38.休まらない時間
「ようやく終わったか。なんか、魔法のオンパレードだったな。」
ウェルは少し動けるようになったのか、座り込んだ姿勢でそう話す。
「今、生きているのが不思議なくらいだ。」ルネは自分の身体を確認しながら話した。
「シェリー、大丈夫!?」
ティードは座り込んでいるシェリーに駆け寄り容態を確かめる。シェリーの額から出る汗は多く、目を瞑って肩で息をしていた。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。少し頑張り過ぎちゃっただけ…。」
「そっか、本当に無事で良かった…。」ティードは少し涙ぐんでいた。
リネアは倒れているラウバに近づいて様子を確認する。仰向けに倒れているラウバの服はボロボロだが、身体の傷はほとんど無かった。
「こいつはどの様に対応しようか…。」
「王子の身体にはまだ力が残っています。抵抗されると厄介ですので、手荒なマネになりますが拘束しておきましょう。」
ロウが錫杖で地面をコン、コンと叩くと、ラウバの腕と足首に光のリングが発生し、身体を地面に固定した。
「国王は城のどこかに幽閉されていると思います。探し出して、王子の処罰を決めてもらいましょう。アルネア様の事は残念に思いますが、自身を傷つけてはいけません。」
「あっ…そうですね、感情で動いてはいけませんね。ロウ様、ありがとうございます。って
、ロウ様はアルネア様を知っていらっしゃるのですか?」
「それは、また落ち着いてからお話しましょう。」
ロウはドーム中央に描かれていた魔法陣を確認する。魔法陣は先ほどの戦闘によって、所々剝げており、効力を発揮するには再度描く必要があると判断した。
「ロウ、これで終わりなのか?」
歩く体力も出てきたウェルは何か含んだ問いかけをロウにする。
「今のところ、よくない兆候は感じません。ですが、警戒はしておくべきでしょう。」
「ベルドイ達はどうだ?」
「あの方達は掘の下にいるのを感じます、大丈夫かと思います。」
「そうか、よかった。あいつらには目一杯のおもてなしをしてあげないとな。」
「気になるのは黒騎士の方です、あの方の気配が全く感じられません。転移魔法でも使ったのか…。」
「まあ逃げてくれたのは、それで良かったんじゃねぇか。」
「そうですね…。」
ウェル達は少しの間休憩を取って、王族達を探しに行くことにした。ドームへと続く橋は崩れている部分はあるが、渡る分には大丈夫そうだ。
ラウバは拘束しつつ運んでいた。未だ起きる気配は無さそうで、運びやすかった。
「シェリー、休んでなくて大丈夫か?」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。リネアさん、治癒して頂きありがとうございます。」
「いえ、助けられたのは私の方ですので当然です。」
結構な時間戦っていたと思われるが、辺りは未だ真っ暗だった。
「私、お城に来たのって初めて。出来れば素敵な時に来たかったな。」
シェリーは少し無邪気に話す。
「王都の食事とは比べ物にならないかもしれませんが、お屋敷の晩餐会にでもいらっしゃってください。」
リネアもシェリーと話すのが楽しいのか、少しテンションを上げていた。
「わっ、晩餐会も楽しそうですね。ルネさんもぜひ一緒に行きましょう。」
「えっ、私はそんな所は似合わない…。」
「そんな事ないと思うぜ、ルネは綺麗だからな。」
「なっ!からかうんじゃない!」
ルネはウェルの背中をバシッと叩いた。
「いてっ!傷口が開きそうだぜ。」
「あっ、すまない。だが、悪いのはウェルの方だ。」
「ルネのドレス姿を楽しみにしておくぜ。」
「このっ!まだからかうか!」
「くすくす。」二人のやり取りに微笑むシェリーとリネア。
「もう皆さん、緊張感がないですよ。無事帰ってから楽しみましょう。」とティードが声をかける。
「まあいいんじゃないでしょうか、和やかなのは活力を生みますよ。」
「そうだよお兄ちゃん、楽しくいかないと。あっ!!」
本城の中に入った時、シェリーの表情は険しくなった。
「シェリー様、どうかしました?」
「ここから反対側の場所で異常な魔力反応があります。」
シェリーは魔力が感じる方向を指差しながら話す。
「えっ?僕は何も感じないけど…。」
「さすがシェリーちゃんですね、確かに大きな力を感じます。」
「やっぱり素直に終わらねぇか。ロウ、新手の反応なのか?」
「そうですね。恐らく黒騎士殿が関係していると思いますが、先ほどとは感じ方が違います。」
「そうか。こいつを黒騎士と会わせるのはまずいから、二手に分かれるとするか。」
ウェルは担いでいるラウバを見て話す。
「この力はここで抑えないと大変な事になりそうです。シェリーちゃんとティード君は私と一緒に。二人共、大丈夫ですね?」
「はい!」ティードとシェリーの二人は同時に返事をした。
「了解。じゃあこいつの対応はルネとリネアに任せても良いか?」
「問題ない。」
「起きましたら、素敵な尋問をさせて頂きます。」
リネアはニッコリと微笑みながら返事をした。
「まあほどほどにな。じゃあこの部屋に待機しておいてくれ、すぐに終わらせてくる。」
三人は指示された客間に入りラウバをベッドに拘束した。
「ウェル、ちゃんと終わらせてこいよ。」
「おうよ、まかせとけ。」
「その前に残っている回復薬を使ってください。」
リネアはカバンから回復薬を取り出し、ロウ達に配る。
「ありがとうございます、さっそく頂きます。」
リネアから手渡された回復薬をそれぞれ飲み込んだ。
「では行きましょう。歩いていては遅いので一気に行きます、ついてきてください。」
ロウが錫杖を一振りすると、四人の足元に羽が現れた。ロウは身体を前に傾けながら勢いよくジャンプし、空中に浮かびながら移動を始めた。
他の皆もロウの行動を真似てジャンプし、空中移動を始めた。走るよりも数倍速いスピードである。
「すごい、浮かべてます!」
「ちょっと怖いけど、でも楽しい。」
「降りる時は踏ん張ってください、制動がかかりますので姿勢には気を付けて。」
四人は本城内をあっという間に進んでいき、反対側の円柱型の塔に辿り着いた。
塔の窓から黒煙が出ているのが確認出来る。
「これって、魔界とつなぐ儀式が行われているんじゃ!?」
シェリーは口に手を押さえながら驚く。
「そのようですね。こちらが本命だったのかもしれません。」
「もしかして、王子様が駒として使われていたのか?」
「え!?じゃあ、悪意を持ってこの国を滅ぼす者がいるという事ですか?」
「中にいる方に真実を聞き出しましょう。皆さん、大丈夫ですか?」
「おうよ。」「はい!」それぞれ返事をする。
ロウは錫杖を一振りしてジャランと音を鳴らす。すると、皆の身体に青い光が吸収された。
「では参りますよ。」
ロウが先頭になりつつ、四人は塔の中へと入っていった。




