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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 冒険者編
33/52

冒険者編23 カルナとの特訓

 俺が目を覚ますと、そこは寒空の下。ギルド近くの広場にあるベンチだった。


 そして、頭にはとても柔らかい感触がある。

 夢から覚めたが、このままもう一度寝てしまいたいと思うほどに……。




 起きてから五秒後にその感触の正体が分かる。

 すぐに飛び起きて、膝枕してくれていたミールに謝った。



「ご、ごめん!えっと……」


 俺はそこで周りの状況を確認した。


 ギルドの近くにある広場は普段から冒険者の訓練場として使われている。

 俺も、何度も使ったことがある。というかグルークやらドンキやらが特訓をつけてくる。



 そんな広場で俺が見たのはカルナとドンキが木剣をもって戦っているところである。


 広場の真ん中で戦っているが、広場の外側にも木剣をもってこの戦闘を見ている冒険者がいた。中にはひどい痣を負っているものや、肩を抑えているものもいる。

 そんな奴らがいて、しかも夜だというのにこの広場はとても盛り上がっている。そこらじゅうで歓声が上がっている。



「起きた?よく眠ってたよ。」


「……何これ……どういう状況?」


「ふふっ、まぁそうなるよね。

 ……キリアス君が気を失っちゃった後に、聖騎士のカルナ様がギルドの中に入ってきたことに気づいたの。

 それだけでも十分驚きだしギルドの中が盛り上がったんだけど。カルナ様がことの顛末を教えてくれてね。

 ……キリアス君は本当に、不幸なことにしか巡り合わないんだな。っていうことで納得したの。」


 それだけで納得しちゃうあたり、シータギルドが異常なのかもしれない。異常であってくれ。

 もう少し新米冒険者のことを心配しろ。


『キリアスはよく不幸なことに巡りあうから、まいっか!』とかじゃねえだろうな。



「それでキリアス君の件と、ゴブリンの件は片付いて。

 そこからはカルナさんが話の輪の中心になってみんなの宴が始まったの。

 そしたら、カルナさんが急にドンさんと戦いたいって言って、……さすがにこんな時間からはしないだろうって思ってたら、……気づいたらこんな感じ。もう12時過ぎてるのにね。

 それから、ついでだからってほかの冒険者もカルナさんと戦うことになった……。っていうのが事の顛末……かな?」



 さすがはカルナ。戦闘狂代表。


 つまりは俺が寝てる間にほかの冒険者はやられて、カルナとドンキの勝負が始まった、と。


 ちなみにその勝負は、ドグとカルナの勝負のような力と力の勝負ではなかった。

 何といえばいいのだろうか……。技と技。もちろんだがどちらも魔術は使っていない。



 カルナは、ドンキの方が剣術なら強いといっていたが俺から見ればどちらも同じように見える。


 そして、どちらも本気で戦っているのがわかるのだ。手合わせなんてレベルじゃない。


 二人の顔は険しく、互いに殺しあっている……そのような顔だ。

 これは手合わせではなく、死合い。それが感覚で分かるものだった。



「あの二人、すごいんだな。」


「うん、あの二人は師弟の関係であり、ライバル。

 ここ最近は来てなかったけど、すごいときは月に一度はシータに来てあんな異次元的な勝負を私たちに見せつけるの。

 そのたび剣士の冒険者はみんな絶望したり、より頑張ろうとしたり、いろいろな刺激を与えてる。」



 カルナが勝ちたい相手って言ってたのはそういうことか。師弟であり、ライバル。いい関係じゃないか。ドンキのライバルなんて俺には到底無理だな。



 なんてことを考えていたら、勝負がついたようだ。

 広場の中心には首に木剣を構えられている、カルナの姿があった。



「今回は俺の勝ちみたいだな、カルナ。」


「歳食ってんだからもうちっと自重しやがれ。

 また強くなってるだろ。」


「そういうお前も、敵を見ることを覚えてきたらしいな。

 闇雲にその実力だけで突っ込むのはやめたらしい。」


「こっちも必死なんだよ。」



 そういうと、カルナはその場に仰向けで倒れこむ。ずいぶんと疲れているようだ。


 あのカルナが負けることがあるなんて。

 ……そう、思わざるを得なかった。



「クッソ、前来た時の最後の試合は勝ったんだけどなぁ。」


「あの時はお前の新しい技にやられた。

 だが、今回は技術だけで戦おうとしただろ。技術だけなんだったら俺にはまだ勝てねえよ。」


 そういうと、ドンキは俺の方を向いた。


「お!キリアス、起きたか!

 どうだ、お前もカルナと一戦やったらどうだ?」



「馬鹿言え!こっちはけが人なんだぞ。そもそも戦闘なんて……。」


 と、そう思ったが俺の体からはあの時の痛みはもう亡くなっていた。

 骨折していたと思っていた腕も動くようになっているのだ。


「貴様のケガはもうない。

 僕が直したからな。」


 そういってくるのは、青髪メガネの白いマントを羽織ったまさに魔導士のような人。

 ベンチの後ろで腕を組んで戦闘を見ていたようだ。



「初めて見る顔だな。あんた誰だ?」



「そういえばキリアス君とサシタルさんはあったことがなかったね。

 この方は、この前の遠征に行っていた、ギルドランクSの精霊使い。サシタル・ウィークさん。

 この人の治癒魔術はすごくってね、キリアス君のけがを直したのはこの方なんだよ。

 ちゃんとお礼言いな。」


 まさかあのけがを治癒魔術だけで治すとは……。

 もしかして、そうとうすごいやつなのか?


「そ、そうか、ありがとう。サシタル。」


 俺がそう言うと、サシタルはその持ち前の眼鏡をクイッとさせ、左斜め上を見ながら……。


「ふんっ。当然だ。

 けが人がいるのならそれを助ける。感謝されるようなことじゃない。」



 はい、腹立つ奴いただきました。感謝を素直に受け取っとけば、何もいざこざなく過ごしていけるというのに、まったく。


「それで、どうするんだ?

 もうけがはないんだろ。」



 周りの冒険者からもなぜか期待の目線を送られている。ここで断っても後々面倒になることは明白。

 であるならば……。


 そうして、俺は立ち上がり、カルナとの戦闘に行くことにした。


「頑張って、キリアス君!」


「あぁ。」


 どうせなら当たって砕けろだ。

 やる前に諦めるなんて、俺らしくないからな!

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