冒険者編20 聖騎士・カルナ
差し伸べられた手をつかみ、俺はさっと立ち上がった。
「俺はキリアス・ルドルーファだ。
さっきは助けてくれてありがとう。」
「あぁ、どういたしまして。
……ちなみになんだが、お前はなんでこんなところにいたんだ?」
「ここらへんで上位種のゴブリンが出現しててな、その調査に来てたんだが不運にもあんな化け物にかち合ったわけだ。
カルナが来てくれてなかったら本当にお陀仏だったよ。」
「はっはっは!そういうことか!ってことはお前はシータギルドの冒険者ってことか?」
「あぁ、そうだ。それで、聖騎士様はなんでこんなところにいるんだ?
聖騎士ってのがどういうやつなのかも知らないんだけどな。」
「そうか、まずはそこからだな…」
そういうと、カルナは周りを見渡して、
「立ち話もなんだ、どこか座って話せるところはないか?」
そう聞いてきた。
地図を暗記しているからこそ、ここら辺に座って話せる場所がないことは知っていた。
それに空の色はすっかり夜。空にはきれいな月が見えている。
理由はそれだけではなく、ドグとの戦いのせいで俺の体はまたもボロボロになっているのだ。正直今立っているだけでしんどい。
「な、なぁ、カルナ。シータに来るつもりはないか?できれば今すぐにでも馬車に乗って帰りたいんだ。」
俺がそう言うと、カルナは俺の体を下から上まで見た後に
「それもそうだな。できるだけ早く休ませたい。
それにちょうどいい。俺も今日の調査が終わったらシータによろうと思ってたんだ。」
「なら、よかった。それじゃ馬車があるところまで、行くんだが……。
申し訳ない、肩を貸してくれないか?」
「……もちろんだ。」
そうして、俺とカルナは馬車に乗り込んでゆっくり話をすることにした。
「さて、まずはしっかりとした自己紹介だな。
俺は、王都騎士・四聖騎士が一人、孤独な特攻人、カルナ・ギルティ。
ギルティ家っていう、王族の分家だな。今の王様は俺の叔父だ。」
……ふぁ?!
「な、なんというか。大丈夫か?
俺、不敬罪とかで殺されない?」
「はっ!安心しろ、俺にそんな権限ねえよ。
俺は元王族。今はただの剣を振るう一人の騎士だからな。」
やはり王族だったのか。
カルナの、身軽な服装なのに高貴なイメージを抱いたのはきっとそれが原因だ。
「それで聖騎士ってのはいったい何なんだ?
王族に近いものがなる騎士……とか?」
「まぁ~、言い換えればそう何だが……。
簡単に言うと、神の聖なる加護を受けし、騎士。かな。」
神の聖なる加護?この世界に来て初めて聞いた言葉だ。
「なんなんだ、それ?」
「神の加護は知ってるだろ?その加護の特別バージョン……なのかな?
生まれた瞬間に決まってるってわけじゃないが、王族、貴族のやつは聖騎士になりやすいってのはあると思う。」
?????????
神の加護?なんだ、それ?
「すまん、まずその神の加護ってのが何なのかわからない。」
「はぁ?嘘だろ?ほんとに何も知らないんだな。」
「いやなに。俺も貴族の出でな。箱入り娘ならぬ箱入り息子だったんだ。
だから、冒険者になってから困ってることが結構ある。」
「そうか……面倒だがいいだろう。確かに騎士学校に通ってる時にルドルーファっていう家は聞いたことがある気がする。
どこの家だったかは詳しく覚えてないけど……」
武力が強いルドルーファ家はやはり騎士学校にも多く行ってるんだな。
あの父親め、親戚とも俺を会わせなかったな?
「神の加護ってのはな、この世界の神様が人間に与えるものだ。
人間が魔物に立ち向かうための力とでも思ってくれればいい。その中で特別な加護を持ったものが聖騎士になる。」
ほほぉ。つまり俺に対する神の加護はとんでもなく少ないというわけだ。
まさか、本当に神に嫌われているとは……
「ちなみに、特攻人というのは?」
「あぁ、それな。
それを言うには俺がどういう人間なのかを説明する必要がある。まぁちょっとした長話になるが付き合ってくれや。
……先に言っておくんだが、俺は最強だ。」
急にとんでもないことを言い出すんだなこいつは。
だが、実際最強。あの戦闘を見たらその感想は誰もが抱くものだろう。
「それは自分で自負している。騎士学校ではここ二十年、誰にも塗り替えられなかった、塗り替えられると思われていなかったとんでもない記録を更新したんだ。
何の記録だったのかは興味なかったから覚えてない。
といっても、その実力は聖なる加護によるものだ。元から才能があったとはいえ、そんな加護与えられたら誰だって強くはなる。
ってな感じで、俺は聖騎士になる名誉を与えられた。
聖騎士になること自体はよかったが聖騎士になってる人を見たら暇になってる人が多い。これは間違いない。
そして、俺は戦闘狂。
戦えたらなんでもいいと思っちまう人間だから最初は断ったんだよ。聖騎士になっても戦えなくなったら楽しくない。つまらない。
しかしそんな時、王様の方から直接頼みに来たんだよ。聖騎士になってくれ、って。
さすがにそれじゃ断るにも断れない。ただし、俺も俺であんまり乗り気じゃなかったから俺は困ってたんだよ。
どっちに転んでも、いい気分にはならんだろ?
そこで俺が困ってたら横にいた聖騎士の知り合いが、特攻人として自由に動き回る聖騎士として採用したらどうか。っていう案を出したんだ。
王城の護衛ではなく、遊撃隊みたいな感じで眷属王の情報が入ったところに神出鬼没で出てくる聖騎士として……。
そして、そうなった今の姿こそが俺だ。」
今の話を聞いてただけでもわかる。こいつは本当にイかれてるらしい。
俺をぼこぼこにした眷属王に所かまわず勝負を挑むだと?とんでもないやつだ。
「ち、ちなみになんだが、……これまでどれだけの眷属王と戦ってきたんだ?」
「そうだなぁ、細かくは覚えてないが10人ぐらいの眷属王とは戦ってる。」
「……。」
カルナは眷属王の専門家らしい。
だが、確かに遊撃隊として強い騎士を使うのはいいな。眷属王の情報、つまり魔王軍の情報を集めながら人間軍が漏らしている情報はたった一人の騎士の情報だけだ。
非常に理にかなった戦法。ついでに倒したりすることもできる、と……
……あれ?そういえば、カルナはゴブリンの眷属王を逃がしていた。
しかもわざと……、なんでや?
「なぁ、カルナ。なんであの時、眷属王を殺し切らなかったんだ?
そっちの方が人間側としちゃ得だろ?」
「あぁ、実はな。
眷属王ってのは死んでも復活するんだよ。
1年の期間は要するが、1年たてば簡単に復活しちまう。どういう原理かは知らねえが。
……だから、あそこで殺してもどうせ1年後には復活する。なら、殺しても殺さなくてもどっちでもいい。
なんなら、殺しちまったらそいつと1年は絶対に戦えないんだ。そんなの嫌だろ。」
戦闘狂とは難儀なものだ。
何よりかわいそうなのはこの戦闘狂の上に立つ人、つまり上司。
こんなやつをうまく制御できているのだろうか。
……制御する気すらないんだろうなぁ。じゃないと、聖騎士なんていう最後の切り札を特攻人として使うはずねえもん。
そうしてカルナとの話に夢中になっていると、気が付けば俺は眠ってしまっていた。
さすがに疲れが回ったのだろう。
俺の体はとっくに限界を迎えていたのだからそりゃそうである。カルナには申し訳ないが眠らせてもらおう。




