41.決着、そして夜明け
ドルダードは魔法で蜘蛛の糸を焼き払おうと魔力を放出しようとするが、魔法は発動しなかった。
「魔法が使えない、一体どういう事です?」
身体を確認すると、白い光が纏わりついているのが確認できた。
「これは、聖なる光!?」
「そうだよ、これは女神様から与えられた魔界の力を抑える光。」
ロウの隣にシェリーが立っていた。シェリーの頭には小さな白い羽が着けられており、胸にもペンダントが添えられていた。
「シェリーが女神様の力を授かったんだ、すごいや。」
ティードはドルダードの魔力が遮断された事で束縛が解けていた。
「なるほど、人間界では天の力が有利に働くのですね…。さすがです。」
「シェリーちゃん。もう少しで終わらせますので、頑張ってください。ウェルさん、いきますよ。招来、竜牙!」
ロウはまた別のお札を取り出し、呪文を唱えた。すると、ウェルの拳に龍の紋章が浮かび上がった。
「なんか、すげぇパワーを感じるな。」
「では、渾身の一撃をお見舞いしてあげてください。」
「よっしゃあ!任せとけ!」
「とても良い作戦ですが、私もまだ負けを認めてはいませんよ!」
ドルダードは自身の爪を伸ばして、蜘蛛の足と糸を引っ掻いて拘束を解いた。そして、シェリーに向かって襲い掛かろうとする。
「魔力を使えなくとも、自身の能力は使えるようですね。覚悟!」
「私がやられちゃいけない!」
シェリーは一番先に狙われると判断し、ドルダードから距離を取っていた。
「シェリーには近づけさせません!」
ティードは風魔法でドルダードの進行を抑えようとするが、少し勢いが弱まったくらいだった。
「ですから、戦いは常に先を読むものですと言っているでしょう。利口な人と思いましたが、残念です。」
「何を言っているのでしょう?さぁ、魔力を復活させますよ!」
ドルダードがシェリーに届きそうになった時、急に動きを止められてしまった。
「何!?こ、これは一体…?」
ドルダードの周囲には赤い柱が四本現れ、足元には魔法陣が浮かび上がった。
「一種の罠を仕掛けさせて頂きました。シェリーちゃんには念力でこの場所に誘い込む様にお伝えしていました。蜘蛛が仕留められるのは予想していましたので、より強力な拘束を展開させて頂きました。」
「
ドルダードは身体を動かそうとするが、びくともしなかった。
「何も纏わりついていないというのに、この魔法陣に拘束されているというのですか。素晴らしい魔法のバリエーションです。」
「上手く作戦に引っ掛かってくれてよかったです。じゃあ、より祈りを込めますね。」
シェリーは跪いて、熱心に祈りだした。ドルダードの身体に纏わりつく光が増大してくる。
「実際に拘束されていなければ、まだ可能性があるはずです!」
「あなたは拘束されているのが見えないのですか?」
「何を言っているのです?むっ!」
ドルダードは自身をよく確認すると、熊の手に全身を拘束されているのが見えた。
「通称熊手。強大な力を持つ、熊の神様による束縛です。魔力が発動できないあなたでは解くことが出来ないでしょう。」
「ぬぅ…まだ方法があるはずです。」
「色々と考えてもらって結構だが、今度こそ終わりにしようぜ。」
ウェルは足を踏ん張って全身に力を込め始めた。
「ウェルさん、援護します!」
「ティード、頼んだぜ。いくぞ、魔界の騎士さんよ!」
ウェルが駆けだしたと同時にティードは風魔法で追い風を起こし、ウェルにより勢いを付けさせた。
「こんな所で終わりにはさせぬ!」
ドルダードはなんとかして熊の力を解こうとするが、微動だにしなかった。」
「これで決めるぜ!ドラゴンショット!」
ウェルの拳がドルダードの胸にぶつかる。すると、龍の形をした青い衝撃破もドルダードにぶつかった。
「ぐぉっ!?うぅぉぉぉぉ!」
ウェルの攻撃をまともに受け止めたドルダードは、身体の中から光を放出しながら悶え苦しんだ。
「あんたの世界に帰れぇ!」
ウェルは追い打ちをかけるように拳をドルダードに押し込んだ。シェリーもより深く祈りを込める。
ドルダードの身体が青と白の光に包まれながら、足元から消えていき始めた。
「私の負けですね。人間界にも強い方達がいるという事を知る事が出来た、良い機会でした。この戦いのリベンジはいつかさせて頂きますよ。」
ドルダードの身体は完全に消滅し、塔の中は静かになった。ウェルは全ての力を出しきったのか、前から倒れ込もうとした。その身体をロウが素早く受け止める。
「ウェルさん、本当にお疲れ様でした。」
「まったくだ、歳とってやる事じゃねぇよ。」
「ウェルさん、大丈夫ですか!?すぐに癒します!」
シェリーが駆け寄って、癒しの力をウェルに与える。
「シェリーちゃんもお疲れ様でした、準備していた事が役に立って良かったです。」
「準備?何か訳アリっぽいな、後で詳しく教えてもらうぞ…。」
ウェルの頭にロウがそっと手を添えると、ウェルは目を瞑って座り込んだ。
「あっ。」
「少ししたら起き上がりますので、それまでよろしくお願いします。」
シェリーにお願いするとロウはティードの方へ近づいた。
「終わりましたね、すごい戦いでした。」
「ティード君もお疲れだと思いますが、最後の一仕事をしましょう。」
ロウはニコっとしてティードに話しかける。
「えっ、最後の一仕事ですか?何をするのでしょう?」ティードは困惑する。
「ルード城を中心に魔界の力が少し残っている様ですから、それを祓います。私と一緒にやってみましょう。」
「なるほど、分かりました!」
ロウは塔の中心に立ち、呪文を唱え始めた。ティードもそれに倣って詠唱してみる。
「邪な想いを持つ魂達よ、それぞれの世界に戻り給え。ソウルリターン。」
呪文を唱え終えると、黄緑色の淡い光がサッとルード全体に広がり、パッと消えた。
「これで大丈夫でしょう。この呪文は色々と活用できますので、上手く使ってください。」
「ありがとうございます、ロウさん。」
「それでは、少し休憩してから後処理と致しましょうか。」
ロウは力を弱め、元の姿に戻る。空は少し明るくなり始めてきていた。




