44.小さなパーティ
「まずは、ここに集まった者の祝福を願う為に乾杯といこうか。」
国王がそう話す。ウェル達はルード城内東側にあるホールに集められ、宴が始まろうとしていた。宴は立ちながら行うパーティ形式である。乾杯の挨拶は第一王女に当たるレウディが行う事になり、舞台の中央に立っていた。
レウディは黄色が中心の花模様が多く彩られたドレスを身に纏っていて、手には飲み物が入ったグラスを持っている。
「今回ルードは深刻な状況に陥りましたが、色々な方達によって危機を回避出来ました。これは今一度、国の体制を考えなければいけない時がきていると感じております。不安になる事が二度と無いよう、皆様が幸せに生活出来る様な王国作りを行っていきます。その為に、ここに集まった皆様には是非ご協力を頂きたく思います。では、長いお話はこの辺りにしまして、ひと時の幸せを共に感じ合いましょう。女神シエラ様の祝福と共に、乾杯!」
「乾杯!」
レウディの挨拶に続いて一同が乾杯の掛け声を放った。レウディは王族達が集まる輪の中に戻った。
「とても気品がある王女様ですね。でも、僕より年下と伺いました、さすが王族様です。」
「そうね、お兄ちゃんには一生手が届かない人だよ。」
シェリーは小さなケーキが乗ったお皿を持ちながら話す。
「なっ!?からかうんじゃない!僕だって、素敵な女性と結婚してやるさ!」
「お姉さんが出来るのは憧れちゃうな、頑張ってね!」
ティードはブルーのフォーマルスーツで赤の蝶ネクタイ、シェリーはスカート部にフリルが多めなピンクのワンピースをそれぞれ身に着けている。
「王女様が飲まれたのは、さすがにジュースだよな。」
ウェルはカクテルを飲みながら話す。
「それはそうだろ。そもそも、女性はほとんどお酒を飲んでいないと思うぞ。私だってジュースを頂いている。」
「ルネ、それはどうしてだ?」
「さすがに、こんな所でみっともない姿になったらいけないだろ…。」
「…なるほど。それはさておき、今宵のルネ様は一段とお美しい。」
「っ!?こ、これはシェリーちゃんとリネア嬢が一緒に選んでくれたドレスだ。こんな大胆な衣装は恥ずかしいのだが、どうだ?」
ルネはオフショルダータイプのブラックドレスを身に着けている、胸元のレースや後ろのリボンがポイントみたいだ。ウェルはシャツにジャケットを羽織っただけで、少しラフさを出している。
「貴族様に負けないくらいとても似合ってる、最初見たときはつい見とれてしまったぜ。」
「そ、そうか…ありがとう。」ルネは頬を赤らめながら話す。
「しかし、本当に俺達について行くのか?」
ウェルはシェリーとの巡礼の事をルネに聞いた。
「私も村を発展させる為に色々な事を学んだ方が良いと感じた。それに知り合いと巡る方が苦労が少なく楽しめると思ったから、今回の誘いに応じる事にした。」
「そうだな。大勢で行動するのも悪くないな、と改めて感じたよ。これからもよろしくな。」
ウェルは手を差し出した。
「ああ、一緒に良い旅にしよう。」
ルネも手を出し、握手を交わした。
「ロウ様、昨日ついに異界につながる事が出来た気がします。浮遊霊みたいな方とお話する事が出来ましたので。」
「さすがリネア殿、素晴らしい上達ぶりです。でも、そこからが長い道程になるかもしれません。根気強く、アルネア殿との繋がりを念じてくださいね。」
「はい、頑張ります!」
リネアは花模様の肩ひもとサイドスリットが特徴的な白いワンピースドレスを着ていた。ロウは黒のタキシード姿である。
「リネア殿はここに残って、王国改変の一員をなされるそうですね。」
「はい、アルネア殿の意志を受け継いで変えていきたいと考えました。ハレス卿も納得して頂きましたので、あちらには引継ぎに少し戻る程度になります。」
「大変素敵な考えだと思います。お教えした魔法は私とも会話が出来る事も可能になりますので、緊急時にご利用ください。」
「それは凄いですね!頑張って上達していきます。そういえばラウバ殿はこの宴に呼ばれなかったのですね。」
「さすがに大事に至るほどの当事者なのですから、招かれても喜んで参加できないでしょう。離宮でしっかりと更生して頂ければ良いのですが…。」
話の通り、ラウバは王都から少し離れた所にある、レミア離宮という場所で匿われている。
離宮は魔力により出入りを制限されており、ラウバは許可が下りるまで更生する事になっていた。
「それでは、只今より我がディ・ルードが誇る音楽団による演奏をお聞きください。」
執務長の挨拶により、待機していた音楽団が流れる様な曲調の演奏を開始した。
「ロウさん、私と踊って頂けませんか?」
ロウに声を掛けてきたのはシェリーだ。スカートの端を摘みながらお辞儀をしている。
「これは素敵なお嬢様、貴方と踊れるのは大変嬉しく思います。」
ロウはシェリーの手を取り、ダンスエリアで踊り出した。シェリーはとても楽しそうな笑顔で踊りだす。他の招待人達も踊りだし始めた。
「ティード様は踊らないのですか?」
リネアはティードにたずねる。ティードは首を思いっきり横に振った。
「いやいや、あんな素敵なダンスなんて出来ないですから!恥ずかしい思いをするだけです。」
「殿方は色々な経験をして成長していくものですよ。では、私と踊って頂けないでしょうか?」
「そ、そういう風に言われたら断れないじゃないですか。」
「大丈夫です、ティード様がしっかりと踊れる様にエスコートさせて頂きます。」
リネアはティードの手を取り、踊りだした。ティードを導くようにステップを踏むので違和感ないダンスになっている。
「ルネ、俺達も一曲どうだ?」
「社交ダンスなんて踊れるわけないだろ!それこそみっともない姿になる…。」
「大丈夫だって、楽しく踊れば良いだけだからよ。ほら、行くぜ!」
「お、おい!」
ウェルはルネをダンスエリアに引き連れ踊りだした。ウェルのステップに続ける様にルネは踊りだす。
「ルネさん、ウェルさんとのダンス、素敵ですよ。」
「ありがとう、もう何も考えられないくらいだ。」
「お嬢様がた、私達ともっと盛り上げていきましょう!」
「ベルドイさん、今日はめいいっぱい楽しみましょうね!」
「おうよ!いっぱい飲んで、騒ぐぜ!それ出来るのがルードの誇りだ!」
ベルドイは妻と一緒に少し動きの早いダンスを踊っていた。王族達も一緒に踊りだし、ホール内全体は素敵なハーモニーが溢れだしていた。
「皆様の素敵な未来の為、これから頑張って築いていきましょう。」
レウディはダンスを眺めながら、そう呟いた。




