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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 冒険者編
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冒険者編27 ミールとギルド

 そうして、いつものようにシータギルドの宴会は終わった。相も変わらず、このギルドの宴会が終わった後の静けさは群を抜いている。宴会の時とのぎゃぷがあるからだろうか。


 俺がご飯を食べる時間は宴会が終わった、次の日の1時。いわゆる25時。


 全員が寝静まった後にミールと一緒にご飯を食べる。

 1日に一度のご褒美タイム。



「今日もお疲れ様、キリアス君。」


 そういって店の奥からこちらに来ているミールは片手に俺が頼んだ料理を持っている。


「ミールもお疲れ様。」


「はい、トンカツ定食。」


「さんきゅ。……いただきます。」


 俺はそういって、手を合わせいつも食べてるトンカツ定食に手を付けた。


 このトンカツ定食が一番うまい。

 この世界に来てから様々なご飯を食べてきたが、このギルドのこのトンカツにはとんでもない依存作用がある。それくらいおいしい。



「ほんとにキリアス君はおいしそうに食べるよね。ずっとトンカツ定食で飽きないの?」


 そう聞かれた俺は、トンカツ定食を食いながら答えた。


「飽きるわけないな。

 このトンカツのジューシーさ、肉の質の良さを物語っている。こんがりと上がった衣はサクサクで食った時の満足感がやばい。

 それに米もうまい。コンビニ弁当みたいにぱさぱさのまっずい米じゃないんだ。あまりにもうますぎる。あと、安い。」


「その「こんびに」?ってのが何かわからないけど、とにかくキリアス君はトンカツが好きなんだね。」



 いわゆる「異世界転生」ならば、大抵は米もなければ飯もまずいが当たり前と思っていたが全然そんなことはない。


 前世の時に飽きるほど食ったコンビニ弁当の50倍はうまいのだ。飽きるわけねえんだよなぁ。



 俺は口の中に入っている米とトンカツを飲み込んで、少し前から気になっていたことをミールに聞いてみた。少し前からというより結構前から。


 この三年間でほかのギルドにも行ったがミールほど若い受付嬢はいない。このギルドにはほかにも受付担当の職員がいるが、やはりミールは目立つ。だから気になるのだ。



「そういえば、これまで聞いたことがなかったんだが、ミールはなんでこのギルドで働いているんだ?

 ただ単に、ファンタジーオタクだからっていうんなら別にいいんだが……。」


「……。そういえば、言ってなかったかもね。

 ……実はこのギルドって私の誕生日と同じ時に生まれたんだよね。」


「……初めて聞いたな。

 ……ってことはこのギルドはできて日が浅いんだな。」


 ほかのすべてのギルドには百年以上の歴史がある。

 しかしミールの誕生日と同じということはこのギルドはまだ18年しかたっていないということだ。


「そう。それでなんで私がこのギルドで働いてるかっていうと、このギルドの発足メンバーの一人が私のお父さんなの。」


「父さん……そういえばミールの父さんにもあったことがなかった。裏でずっと事務作業でもやってるのか?」



 俺がそう言うと、ミールは寂しそうな顔をしてうつむいた。訳アリ……というのが一瞬にして理解できるように。



 少しの間があいた後、ミールはその口を開く。


「……実は私のお父さんは……お母さんもだけど、私を生んだ後にすぐ病気でなくなっちゃったの。」


「……ごめん、言いたくないことを聞いたよな。

 ……無理して言わなくていいんだぞ。」


「いや、大丈夫。もう……何度も泣いたから。

 お父さんが死んじゃう前にこのギルドを託されたの。全部任せる、って。ほかの人たちをいっぱい頼って、このギルドを大きくしてくれって。」


「……。」


「……ほんとに、無責任だよね。……でも、頑張ってよかったって今なら思えるよ。

 ドンさんやグルークさんパーティの皆にはいっぱい頼ったし、いっぱい泣いた。たくさん迷惑かけたけど

 ……それでも楽しかったもん。」



 ドンキやグルークがあれだけミールの父さんずらしていたのは、ミールにとっての本当の父さんのような存在だからだったらしい。

 ただの酒飲みとしか思っていなかったが、もしかしたらミールの悲しさを少しでも和らげるための、この宴会の騒がしさだったのかもしれない。



「そう、だったんだな。

 ……お前の父さんと母さんにも、」


 俺は酔って寝ているあいつらの方を向きながら……。


「あの酒飲みどもにも、感謝しなくちゃな。

 ……このギルドがなかったら、このトンカツにも、お前にも出会えなかったんだから。」


「……!

 うん、ほんとに頑張ってよかった!」


 少し涙目になっていたミールだったが、笑顔で俺にそう言った。

 その笑顔を見た俺はもう一度トンカツ定食を食い始めた。

 この幸せな日常をしっかりと、かみしめながら……。

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