34.時間稼ぎの戦い
「さてと、ちゃんと足止めをしてくれているのかな?」
ドームの中にはラウバと黒ローブの集団、それにシェリーと同じ様に連れられた人達がいた。
シェリー達はベッドの様な台に乗せられ、縛られながら横たわり眠っていた。
ドーム中央に描かれた魔法陣は、青と赤の光を交互に切り替えながら光り始めていた。
「そろそろ、始まりそうだね…、ニードルウォール。」
ラウバが呪文を唱えると、ラウバの右側面に大きな針が束ねられた壁が作られ、そこに矢が三本衝突した。
針の壁はラウバの指示により矢の様な形状に変化し、矢が飛んできたドームの天井方向へと飛んでいく。飛んでいった針の矢は天井付近で白い壁によって弾かれ消失した。
「まったく、侵入を許しているじゃないか。仕方がない、相手をしてあげるよ。」
ラウバは続けて呪文を唱えると、ラウバの姿が三人に増えた。そして、それぞれが火の弾や氷の矢、石つぶてと異なった魔法を使用し、相手に向かって攻撃する。
飛ばした物体はスピードや動きを変化させながら、天井付近の相手に向かって飛んで行くが、それぞれが白い壁によって弾かれた。
「なるほど、防御魔法が施されているのか。じゃあ壊してしまえばいいね。」
ラウバとその分身体は手から白い球体を発生させ、それぞれが合体し大きな光線になって相手を攻撃する。光線はその大きな出力によって白い壁を破壊するが、相手は光線が当たる前に回避行動を取っており、降下してくるのが確認できた。
相手は降下しながらも矢で攻撃してきたが、ラウバはそれらをステップで躱す。
「君もそんな攻撃が通用すると思ってないよね。もう姿は捉えたから、次は仕留めるよ。」
ラウバの分身体は先ほど放った火の弾と氷の矢を作り出し、降下してくる相手に放つ。放たれた魔法は降下してくる相手に向かうが、相手の目の前に発生した白い壁に再び弾かれた。
それと同時にラウバ本体は光の矢を天井付近に向かって放った。その矢も白い壁によって弾かれるが、白い壁の奥にいた相手が降下してくるのを確認できた。
「魔力を発生させてしまったのは失敗だったんじゃないかな。さぁ、守り切れるかな?」
ラウバ達はそれぞれの相手に魔法を放つ。放たれた魔法はまた白い壁によって弾かれるが、魔法が白い壁に衝突した衝撃により、相手は少しひるんでいた。
先ほどと同様、魔法の発生を感じとったのか、ラウバは再び天井に向かって魔法を放った。
放たれた方向から更に人が降下してくるのが見えた。
「これで三人か。レイツの奴、何人も見逃しているから後でお仕置きしないと。ん?リネアじゃないか、やられていなかったんだね。」
ラウバは攻撃を続けて相手に攻撃する隙を与えない様にしていた。降下してきた三人が床面に着地するのを確認すると一旦分身体を消去した。
「さて、奇襲は失敗したわけだし、少し話をしようじゃないか。」
相手は答えるより先に矢を放ってきたが、ラウバは風魔法で簡単に弾いた。
「野蛮な人だ。えっと、確かウェルという名だったね。ドゥリードの噂は僕にも広まっているよ。それに、少年はティードといったかな。彼女の兄らしいね、魔法が使える事を調べさせてもらったよ。」
「どうしてシェリーが利用されるのですか!僕だって魔法が使えるから、僕でも良かったのでは?」
「いや、君より彼女の方が相性が良いんだ。まあ、君もそのうち利用させてもらう考えだよ。リネアは協力して僕を仕留めに来たんだね。良い判断だけど、まだまだだと思うよ。」
「それは私が決める事です。アルネア様の想いは必ず私が受け継ぎますので、あなたは退場して頂くしかない。」
「話をして長引かせようとしているのが丸分かりだ。さっさと決着を決めさせてもらうぜ。」
ウェルは爆弾を用意し、ラウバの方へ投げつけて爆発させる。同時に矢を放ち、さらに長剣を構えてラウバに突撃した。ラウバは再び分身を作り出しながら爆発と矢から回避し、魔法陣に影響が出ない様に立ち位置を移動する。
ティードとリネアもそれぞれが得意とする魔法でラウバに攻撃を開始するが、分身体が作り出した防御壁によって防がれる。
ウェルは移動するラウバになんとか近づこうとするが、ラウバの放った爆発魔法によって吹き飛ばされてしまった。
「くそっ!近づく事ができねぇ。ティード、こっちはいいからシェリーちゃんの所に行け!」
「はい、わかりました!」
ティードは向きを変えて、シェリーが眠っている台の方へ向かおうとするが、ラウバが放つ光線魔法により行く手を阻まれてしまった。
「あっちには行かせないよ。相当な準備をしたんだ、簡単に潰されたんじゃ残念すぎる。」
「ティードさん、私が援護しますので行ってください。」
リネアは複数の光線を発生させて、ラウバを狙った。ラウバは自身をスライドさせながら放たれた光線を躱す。躱しながらラウバからも光線を発生させてティードとリネアを攻撃し、ティード達を足止めさせていた。
「なんだか、そっちも長期戦にしようとしている感じだね。何か裏がありそうだ。」
「そんなもんねぇよ。お前を倒せばそれで良いんだからな!」
爆発によって吹き飛ばされたウェルは再びラウバに向かって突撃するが、今度はラウバが放った炎の渦によって四方八方を塞がれてしまった。身動きが取れないウェルを確認したリネアは氷魔法で炎の渦を消化するが、分身体からの変則的な光線攻撃が防御魔法を貫いて、肩に傷を負ってしまった。
「くっ!分身体でも能力は同じという事か。なんて恐ろしい魔法。」
「リネアさん大丈夫ですか!?」
ティードは回復魔法でリネアを治癒する。その結果、防御魔法の効力が弱まり破壊されるが、もう一つの防御魔法がティードの身体を守った。
「ティードさん、ありがとうございます。でも私は大丈夫ですので、目の前に集中してください。」
「一つでも倒せれば良いのですが…。そうだ!」
ティードは地面に片手を当てて、呪文を唱えた。その間にも分身体からの攻撃が来るので、片手は防御魔法を展開して身を守る。手を当てた地面に光が発生し、次の瞬間に分身体の足元から光の柱が発生した。
「ふぅん、発想は良かったけど効果的では無いね。もっと力を込めないといけないよ。」
ウェルの攻撃を避けつつ、ティードに攻撃をするラウバ。光の柱を浴びた分身体は消失したが、すぐに次の分身体を作り出した。
「なるほど、コピー品は攻撃を受けると消滅するのか。ティード、どんどん仕掛けて行け!」
「はい、なんとかします!」
「やれやれ、一度受けた攻撃は二度と通用しないからね。」
ラウバと三人はそれぞれけん制し合う形で戦いを続け、時間だけが経過していた。
魔法陣の輝き方も強くなってきた時、黒騎士がドームの中に入ってきてウェルに攻撃を仕掛けた。黒騎士からの攻撃に、ウェルは両手で長剣を持って受け止め防いだ。
「ラウバ様!お待たせしました、ここは私がなんとかします。」
「何をしてたんだレイツ。まあいいや、そいつは任せたよ。他はなんとかするから。」
「こんなタイミングで…ベルドイにはきつかったか。」
ラウバがリネアに攻撃を仕掛けようとした時、ドーム全体が数秒間眩しく光り出した。その光に、交戦していた全員が目を閉じて攻撃を中断した。
「くっ!何だ今の光は…。」
「ウェルさん、時間稼ぎありがとうございます。魔界へと繋ぐ魔法は食い止めましたよ。」
ロウが天井より降下してくる。同時にルネがシェリーの所に行って様子を確認した。
「ロウ、少し遅かったんじゃねぇか?」
ウェルはそう言いながらも、ロウに向けてグッドサインを送った。
「ティード、シェリーちゃんは大丈夫そうだ。」
「ありがとうございます、ルネさん。」
「まだ邪魔者がいたのか。ん?詠唱が止まっている、上手い作戦だね。」
ラウバはロウに向けて光線を放つ。ロウは光線を手で吸収するかのように受け止めた。
「なるほど、これがあなたの力ですか。まだまだ全力を出していませんね。」
「僕の力を読み取れる人がいたなんて、素晴らしい日だよ。詠唱を止めたのは賞賛するけど、それで勝ったと思わないでね。」
「そうですね、これからが本当の戦いだと思っています。ウェルさん、黒騎士さんの事は頼みますね。」
「了解した。ロウ、思う存分暴れてやれ。」
「貴様ごときに私が止められるか。出し惜しみなく本気で行かせてもらう!」
「僕も少しは本気で楽しめそうだ。いいパーティをしよう。」




