39.闇とのつながりと再戦
黒煙を出していた塔の中は黒い霧で満たされており、中の様子がはっきりと分からない状態になっていた。ただ中心は白く光っており、そこにある何かから黒い霧が発生しているのがある程度確認できた。
黒い霧の他に呪文の様な声が聞こえてくるが、どの方向から聞こえてくるのかがはっきりと分からなかった。
「これは随分と大かがりな儀式ですね。」
ロウは呪文を唱えると光を発する球体が数個現れ、上空へと浮かび上がった。
その球体のおかげで塔内の霧が少し晴れ、中の様子をもう少し確認する事が可能になった。
中心から出ている黒い霧は魔法陣から発生しているのが確認できる。その魔法陣の脇には黒騎士が立っており、それらを囲む様に黒ローブの者達が呪文を唱えているのも見えた。
「ラウバ殿を仕留めたようだが、事は既に始まっており、もはや手遅れである。」
黒騎士はウェル達の方に向き、剣を構えた。ボロボロだった鎧も元の状態に戻っており、先ほどとは異なり装飾品が多くなっていた。
「どういう事か分かんねぇけど、もう一度決着を付けようじゃないか。」
ウェルは矢を高速に放ち、近くに立っている黒ローブの首を射抜いた。ロウも続いて光の矢を放ち、黒ローブを一人倒す。
「儀式は既に完了している、これから悪魔とのダンスを楽しむがよい!」
「なんて悪趣味なダンスの誘いかしら、そんなの秒でお断りよ!」
黒騎士は剣を一振りして突風を起こし、ウェル達を怯ませる。そして、地面に剣を突き立てると魔法陣の輝きが大きくなり、轟音も鳴り始めた。
「間に合わなかったとは仕方がないですね。皆さん気をつけてください!先ほどよりも強力な相手だと感じます!」
魔法陣からさらに濃い霧が発生し、地面から大きな物体が現れるのが確認できた。
ウェルとティードは矢と魔法で攻撃するが、黒騎士の反撃に防がれてしまい、大きな物体には届かなかった。
ロウは錫杖を突き立てて、呪文を唱え始めた。シェリーも祈る様な姿勢で何かを呟き始める。
「フハハハ!これでこの世界を我々の世界とを繋ぐ事が出来る!」
「我々の世界って、お前は俺らと一緒だろう。」
大きな物体の全体が確認出来るまで現れる、その容姿は巨大なガーゴイルの様に見える。
黒騎士は衝撃波を発生させて黒い霧をより濃くし、皆の視界を妨害させる。
「くそっ!相手の良いようにさせてしまった!」
「魔王軍の従騎士が一人、ドルダード様。」
「其方はいつぞやの、久しぶりだな。姫君様が会いたがっていたぞ。」
ドルダードと呼ばれたガーゴイルは低くも高い声でもないが、広がる声を出した。
「覚えて頂いていて光栄です。共に魔界への道作りにご協力願いたく。」
「ふむ、色々な力を感じる。聖の力、地の力、それに邪な力も感じるな。」
「先ずはここにいる連中を退治致しましょう。落ち着きましたら、その後の展開を申し上げます。」
「なるほど、先ずは邪な気配から始末するとしよう。この力が一番危険に感じる。」
ドルダードは手に大きな黒い槍を発生させて、ロウめがけて投げつけた。とても速い勢いで飛んでいくが、ロウに当たる前で槍は離散した。
「ほう、なかなか出来る奴だな。」
「貴方はドルダードというのですか、私はロウと申します。一度お会いした事がありそうですが、ご挨拶は初めてですね。しかし、魔界の騎士様は見た目で手加減をなされるのですね。」
ロウは少し笑いながら話す。ドルダードもニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほど、魔界に来た事があると申すか。通りで邪な力を感じるのだな。見た目で手加減したが、思った以上に出来る奴と見える。」
ドルダードは羽を大きく広げて、勢いよく突進した。ロウは錫杖をひと慣らしすると、目の前にドルダードを受け止める物体が現れた。
「魔界の従騎士よ、お主の相手は私がしよう。」
ドルダードを受け止めた物体は全身が岩のブロックで出来た人型だった。ドルダードより少し大きい体格をしている。
「貴公はゴーレム殿、なかなかの相手だ。異界からの召喚、これは全力で行く必要がありそうですね。」
「ドルダード様、よろしくお願いします。私は他をこらしめます。」
黒騎士はウェルに向かって衝撃波を放ちつつ突撃する。ウェルは衝撃波をギリギリで躱して黒騎士の斬撃を受け止めようとするが、突撃の勢いを止められずに弾き飛ばされてしまった。
「うわぁ!」
「先ほどの勢いが無いな!終わりにさせてもらおう!」
黒騎士は追撃を行おうとするが、横から爆発が発生し、動きを妨げられてしまった。
「ウェルさん、大丈夫ですか!僕もまだまだ戦えますよ!」
「ティードに助けられるとはな。よし、最強のコンビを見せてやろうじゃないか!」
ウェルは先ほどの戦いと同じ青い輝きを全身から発生させた。
「ウェルさん、体力は大丈夫なんですか!?」
ウェルはニヤリと笑みをティードに飛ばす。そして、勢いよく黒騎士に突進した。
「ティード!喋っている余裕があったら目の前に専念しろ!」
「大丈夫そうですね。よし、僕も全力でいきますよ!」
「二人共相手にしてあげよう!」
黒騎士は一度ウェル達から距離を取り、全身を黒い炎で纏った。そのまま体当たりしてしまったウェルは黒い炎を浴びる事になった。
「あちっ!なんて物を発生させるんだ!?」
ウェルは右手に軽い火傷を負ってしまう。それでも衝撃波を放つが、黒い炎に吸収されてしまう。
「この魔界からの捧げ物にそんな攻撃は効かぬ!今度こそ仕留める!」
黒騎士はウェルよりも大きな衝撃波を発生させて、ウェルを切り刻みながら弾いた。ウェルはなんとか踏ん張って、倒れるのを防ぐ。
「つうっ!まだだ!」
「アイスロッキング!」
ティードが放った魔法で、とても大きな氷が発生し、黒騎士を氷漬けにするように閉じ込めた。それにより、黒騎士が身に纏っていた黒い炎も消化された。
「なんの!」
氷漬けにされた黒騎士は数秒も経たないうちに、氷から脱出してきた。そして、また黒い炎を纏い出す。
「全然効いていない!?これならどうだ!」
ティードは勢いある竜巻を発生させて、黒い炎ごと黒騎士を攻撃しようとするが、竜巻は躱されて、黒騎士の反撃を許してしまった。
「あ、まずいかも…。」
黒騎士はティードに剣を振りかざそうとするが、突然発生した光に身動きを制限され、動く事が出来なくなった。
「くっ、これは聖なる力!ぬかったか!?」
「私を無視して好き勝手遊んじゃいけないよ!私からの癒しのプレゼントをあげる!」
光に包まれた黒騎士から黒い炎と黒い剣が浄化され、さらに身に着けていた鎧も浄化され始めた。
「これが癒しの力というのか!?戦意まで奪い取られていくようだ!」
「これは天界からの導き、悪しき力から解放されなさい。良い行いが出来るように信じます。」
「ここで終わらせるのは断じて許さぬ、私は魔王様にこの身すべてを捧げている!」
黒騎士は身体の奥から黒い炎を放出して抵抗し、脱出しようとする。シェリーも負けじと祈りに力を込めて対抗する。
「なんて汚れた力、でも負けない…!」
「シェリーちゃん、助太刀するぜ!」
「フェンリルアーム!」
ティードの放った魔法はウェルの手に白い輝きを発生させた。ウェルは身動きが取れない黒騎士に向かって、渾身の力で拳を振りかざした。
「まだだ!まだ終わらせぬ!」
ウェルの拳が黒騎士に到達する前に大きな爆発が発生して吹き飛ばされかけるが、その衝撃をゴーレムが受け止める。
「サンキュー、ゴーレムさんよ!これで決まりだ!」
ウェルは渾身の一撃を黒騎士にぶつける。拳を浴びた黒騎士の身体からは黒い炎と白い光が放出される。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
全身から全て放出し終わった時には、黒騎士はほぼ裸同然の姿で倒れた。




