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あの日あこがれた瞬間移動  作者: 暁雷武
あの日あこがれた瞬間移動 冒険者編
22/52

冒険者編12 暗躍せし魔王軍

 これはキリアスがギルドについてから三か月がたったころ。ゴブリンの一件が起こる前の会話である。





 魔界、魔王城最上階、王の間にてヴァンパイアの眷属王は調査を依頼していた眷属の報告を聞いていた。



「……報告は以上です。魔王様の痕跡はどこにもなく。」


「……そうですか。下がりなさい。」


「御意。」


そうして、眷属は空気の中に霧が隠れるようにヴァンパイアの眷属王の前から姿を消した。



 ヴァンパイアの眷属王は手を組み、次の捜索の手を考えながら独り言を言う。これまで、魔王がいない中魔王城の運営のほぼすべてを一人で行っていた眷属王はひとりごとが癖となっているように、当たり前に声を出す。


「魔王様の存在が確認できない。

 パスがつながっているから生存していることは分かる。

……ただ、一体どこにいるかが分からない。

 あぁ……魔王様、私は不安でございます。

 あなた様が生きていることだけが、あなた様の存在だけが私の生きる理由だというのに……。」




「ん、うん!あぁ~……魔王様にご執心のところ悪いんだけどよ。言われてた北側の無知性は全部やってきたぜ。

何かやればいいことがあればするんだが……」


 王の間の大きな扉にもたれかかりながら、ヴァンパイアの眷属王にそんなことを尋ねるのはゴブリンの眷属王だ。



「な!?……居るなら居るといってください。

 依頼はこなしてきたのですね。ありがとうございます。次の依頼……ということなんですが、

 ……人界に行ってもらうことになりますが、大丈夫ですか?」


「……俺は眷属王だぞ。もちろん人界でもどこにでも行ってやる。……それで依頼ってのは何だ?」


「魔王様捜索の一環です。

いよいよ、魔界で捜索していないところがなくなってきたので、人界を探し始める最初の捜索として境界付近のダンジョン、洞窟を探してきてほしいのです。」


 依頼内容を一通り説明したヴァンパイアの眷属王に対して、キョトンとした顔でそんなことを聞くゴブリンの眷属王。


 一拍をあけて、ゴブリンの眷属王は大笑いし始めた。


「なっはっは!俺を捜索に使うとは、まさに眷属扱いだな!」


「眷属扱い……。そう言いますが、これまでもそうだったのでは……?」


 一通り笑い終えた様子のゴブリンの眷属王は、


「……確かにそうだな。……ちなみにだが、捜索をしたら戦えるのか?」


 ゴブリンの眷属王がヴァンパイアの眷属王に求めるものはただ戦闘だけだった。

ゴブリンの眷属自体が戦闘狂のような性格。ならば、ゴブリンの眷属王が戦闘狂なのも納得である。


「人界に行きますが、境界付近の調査だけなので戦えることはないのかもしれないですね。」


 それを聞いて残念そうに振り返って帰ろうとするゴブリンの眷属王。


「だったら、俺は断るぜ。戦えるからお前の言うことを聞いてきたんだからな。」


「であれば、調査が終われば私があなたと戦ってあげますよ。私であれば、それなりに満足できるのでは?」


「おいおい、すぐに終わって面白くねえじゃねえか。血がたぎる戦いがしてえんだよ。俺は。」


 ゴブリンの眷属王は知っていた。

というよりも、魔界に住むすべての生物が知っていることだ。ヴァンパイアの眷属王の実力は群を抜いて高い。

それは比べるものを眷属王にしても同じことだった。



「であれば、別の眷属王と戦うことができる。というのはいかがです?」


「……まぁ、そうだな。ウィッチの野郎以外だったら面白く戦えそうだから……いいぜ、その仕事受けてやるよ。」


 何となくだが、ゴブリンの眷属王がこの仕事を受けてくれることは分かっていたヴァンパイアの眷属王。なんだかんだ、ゴブリンの眷属王はヴァンパイアの眷属王のことを気に入っているのだ。



「……そもそも、この仕事は俺向けだ。

調査であれば任せろ。適当にゴブリンを放っとけばいい。あとは人界を楽しんでくる。」


「お願いします。私はもう少し仕事が残っていますので。お気をつけて。」


 そうして、王の間から立ち去るゴブリンの眷属王。

ヴァンパイアの眷属王はその姿を見送ると、通常通りの事務作業に戻るため、作業机に腰を掛けた。

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