そうして、俺とラズは竜人がいるという洞窟へその足を向けた。

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