冒険者編21 この精霊から感じるもの……
「あれ?寝てる?」
俺が過去の話をしているとキリアスはもう眠ってしまっていた。良い睡眠導入になったようだ。
個人的にはもう少しキリアスについての話を聞きたかったが……。
「……。」
「ありがとね、聖騎士カルナ君。
主のことを救ってくれて……」
もう寝た、そう思っいたが、
次の瞬間にキリアスの方から可愛らしい声が聞こえた。
そちらを向くと、そこには妖精のような美少女がいた。その美少女は、キリアスの寝ている横顔に座っている。
美少女(ほんとに小さい)である。
キリアスのことを主といっていることはそういうこと?
は!?もしやキリアスには人外を奴隷にするような癖があるのか?!
この年なのにすごいもんだ。
まぁそんなわけはないだろう。
「まさか、キリアスの精霊?」
「その通りさ。私はこのダメダメ主の精霊、ラズ。
どう呼んでくれたって構わないよ。」
その精霊は気持ちの良い笑顔をしていたが、きっとこの精霊も疲労困憊のはずだ。
放たれる魔力がとても微弱で弱弱しい。それがすべてを物語っている。
持っているのは弱弱しい魔力のはずなのに、なぜかこの精霊に俺は本能的に恐怖してしまう。
「分かりました。……では、ラズさん。と。」
「もう一度言わせてほしい。本当にありがとう。
私じゃ、あの時の主は救えなかった。君が来てくれて本当に良かったよ。
初めてかもしれない。こんなに恐怖したのは。
……主の死に恐怖してしまったんだ。」
「いえいえ。俺はただ、一人の騎士として人を救ったまでですよ。
そのついでに眷属王と戦えて満足してますが……」
「ふふっ。君、それ逆じゃないか?
眷属王と戦うついでに人を救った。だろ?」
「おっと、そうだったかもしれません。」
「君がもう少し早く来てくれてたら、私も主も頑張らなくてすんだんだけどなぁ。」
「ははっ、面目ない。なんといっても今日、この情報を知ったもので、王都から急いで走ってきたのです。」
そして、俺は……さっきから気になっていたことをラズさんに聞く。もしかしたら、これは俺がこの精霊に恐怖している理由なのかもしれない。
「……それより、ラズさん。
あなたは本当に……ただの精霊、なのですか?」
「なんだいなんだい、その目は。
確かにしゃべる精霊は少ない。
けれど存在しないわけじゃないだろ?」
「えぇ、もちろんそこにも驚いています。
しかし、俺がそう思ったのはあなたから生じるその……瘴気。それは一体なんですか?」
そうだ、俺が恐怖してしまった原因。
それはラズさんから生じる瘴気が原因だ。
ただし、この人からは瘴気が生じるような人柄を感じない。
俺は聖騎士、聖なる神の加護があるからこそ瘴気をはっきりと見ることができる。
ラズさんからは瘴気が少ないものの、確実に瘴気をまとっているのだ。それもどす黒い。これまで一度も見たことがないほどに。
「まぁ、君聖騎士だもんね。それなら納得だ。」
ラズさんはそういい、話し出した。
「いや~ね。実は、昔使えていた主人があまりにもくずだったのさ!
そんな奴の精霊だったから私にも少しだけ瘴気が移ってるんだと思う。ごめんね、勘違いさせたようで。」
とても失礼なことを聞いてしまったようだ。
笑顔でラズさんは語っているが、とてもつらいことのはず。じゃないとあの黒さを感じることはない。
俺はすかさず、頭を下げた。
「申し訳ない!嫌なことを思い出させてしまった。
騎士として……いや男として、してはならないことをした。本当にすまない!」
「ははっ!君は律儀なんだね。」
「それに、俺がもっと早くに到着していればあなたが手を煩わせることもなかった。……キリアスがこんなことになることもなかった。」
そうだ、キリアスは、今は普通に寝ているが、あの洞窟の中にいた時。とっさに麻痺魔術をかけたから発狂はしなかったものの、普通であれば今すぐにも痛みに耐えきれず気絶していてもおかしくはない外傷だった。
「うーん、本当に律儀だ。
……まぁ、確かにもうちょっと早めに到着してほしかったよね。と言っても、君が来てくれなかったら本当に危険だったんだ。文句は言わないさ。
……。もうちょい早めがよかったけど」
本音が漏れてるんだよなぁ。
「それじゃ、私は霊体化するよ。さすがに限界。
主を預けても大丈夫な人かどうかを見に来ただけだから。」
「まさか、聖騎士を疑ってたんですか?」
「すまんね。癖になってんだ、人を疑うの。
……じゃあね。」
そうして、ラズさんは霊体となって姿を消した。
人を疑うのが癖とは、難儀なものだ。
俺も昼からずっと走りっぱなしだったから少し疲れた。
今日の昼にあの騎士たちの話を聞けて本当に良かったな。面白いやつと戦えて、面白いやつと会うことができた。あの騎士たちには感謝感激。
昇格願いでも出してあげようかな。
そうして、俺もキリアスと同じように眠りについた。




