冒険者編25 これが一種の無量空所
あの後、俺が目覚めるとそこは病院でベッドの上にいた。
前回みたいに全身ギブスなんて言うふざけた格好でなかったので少し安心したのだが……。
ベッドの横の椅子にはカルナが座っている。どうやら俺が起きるのを待っていたようだ。
「起きたか、キリアス。調子はどうだ?」
体調に関していえば、腹の中心がとんでもなく痛いだけでそれ以外に目立つ外傷や痛みはなかった。
「調子はだいぶいいぞ。
俺が病院のベッドの上にいるときは大体死にかけなんだが、今回はそうじゃないからな。……ただ腹の中心が……痛い。」
「ははっ、たぶんだがそれは俺の最後の攻撃のせいだな。
思いっきり腹の中心に牙突を食らわせたから、その痛みが残っているんだろう。」
「おいおい、ルール説明では寸止めしてくれるんじゃなかったのかよ。
攻撃が見えないほどの一撃だったぞ。」
「あぁ、それに関してはすまん。
……正直不意打ちの攻撃すぎてな、……ちなみになんだがお前はいったい何をしたんだ?」
「?俺が転移したのが分かったから攻撃してきたんじゃないのか?」
「……まぁ、そこに関しては俺もわかってないんだわ。
……というか、お前転移って言ったけど。転移ってなんだ?魔術……なんだよな。お前の魔力量でも使える魔術なんだな、その転移ってのは。」
「転移魔術は古代の魔術だ。使用魔力量はだいぶ少ないと思うぞ。俺でも使えるんだからな。」
俺がそう言うと、カルナはひそひそ声の体制になって……。
「……なぁなぁ、それ俺にも教えてくれよ。それが使えるようになったら、ドンキのおっさんに勝てると思うんだよな。」
「…………。
ははっ。……はははっ。
「いいだろう、教えようではないか。」
そこから俺は何時間も話した。
うん?何を話したかって?
もちろん!この転移をするために必要な知識の全て、さ。
転移に使う物理式の全てを説明し、量子力学も説明した。何から何まで、一から十全てを説明してやった。
久しぶりにこんな気分になったよ。前世ぶりに人に対して俺の知識を説明した気がする。
転移の全てを説明し終えた時、カルナの顔。まさにこんな感じ。
( ゜д゜)ポカーン
素晴らしい反応をありがとうカルナ君。
君の反応は百点満点。まさに想像していた通りの反応だ。
「これを全部できたら転移ができる。とても簡単だな!」
「……はっ!い、意識を完全に失っていた。
……あ、ありがとうなキリアス。よくわかったよ。
お、俺はとりあえず王都に帰ることにする。報告をしに行かなきゃいけないからな。
お、お元気でぇ。」
げっそりした顔で病室を出て行ったカルナ。なぜだろうか、少し満足感がある。
あれだけ、自分のことを最強だと豪語していたカルナの頭を完全にぶっ壊してやったのだ。満足しない方がおかしいというものである。
これまで様々な冒険を経て少しずつだが成長を実感しているキリアス君。このゴブリンの事件以降も様々な出来事に巻き込まれます。
とんでもなく不運なんでしょうねぇ。ま、自分が書いてるからそりゃそうなるんですけど……
初めてシータギルドではないギルドに行った途端にそのギルドの派閥争いに巻き込まれ……
八つのギルドから新人代表者だけをパーティメンバーにする、新人調査団に加えられ、とんでもないハチャメチャパーティで魔界に行ったり……
一時だけだが、ドンキと一緒に王都に行き、王都騎士団の訓練に参加しエッグいほどしごかれたり……。
キリアスの心情的に
「まじで死ぬ!!」
「はははっ!!主、ほんっと面白い!!」
という感じだろう。
その間にキリアス君の剣術はどんどんと成長していった。
そんな経験を経て、キリアス君は冒険者として名を馳せていく。そのうちにギルドランクはようやくBに到達した。
ちなみに、キリアス君の力量だけを比較するならば、ギルドランクはD相当ぐらい。
なので、いつまでたっても確立したパーティメンバーはできない。かわいそうなキリアスの姿はラズちゃんにとっていい栄養だったろう。
もちろんだが、その間にキリアスの転移魔術師としての実力は上がっていった。
用はさまざまな転移を身に着けたのだ。
そして、『キリアスの物語』に関係のある事件が起こるのはキリアスが冒険者になってから三年後のこと。
キリアスの成長をお楽しみに!




