40.魔界の従騎士
「さてと、お前も魔界に帰ってもらうぜ。」
黒騎士が気絶している事を確認したウェルはドルダードの方に向きなおした。
「所詮は魔を纏っただけの人間か、この程度の相手に対応出来ないのは情けない。しかし、ゴーレム殿は実にお堅い、あの爆発にも耐えるのは流石です。」
爆発を発生させたのはドルダードで、ロウと交戦しつつ放ったようだ。ロウはゴーレムを正面に出し、後方から支援している形だったので、ドルダードは動く余裕が出来たようだ。
「マイシュチェルよ、久々の闘いだがそろそろ疲れてきたぞ。」
ゴーレムはドルダードから放たれた魔法や爆発で、所々の岩肌が剥がれ落ちていた。
「ゴーレム様ありがとうございます。ウェルさんの邪魔をされたくなかったので、十分対応して頂きました。どうぞ、身体をお休めになさってください。」
ロウが錫杖を一振りすると、ゴーレムは光輝きながら消えていった。
「ゴーレム殿を帰しましたか、次はどなたと対峙出来るか楽しみです。」
ドルダードは羽を一度はばたかせ、黒い稲妻を身体の周囲に纏った。
「ドルダード殿、魔界とのつながりを希望した人間がやられたので、こうして争い続けるのは不毛だと考えます。ここは休戦して、魔界にお戻りになられるのは如何でしょう?」
「ふむ…。ただ、私をこちらに繋いだ人間は気絶しているだけであり、意識が戻れば目的も聞くことが出来る。それまでにそなた達を倒したら良いだけの話だ。私も久々の戦いを楽しんでいる、貴公もそうであろう?」
「引き下がって頂けませんか、残念です。」
「ロウ、こうなったらとことんやるしかねぇ。ティード、シェリーちゃん、大丈夫だな?」
ティードとシェリーの二人はウェルの問いかけにコクリと頷く。
「全員戦いの意志があると考えてよろしいようで、では参ります!」
ドルダードは高く跳躍し、上空へと飛び上がった。
「させない!」
シェリーは祈りによる癒しの力を開放し、ドルダードに聖なる光を浴びさせた。
「これが聖なる力、まだまだ幼い力ですね。私には効きません!」
ドルダードは黒い炎をシェリーに放つ、シェリーは防御魔法を展開するが、貫通してしまう。
「えっ、きゃあぁ!」
シェリーは両手で身体を守る姿勢をとった。しかし、炎がぶつかる前にもう一つの防御魔法が発生し、炎を弾いた。
「シェリー大丈夫か!なんて強い魔力だ。」
「ありがとう、お兄ちゃん。私の力じゃ無理っぽいね。」
「シェリーちゃん、女神様にたくさん祈ってください。そうすれば力を授けてくれるはずです。」
ロウはドルダードに竜巻魔法で反撃しながら話す。ドルダードは上空で器用に躱している。
「わかりました、やってみます。」
シェリーは防御魔法を展開しながら跪き、より力を込めて祈り始めた。
「ロウ、さっきの羽を展開してくれ。奴を叩き落としてやる。」
「無茶だと思いますが、どうせ聞かないでしょうから思う存分暴れてください。」
ロウはウェルの足元に先ほど使用した羽を展開させた。ウェルはすぐに飛び立ち、ドルダードめがけて拳を振りかざす。ドルダードはさっと攻撃を躱し、ウェルに炎を浴びさせた。
「うわっ!」
ウェルは炎を浴びて怯んだが、すぐに炎を振り払い、体勢を整える。
「人間界の魔法も色々と進化していますね、私たちの世界も進化していますよ。」
ドルダードは指をパチンと鳴らすと、黒いリングが数個発生した。
「あれで何をするのでしょう?」
ドルダードがもう一度指をパチンとすると、リングが見えないくらい高速に移動し、ティードの腕に嵌まった。
「あ、しまった。あれ?魔力を感じなくなりました。」
「そのリングは魔力だけじゃなく力も出せなくなります。研究によって進化した拘束具ですので、そう簡単には解除出来ませんよ。」
「ティード君、それを取付られたという事はとりあえず相手にされないと思います。端で待機していてください。」
ロウはティードに防御魔法を展開し、ティードを誘導した。
「なんか姑息な手を使う奴だな!」
ウェルは再度ドルダードに攻撃を試みた。今度は力を込めたナイフと矢を変則的に投げながらドルダードに接近する。ドルダードは不規則に飛んでくる投擲物に翻弄されながらも次々と躱していく。
「ウェルさん、援護しますよ。」
ロウも氷吹雪を起こし、ドルダードの視界を奪おうとする。
「なんだか面白い二人ですね。しかし、その程度では私には届きません!」
ドルダードは自身を黒い炎で包み込み、氷吹雪を蒸発させながらウェルに体当たりを仕掛けた。
「憑依、虎侍」
ロウがそう声掛けをすると、ウェルの拳に虎のシルエットが一瞬浮かび上がった。
「おっ、力が増加した気がするぞ。」
「ウェルさん、ドルダードに渾身の拳をぶつけてやってください!」
「おうよ!くらえっ!」
ウェルとドルダードがぶつかり合い、その衝撃で一瞬爆発が発生した。二人は互いに進んだ方向とは反対方向に飛んでいき、壁に衝突する。
「ぬぉ!今のは魔力を感じませんでした、どんなカラクリでしょう。」
ドルダードの身体は少し傷ついていた。ウェルの方は血が出るくらいに疲弊している。
「なんて硬い奴だ、腕が折れてしまうんじゃないかと思ったぜ。」
「虎侍の力をお借りしても厳しかったですか。ウェルさん、まだいけますか?。」
ロウは回復魔法でウェルの傷口を癒した。
「そうだな。相手次第だが、後一撃くらいは大丈夫だ。」
「では、それに懸けさせてもらいますよ。」
「ここまで楽しいのは久しぶりです。私も思いっきり行きますよ!」
ドルダードは黒い大きな岩を沢山発生させて、ロウとウェルに飛ばした。
「招来、大蛾!」
ロウはお札に呪文を込めて、大きな蛾を呼び出す。蛾は羽をはばたかせて鱗粉を飛ばし、飛んでくる岩の勢いを弱めて消滅させた。
「なるほど、実に面白い!これはどうです!?」
ドルダードは自身を回転させて、衝撃刃を幾つも飛ばす。飛ばしながら自身を中心とした火炎旋風を巻き起こす。
「招来、大蛇!」
ロウは違うお札を出して大蛇を呼び出す。大蛇は空中で身体を回転させて大きな竜巻を発生させ、衝撃刃と火災旋風を打ち消した。
そのまま大蛇はドルダードへと突撃し、丸呑みしようとするが、ドルダードが取り出した剣によって縦に真っ二つにされ、消滅した。
「取り出した紙切れに何か意味がありそうですね。私の華麗なダンスで切り刻んであげましょう!」
ドルダードは衝撃刃を飛ばしつつ、ロウに向かって突撃した。衝撃刃はウェルにも飛んでいき、ウェルの動きも制限させていた。
「簡単にはやられませんよ!」
ロウは一気に後退してドルダードの急降下を回避する。しかし、ドルダードはそのままの勢いでロウの目の前まで近づいた。
「さて、綺麗に散らせてあげましょう!」
ドルダードは剣を横振りしてロウに切りかかったが、ロウはすっと避けた。ドルダードは流れる様に剣を振り上げた。
「このチャンスは逃しません、招来、鼫陣!」
ロウとドルダードの周囲に多数のムササビが現れて、二人を取り囲んだ。
「むっ、閉じ込めようとする気ですね。そうは行きません!」
ドルダードは何匹かのムササビに切りかかり、消滅させた。
「戦略は常に先を読むものですよ。招来、大蜘蛛!」
「何っ!」
ドルダードの手足に蜘蛛の糸と足が絡みつき、身動きを取れなくした。同時に剣も糸で巻きつけられる。
「それでは、終幕と行きましょう!」




