冒険者編28 あいつらがいない間は……
翌日、ギルドに向かうとギルドの外でドンキ、グルークパーティや上位ランクの冒険者が大勢、何かの準備をしているの姿が見えた。
冒険者たちを見送るかのようにミールもギルドの外に出ていた。
「おはよう、ミール。今日は何かあるのか?」
「おはよう。……今日は皆が遠征に行く日なの。
それも今回の遠征は大規模でギルドランク、Aランク以上の冒険者は全員招集。
うちのギルドも大勢の冒険者を遠征に送るんだ。」
ほ~ん、遠征か。
確か、新しく発見されたダンジョンの攻略とかだっけ。これだけの人数が行くってことはそれだけすごいアーティファクトが眠っているということだろうか。
「お、キリアス!今日も早いんだな。」
そうして、俺に声をかけたのはグルークだ。昨日あれだけ飲んでいたのに平気な顔をしている。
それに比べて後ろには頭が痛そうなドンキの顔が見えた。二日酔いの影響だろうな。
「おはよう、グルーク。遠征に行くんだってな。今回の遠征はどこに行くんだ?」
「今回のはデルタギルドからの応援要請だから、なかなかに遠い場所だ。」
デルタギルド、獣人族が多いギルドだったはず。たしか、このギルドから一番遠い。
「これだけの人数が必要なら、神造兵装が核のダンジョンとかなのか?」
「あんま説明を聞いてねえからわかんねえな。
ミーちゃんは知ってるか?」
「確認されているわけではありませんが、新造兵装ではないという予測がされてますね。
もとから、とても強力なダンジョンであり、その最下層。つまりダンジョンのボスを攻略するために応援要請を出したようです。」
「……だそうだ。とにかく俺らは全員このギルドを離れるから、ミーちゃんのことと、このギルドのことは任せたぞ!」
グルークはそういいながら俺の肩を思いっきり叩いた。
「言われなくともわかってるわ!あと、痛い。」
「はっは!その感じなら安心だ!
……それじゃ、俺たちはもうそろそろ出発だ。じゃあな。」
「グルークさん、お気を付けて。」
グルークたちはそういって、駅の方に歩いていった。
このギルドに来てから三年たったが、これだけの人数がギルドからいなくなるのは初めてかもしれない。
「なぁミール、こういう大規模な遠征はちょくちょくあるのか?」
「ちょくちょくはないけど、一度もなかったってわけじゃないよ。
頻度で言うと……5年に一度くらいかなぁ。
こういう時はあの騒がしさが一気になくなるから少し寂しいんだよね。大体、2,3か月はこの状態が続くから不安にななってたよ。
……でも、今回はキリアス君がいるから大丈夫だね!」
「……。
……。」
///えっと、……恥ずいっすね。
信頼している笑顔。頼ってくれているという感覚。ミールの笑顔があまりにも可愛すぎたのだ。仕方ない、仕方ない。
「主、そろそろダンジョン行かないの?
イチャイチャするのはもう見飽きたよぉ。」
唐突に霊体化を解除したラズ。上がった体温が一気に下がるのを実感した気がする。
「うっせぇわ、それと今日からはダンジョンに行かないぞ。シータの中でできるクエストをするから。」
「急にどうしたの?」
「ま、グルークに任されたからな。できるだけシータの中で活動したい。」
「ふ~ん、わかったー……。」
やる気なさげに霊体化していってしまった。
これまた不機嫌なラズ。あとで謝っておこう。
「それじゃ、そんな感じで適当なクエストを受けるよ。」
「うん、分かった。頑張ってきてね。」
そうして、俺とラズはシータの中でできるクエストを受けていった。
久しぶりに討伐クエスト以外のクエストを受けた気がする。町のほとんどのおばちゃん、おじちゃんから……
「久しぶりやなぁ……。」
「大きくなったねぇ……。」
と言われてしまった。第二の故郷にも箔がついてきたものだ。
もう、ご近所さんのお孫さんポジションなんだよなぁ。
ただし、ご褒美のお菓子やジュースはやっぱりラズの方に向いてしまう。
こういう光景も久しぶりだ。
俺が汗をだらだらかいて働いているその横で、依頼主の人たちからお菓子を貰ってうれしそうに食べているラズ。
何というか、こういう状況にも慣れてしまったものだ。
ラズが魔術を使うときは、俺がよっぽどのピンチの時しかない。ゴブリンの件以降も何度かそういうことがあったがそれでもラズが魔術を使った回数は両手で数えられるぐらいしかない。
それが俺とラズのデフォルトなのだ。
精霊使いのサシタルからは何度も、何度も……
「お前は精霊使いじゃない。」
と言われてきた。実際のところほんとにそう。精霊使いの当たり前を押し付けてこないでもらいたいね。
そうしてクエストを一通りこなすと、時間は昼頃になっていた。俺とラズは、クエスト達成の報告と腹ごしらえをしにギルドに向かうことにした。




