42.戦いの後の対応
「闇の力を感じなくなりました、今度こそ終わったようですね。」
シェリーの背中には羽が無くなっており、普段の姿に戻っていた。女神の力をおさめたようだが、ペンダントは身に着けたままだ。
「先ほどの戦いが今でも信じられないくらいです。シェリーが本当に無事で良かった。」
ティードは床に倒れ込んだ。
「ん…、なんだか暖かいな。」
「ウェルさん、気が付きましたか。癒していますので、じっとしていてくださいね。」
「ああ、シェリーちゃんの力か。ありがたいな…って!いや、これはまずいだろ!」
ウェルはシェリーの膝の上で寝ていたので、飛び起きようとした。しかし、シェリーによって制止された。
「ダメです!動ける体力になるまでおとなしくしていて下さい。ウェルさんの状態を診ましたのでわかります。」
「そうですよ。シェリーちゃんの言う通り、少し休んでください。この事はルネさんには言わないでおきますので。」
「ロウ!ルネは何も関係ないだろ!まったく…。シェリーちゃん、ありがとな。」
「こちらこそ。助けに来て下さりありがとうございます。」
「あとは、王族達がどこに閉じ込められているかだな。」
ウェルは寝ながらロウに話した。
「そうですね。式神に探してもらったりしましたが、見つかっていません。これは王子様に聞くことにしましょう。」
「ベルドイ達も無事かどうか確認しないとな。」
「彼らは無事を確認できました。先にそれぞれの家に帰って頂いています。」
「そっか、無事だったか。くたばっていたら、化けて出てきそうだからな。」
「はい、もう動いても大丈夫そうですよ。」シェリーは笑顔でウェルに話した。
「よし。ルネ達も待っているだろうし、行くとしますか。」
ウェル達が塔の外へ出たとき、兵士達が立っているのが見えた。兵士達もウェル達に気付き、近づいてきた。
「こっちに来ますよ、戦うしかないのでしょうか。」
ウェルとティードはいつ戦闘になっても良いように身構えた。しかし、兵士達は武器を構える事はなかった。
「あなたはマイシュチェル殿ではないですか。この状況をお聞きしてもよろしいでしょうか?気がついたらこの様な状況になっており、少し困っておりました。」
「ん?敵意はないみたいだな。」
「ロウさんとシェリーはこの方達に戦う意志が無いことを知っていたようですね。」
相手の反応に対して、二人は身構えるのをやめた。
「ルードは闇の力によって損傷を負いました。でも、今は闇の力は感じませんので大丈夫です。他の人達の無事を確認してください。」
「なるほど、どうやら私達は操られていたようですね。きっと、マイシュチェル殿が関わっているのでしょう。助けて頂きありがとうございます。」
「これからの復旧は大変だと思いますが、頑張りましょう。」
兵士達は別方向へと仲間達を探しにいった。
「なんだか戦いが終わっても、戦いが続いているようで心が痛いです。」
「憎しみ合う争いをして良い事なんて一つも無い。こんな事は二度と起こさせないようにすべきだ。」
「私も平和な世界になるように祈り続けます。」
ウェル達はラウバを匿っている部屋に辿り着いた。部屋の前にはルネが立っていた。
「終わったんだな?皆が無事でよかった。」
「そう簡単にくたばるかよ。それで、王子様の調子はどうだ?」
「しばらくして目を覚ましたよ、まあ中で確認してくれ。」
「ルネさん、ウェルさんが無事でとっても嬉しそうですね。」
シェリーはルネにこそっと話した。その言葉にルネは少し頬を赤らめる。
「なっ!?別に、皆が無事で嬉しいと思っただけだ!またからかうか。」
「落ち着いたらお茶の場で話しましょうね。」
シェリーはくすくすと笑いながら部屋に入った。
部屋の中ではリネアがラウバをじっと見張りながら待っていた。ラウバは顔を俯いていた。
皆が入ってきた事に気付くと、二人はそちらに顔を向けた。
「終わりましたね、私も闇の力が消えていくのを感じました。」
リネアはお淑やかに微笑む。
「終わったのなら拘束を解いてくれないだろうか、なんだか頭が痛いんだ。」
ラウバは少し苦しそうな表情で懇願してきた。
「リネアさん、王子様から何か聞き出す事は出来ましたでしょうか?」
「少し気になる事は聞けました、詳しくは後ほどお話します。」
ロウはラウバに近づいて顔を確認した。
「悪い事をするような顔をしておりませんね。」
「何を言っているんだ?いや、悪い事をしていたのは事実なのか。」
「陛下がいる場所も聞き取れましたでしょうか?」
リネアはコクリと頷いた。
「あの場所は僕が必要なんだ。まだ動けるうちに連れていってくれないか。」
「なるほど分かりました。では拘束を解きますので、少し休憩した後に行きましょう。」
ロウはラウバに付けられている拘束具に手を添えて解除した。拘束具を外されたラウバはすぐに横になった。シェリーがラウバに近づき、癒しの魔法を与えた。
「君は…、僕が苦しめてしまった女性だね。恐い思いをさせてしまった事、謝っても償えないと思うけど謝罪させて頂きたい。」
「いえ、私はこうして元気でいられていますので大丈夫です。」
「素敵な心を持った人だ、本当にありがとう。」
「これは改めて詳しく聞いた方がよさそうだな。」ウェルはルネにぼそっと話した。
「そうだな、先ずは一眠りしたいよ。」
癒しの魔法にてラウバが動ける様になり、皆で国王が閉じ込められている場所に向かう事になった。
王が閉じ込められていたのは、最初にラウバと戦ったドームの下。床に細工が施されており、床板を外すと階段が現れ、階段を降りた先の牢屋に王族達が閉じ込められていた。
「父上、馬鹿な事をしてしまった事、償いきれると思いませんが、大変申し訳なく思います。」
ラウバは国王に向かって話しつつ、牢に手を当てて錠を外した。
「なるほど、王族しか解錠出来ない仕組みなのですね。」
国王達は口を塞がれているが、安堵の表情を浮かべているのが読み取れる。
それぞれ手分けして王族達の拘束をはずした。
「ラウバがここに来たという事はルードは救われたというわけだな。」
国王は疲弊していると見られるが、身内が見ている所なのか、しっかりとした表情で話す。
シェリーは癒しの力で少しでも疲れがとれる様に努めた。
「こんな初めて会う老いぼれを助けてくれた事、大変感謝する。改めて御礼をさせて頂きたい。」
「なんて勿体ない御言葉。無事でいてくれた事、嬉しく思います。」
ウェルは深々と頭を下げて答えた。
「(うわっ、ウェルさんが見え透いた嘘をついてる。)」ティードは声に出さずに思った。
「大変お疲れと思いますので、十分に休息なされてください。後日ご連絡を頂きたく。それまでお城に危険が迫ってこないように私達がお守りします。」
ロウも最大限の挨拶をする、それはすごく様になっていた。
「そなたはマイシュチェル殿ではないか。なるほど承知した。では、後日連絡させて頂こう。」
そして長い一日が終わりを告げた。




