冒険者編3 ギルド登録
「主!あるじー!」
ラズに声をかけられながらほっぺをポカポカ殴られる。
「ふぁぁ……。なんだ?もう着いたのか。」
ラズにそういって、起き上がり窓の外を見る。
そこには、赤レンガ造りの建築物が多く、とてもレトロな雰囲気が味わえる町。シータがあった。
来たことがなかったのでこの街並みは結構新鮮だ。夕方になって街灯が灯ると、より美しく見える。
「シータについたぜ、兄ちゃん!」
「わざわざ呼びに来てくれるなんて、あんたいいやつだな。」
「なーに、助けてくれた人には礼を尽くすのは当たり前だろ。もう一度言わせてくれや、本当にありがとうな。」
車掌さんは俺が汽車から出るときにも声をかけてくれた。
「ここでいったんお別れだが冒険者になんだったら汽車を使うことも多いはずだ。汽車に乗る時はぜひ声をかけてくれ。」
「あぁ、分かった。その時はよろしく。じゃあな。」
そうして、車掌さんに手を振りその汽車は去っていった。
さて、ようやくついたシータ。
思った数倍速く、楽に到着した。人助けはしておくものだ、とつくづくそう感じる。
「それじゃ、ギルドに登録しに行こうか。もう遅い時間だが登録ぐらいならできるだろう。」
「なるはやで済ませてね、主。
……ふあぁ、もう眠いし休みたい。」
「わかったわかった。」
……。
……。
……。
……ギルド、どこ?
街の中を見ながらギルドを捜索しているのだが一向に見つからない。というかシータ自体が広すぎて迷子になっているような気がする。
ただ、この町は新参者にやさしいようだ。歩く町の人が声をかけてくれてギルドまで案内され、ようやく見つけることができた。
さっそくギルドの中に入ると、このギルドの様子が見て取れた。
ギルドの中はとても活気があり冒険者同士の中がよいことが見て取れる。様々な冒険者がおり、それぞれがテーブルを囲み酒を飲んでいる。
ギルド登録をしたいのだが、人が多すぎて受付の人が見つからない。
と思いながら立ち尽くしていると……
「よぉ、坊主!見ねぇ顔だな、新入りか?」
体がでかい筋肉ダルマみたいなやつが肩を組んで話しかけてきた。もちろん片手にはビールジョッキがある。
……酒臭え。
「ギルド登録をしに来たんだが受付がどこか教えてくれないか?あと酒臭え。」
「なんだ、まだ冒険者にもなってなかったのか。いいぜ、それなら……。ミーちゃん!新人だ!登録しに来たんだってよ。」
と、いくつか離れたテーブルの先にいたビールジョッキを何本も持っている女の子に声をかけていた。
「え!?新人さん!?
……はーい!少々お待ちを。」
その少女は持っているジョッキを配り終え、俺のところに来た。
「お待たせしました。登録ならこちらです。」
と、言って登録するところまで案内してくれた。テーブルカウンターの席に座った少女は座ってくださいと手で合図し俺を席に座らせる。
「では、改めて。シータギルドへようこそ。
このギルドの受付嬢を務めています、ミール・ハイターです。どれくらいこの町で滞在するのかはわかりませんが、今日からよろしくお願いします!」
とても行儀のいい挨拶。
年は……俺と同じくらいだろうか。
ま、年齢を聞くのは野暮って奴だろう。相手が自己紹介をしたんだ、俺もするのが礼儀だな。
「よろしくミール。俺はキリアス・ルドルーファ。冒険者になるためにこの町に来たんだ。」
「はい、よろしくお願いします!
……って、ルドルーファ?!ルドルーファって貴族たちの権力争いに武力だけで生き残っている、あの……?」
「た、たぶんそうだが……そんなに有名なのか?」
「有名かと聞かれればそれほど知名度はないと思いますが、噂好きな連中や貴族たちの中では知られていると思います。
そ、そんなルドルーファ家の方がなぜ冒険者に?
お言葉ですが冒険者よりも騎士などの方が向いているのでは?」
心底驚いたというような顔でそんなことを言われたが、もちろん俺が目指しているのは騎士なんかじゃない。
「そうかもしれないが、俺は冒険者になるんだ。貴族だって冒険者になっていいだろ?」
自分のことを貴族だなんてまったく思っちゃいないが、
「し、失礼しました。
それでは、このアーティファクトに手をかざしてください。」
そういってミールはテーブルの中から手のひらサイズのきれいな水晶を机に置いた。
言われた通り、俺はその水晶に手をかざす。
その瞬間アーティファクトは青色の光を発光させた。
「それでは、ギルド登録を始めます。」
といって、ミールはアーティファクトをしばらく凝視した。
すると、ミールはなぜか自分のあごに手を当て困惑し始めた。色々な角度から水晶を見ているが俺にはさっぱり何をしているのかわからない。
「ん……?あれ?
……キリアスさん何かしていますか?」
「?俺は何もしてないぞ。」
お?
まさかここにきてようやく俺の転生者特典が発覚するのか?
「本当に何もしていないんですよね?
ん~……あれ?そういう病気、もしくはアーティファクトが故障してる?」
ずっと困惑しているミール。
さぁ早く教えてくれたまえ。わが天賦の才能を……!
俺は頭の中で、腰に手を当て胸を張っている俺を想像する。もちろんだが実際にはしていない。恥ずいしね。
「お、怒らないでくださいね。
キリアスさんの魔力量なんですが、……人間が持っているはずの最低魔力量を大きく下回っています。
何か原因があるんですか?」
……。
「……生まれつきだ。気にしないでくれ。」
とても悲しくなった。
俺をより悲しくさせたのは俺がそう言った後、必至になって俺のことをフォローしてくれているミールを見たからだ。
はぁ、ガチできつい。
「ま、まあギルド登録に条件はないので大丈夫ですよ。それではギルドカードを作成していくのでプロフィールを教えてください。」
俺はそれから自分の情報をつらつらと述べていった。
「ありがとうございます。では、次にジョブを選んでください。
適性があるジョブは剣士、もしくは魔術師です。どちらにいたしますか?」
ジョブ選びの時に魔術師があるのは不思議だ。
魔力が最低魔力量を下回っているのに。
「ちなみに、どっちがいいとかあるのか?」
「そうですね……キリアスさんの場合ですと剣士がよろしいかと。
基本的にどのパーティにも採用されていますし、一人でもやっていけるジョブです。
ジョブチェンジ自体はいつでもできるので最初の頃は剣士にする、という人が多いですね。」
「そうか、わかった。俺のジョブは剣士にする。」
「分かりました。
それでは、これでギルドカードの作成、ギルド登録は終わりです。それでは次にギルドと冒険者の説明を……」
ミールがそう言いかけた時に俺の耳元にふっとそいつは現れた。
「主ぃ!!!早くして!!!おなかすいたし、早く寝たい!!!」
……。
耳がキーンと言った気がした。
「うるせぇよ!耳元で叫ぶなってあれほど言っただろ!」
「主が遅いからだよ!私、主に言ったもん、早くしてって。」
「それは悪いと思ってるけど、だからって耳元で叫ぶのはダメだろ。」
なんてことをラズと言い合っていると、
「「せ、精霊?!」」
ギルドにいた全員が俺たちの方を向いて声を上げた。
「キ、キリアスさんは精霊使いだったのですか?!……そうか、だからステータスがどれもあまり高くなかったんですね。」
あ。それちょっと辛い。
「もう登録とかいうやつは終わったんでしょ?
だったら早く宿に行こうよ!」
「ちょっと待てって、まだギルドの説明がだな。」
「ギルドの説明だけなら今日じゃなくても大丈夫ですよ。」
「お、そうなのか?悪いなミール。それじゃまた明日来るよ。」
「もう早く、行くよ!ほら!」
そういって、ミールは俺の耳を引っ張って外に出ようとする。
「痛い、痛い!すまんって謝るから!謝るから耳を離せ。」
そうして俺たちはギルドを出て、適当な宿を見つけそこに泊まった。
「とんでもない人が来ましたね。グルークさん。」
私はついさっきギルド登録を終えたキリアスさんについてグルークさんに話していた。
「そうだな。
上位精霊を見たことはあるし、精霊使いも見たことがあるが……。
人型で人の言葉をはっきりとしゃべる……、しかもあんなに主人に対して反抗的な精霊は見たことがねえ。見たことがない面白いやつだ!」
「何でキリアスさんは冒険者になったんでしょうね。何もせずにいたほうが安全だしお金は稼げます。」
「俺はルドルーファとか貴族たちの情報を全く知らねえ。だが……あいつの目は……何というか、修羅場を乗り越えてきたやつの目だった。
……勝手に判断するのは野暮ってやつだ。詮索してやるなや。」
「そう……ですね。」




