43.それぞれのこれから
「さぁ、少年も沢山飲め!」
ベルドイはティードの肩を叩き、酒を一気飲みする。
「ベルドイさん、毎日飲みすぎです。また道端で寝てしまって、奥様に怒られますよ。」
ティードはブドウジュースを飲みながら答える。
「こんな良い事があったんだ、飲まずにいられるかってんだ!なぁ、野郎ども!」
「おうよ!」
ルードで起こった出来事に貢献した者達には、王族から褒美を頂く事が決まっている。
ベルドイ達も十分な金額を貰う事が決まっており、更には王国防衛隊の設立、その入隊も決まっている。
「王国防衛隊に入ったら、報酬で十分に食っていけるぜ!」
「ほんと、ウェル達のおかけだ。」
同僚達も喜びの言葉を投げかけてくる。
「お前らが声かけてくれた事、本当に感謝している。まあ、一時は死ぬかと思ったけどよ。」
「俺はベルドイのタフさを信じていたぜ。久しぶりに一緒に戦えてよかった。」
ウェルも勢いよく酒を飲んでいた。
「そういえば、黒騎士って奴は見つからなかったのか?」
「はい。魔族との戦いの後に確認したのですが、倒れていた場所には姿が見えませんでした。どこかに隠れているのかもと思い探してみましたが、どこにもいませんでした。」
「おそらく、魔族と一緒に消えたと考えている。」
「なるほどな、また何か起こりそうだな。」
「そうなった時の為の王国防衛隊だろ、頼んだぜ!」
「おうよ、まかせとけ!」
ウェルとベルドイはグラスを打ち付け合った。
「今夜も宴だぁ!」
「あぁ、いつになったら寝不足が解消されるのでしょう…。」
ティードは溜息をついた。
シェリーは街の中にある教会で祈りを捧げていた。
「シェリーちゃん、ここにいたんだね。」
シェリーは祈りを止めて、声をかけられた方向に振り向く。
「あっ、ルネさん。ウェルさんと一緒に食事は良いんですか?」
「あんな野蛮な付き合いはゴメンだよ。」
ルネは並べられた椅子に座る。シェリーも横に並んで座った。
「ほんの一週間の出来事なのに、とても色々な事を体験したよ。」
「ウェルさん達とルネさんが出会わなかったら、私もどうなっていたか分かりません。本当にありがとうございます。」
「私の方こそありがとう。これからはどうするんだい?また村で静かに暮らす予定かい?」
「いえ。女神様より巡礼の旅を命じられましたので、先ずはディ・ルード国を周ろうと考えています。」
「ウェル達とかい?」
「未だ皆さんには伝えていません。そうですね、ウェルさんにはお願いすると思います。」
「そうか、大変な旅になりそうだな。」
「ルネさんも一緒にいかがですか?ウェルさんとお別れせずに済みますよ。」
「なっ!?どうしてウェルに気があると思うんだ?」
ルネは頬を赤くしながら話す。
「だって、ルネさんはウェルさんと話している時だけ表情が違うんですよ。気付くに決まってるじゃないですか。でも、どうして恋しちゃったんですか?」
「んー、なんだろう。村の奴らでは感じない刺激をもらったというか、あいつを見ているとカッコいいと感じてそれで…」
ルネが少しもじもじしながら話すので、つい微笑んでしまうシェリー。
「なるほど、とても素敵ですね。私も刺激的な恋をしてみたくなりました。」
「シェリーちゃんは好きな人はいないのか?」
「ロウさんは素敵だと思いますが、年齢がちょっとですね。お兄ちゃんはだらしないし、これから見つけます。」
「なんだか楽しそうだな。」ルネはフッと笑った。
「じゃあ、尚更一緒に行かないとですね!」
「まあ、どうせ村に戻っても刺激的な事はないし、それに気になる事もある。考えておくよ。」
ロウは王都の薬屋を訪れ、商品を選んでいた。
「久しぶりに来ましたが種類が増えていますね。これとこれを組み合わせたらより効果的な薬が出来そうです。」
ロウは薬草や花の蜜などを手に取りながら、組み合わせを楽しんでいた。しばらくすると、外から人が入ってきた。
「これはマイシュチェル様、お買い物ですか?」
「リネア殿、あなたも薬の仕入れですか?」
「はい、常備薬を揃えておこうと思いまして。」
「なるほど、それでは少しお助けを。良い利用法をお教えします。」
「医者からの助言は大変助かります。」
二人は薬屋で素材や薬の商品選びを楽しんだ後、軽食屋に入ってお茶を楽しんでいた。
「なるほど、そういう調合方法もあるのですね。とても勉強になります。」
リネアはメモを取りながら、ロウから薬の調合方法を聞き出していた。ロウはコーヒーを、リネアはハーブティーを飲んでいる。
「ところで、アルネア殿は見つかりましたでしょうか?」
「いえ。ラウバからアルネア様が捨てられた場所を聞きましたが、そこは崖になっていました。おそらく海に沈んでしまったと思います。」
リネアは寂しそうな表情で話す。
「そうですか、残念ですね。アルネア殿とはどの様な関係だったのでしょうか?」
「私が孤児院にいる時に、手を差し伸べてくれたのがアルネア様でした。たまたま訪れたそうで、「お前から強い魔力を感じる、利用価値がありそうだ。」と言って、私を孤児院から連れ出してくれました。それからは、ハレス卿の所でお世話になっていました。」
「なるほど。アルネア殿は弟子を探していたと言っていましたし、それが叶ったのですね。」
リネアはえっ?とした表情になる。
「マイシュチェル様はアルネア様と会った事があるのですか?」
「ええ、アルネア殿とはここルードで魔法の研究をした事もある関係です。彼女の魔法はとても攻撃的でしたが、芸術的で魅力的でした。魔界の話もお聞きはしていましたが、大事にはしたくないとアルネア殿から制止されていたので。これほどの規模だったと考えると、早く動くべきだったと思います。」
「そうでしたか、私ももっとアルネア様のお傍にいればよかったと思います。でも、後悔していてもアルネア様は喜ばないと思いますので、先の事を考えます。」
「そうですね。リネア殿はアルネア殿と話したいと思いますか?」
「えっ?何を仰られましたか?」
「リネア殿が望むのなら、アルネア殿と会話が出来る魔法をお教えします。」
ロウはニコっとしながら話す。
「そ、そんな事が出来るのですか?それは、是非ともお願いしたいです!」
リネアは机から身を乗り出しながらロウに話し込む。
「承知しました。少し難しい勉強になると思いますが、ここに居る間にお教えしましょう。」
「はい!よろしくお願いします!」
そして、更に三日ほど経った時、一同は王城より宴と集会の誘いを受ける事になった。




