30.黒騎士との再戦
ウェル達は兵士達が比較的少ない所に侵入していた、これも先に取得していた情報のおかげである。
「ここは厨房だな。裏の通路を抜けると食堂に行く事が出来て、そこから王族達がいるフロアに入れるって話だな。」
夜遅い時間もあってか厨房内は人の姿は無く、少し食料を調達してから裏の通路に出た。
裏の通路に入ると、奥に兵士が二人立っているのが見えたので、柱に隠れて様子を確認する。
「あの兵士達が身に着けている鎧はルードの物じゃないよな?」
「ん?ああ、確かにそうだな。あれは隣国の鎧に見えるな。」
「隣国の?じゃあ戦うのは厄介か、じゃあ眠らせるか。」
仲間の一人が水筒の様な物から小さな矢を取り出して、ボウガンにセットする。合計三本セットしたボウガンを、兵士に狙いを定めながら少しずつ近づく。
「そのままあっちに向いててくれよ…。」
射程距離まで近づいた仲間はボウガンから矢を発射する、兵士に向かってまっすぐに飛んでいく矢は、兵士の首元に刺さり込んだ。
仲間はサッともう一人の兵士に狙いを変えて矢を放ち、同じく首元に矢を命中させた。
矢を刺された兵士達は小さなうめき声を出した後、バタッと床に倒れ込んだ。
その場で少し待ち、兵士達が起きないかを確認し、ウェル達は兵士に近づいた。
「間違いない、隣国の紋章まで入っている。」
「兵士達まで招集されているなんて、どういう理由だろうか?」
「考えていても仕方がない。大将に吐かせたら全てが分かるさ、先を急ごう」
通路を進み、次のフロアに入ろうとした時、すぐ横の壁にナイフが飛んできた。
「おっと、気付かれた!?というか、このナイフは…。」
ウェルは刺さったナイフに見覚えがあったので考えた。
「この気配は、森で会った狩人だな。」
「やっぱりか、まだ会いたくなかったけどな。」
奥から聞こえてきた声の主は黒騎士だった。黒騎士は一人で、森で戦った時とは別の剣を持っていた。剣は大きく黒く輝いている。
ウェルは相手をじっと見ながら、フロアの中に入る。続けて仲間もついてきた。
「あんたとは戦うのは避けたいんだけど、無理な話なんだな。」
弓が最大限に活かせる間合いまで近づいたウェルは相手の出方を窺う。
「ここに来たという事は、計画を阻止しに来たという事だな?」
黒騎士は大剣をウェル達の方に向けて構え直す。その動作は普通サイズの剣を扱う様に素早かった。
「計画というものが何なのか分からないけどよ、嬢ちゃんを助けに来ただけだ。」
「あの女がここに連れてこられたという事は聞いていたが、私は確認していない。」
「あんたは傭兵みたいなもんなんだろ。そのまま通してくれても良いんじゃねぇか?」
「確かに、私は駒みたいなものかもしれない。だが、主の妨げは排除するまでだ。」
「やっぱり簡単にはいかねぇか。仕方がない、こっちも本気を出させてもらうぜ。」
「貴殿の力量はこの前の戦いで把握している。だが、万が一という事も考え、私も手加減はせぬ。」
ウェルはポケットからビンを三つ取り出すと仲間に渡す。ビンには液体が入っており、三人は一気に飲み干した。
仲間の一人が矢を放つ、同時にもう一人は高くジャンプした。黒騎士は矢を小手で弾き返すとすぐに横にステップし、ジャンプした仲間から放たれた矢を回避した。
「素早い攻撃で連携もとれているが、その軽い攻撃では我を驚かす事は出来ぬ。」
「よくそんなにお喋りが出来るな。まあ、それも今だけさ!」
ウェルは矢を三本続けざまに放つ。放たれた矢は横に並んで飛んでおり、スピードもあった。
黒騎士は上に飛んでそれらを回避する、それを読んでいた仲間は黒騎士がジャンプした方向に矢を放っていた。しかし、それらも大剣により弾かれた。
ジャンプした黒騎士は少し後方にジャンプしていて、一旦距離を離そうと考えていた。しかし、着地した瞬間にウェルが短剣による攻撃を仕掛けてきたので、それを小手で受け止める。
「ほぅ、ここまで速い攻撃が可能とは。先ほどの薬の効果か。」
「速くなっただけじゃないんだよ!」
ウェルは勢いにまかせて、黒騎士にタックルを仕掛けた。全力でぶつかってきたので、黒騎士は後方に飛ばされるが、倒れること無く足から着地した。
「むっ!!力も強化されている。では、私も見せよう。」
「よく分からないけど、一気に決めさせてもらうぜ。」
仲間から矢とナイフによる援護をしてもらいつつ、ウェルは黒騎士に突撃を仕掛ける。
しかし、それら全ての攻撃は黒騎士が発生させた黒い靄によって弾かれた。
「うわっ!やっぱりお前も魔法が使えるのか、厄介な野郎だぜ。」
ウェルは黒騎士と一度距離をとる、同時にポケットから別のビンを取り出して中身を飲み干した。
「また強化したのかは分からないが、遊びは終わりだ!」
黒騎士は大剣を横に振って、黒い靄を衝撃破として飛ばしてきた。ある程度予測していたのか、ウェルはサッと躱す事が出来た。
「俺も伊達に戦ってきたわけじゃないからな、いいようにはさせねぇよ!」
ウェルは弓に矢をセットして黒騎士にめがけて放つ。放たれた矢はとても速く、赤く燃えている。その矢は黒騎士の肩に命中し、爆発を起こした。
「ちぃ!!不覚をとった。その様な事も出来るのか。」
黒騎士の肩に身につけられた鎧は一部が破損して、中の衣服が確認出来た。
「よし、効いたな。一気に決めるぜ!」
仲間もウェルのタイミングに合わせて矢を放ち、黒騎士を威嚇する。しかし、通常の矢では効果的な一撃にならないので黒騎士も相手にしていなかった。
「ウェル、その薬を俺達にも渡すんだ。」
「いや、これは俺用にブレンドされた物だから、お前達に飲ますとどうなるかが分からないから無理なんだ。」
「そうか、仕方がない。頼むぞウェル。」
「言われなくても!!」
ウェルは続けざまに矢を放つが、黒騎士が発生した靄によって、黒騎士に届く事なく爆発した。
「一度もらった攻撃など効かぬ!」
「くそっ、やっぱり本物には敵わねぇか。」
有効な方法が思いつかない状況に立たされたウェルだが、相手に隙を見せない様に攻撃は続けた。
「目障りな攻撃だが、効力が弱まってきたな。」
「ああ、時間切れか…。」
「次のやつを飲んだら良いんじゃないか?」
「いや、少しの時間をおかないと効果が出ないんだ。」
「とりあえず、奴をなんとかしないとな。よしアレを使うか。」
「まだ使用する時じゃないけど、仕方がないか。」
ウェルの攻撃が少し止まった隙を狙って、黒騎士は衝撃破を飛ばしてきた。衝撃破は仲間に命中し、身体を切り刻みながら弾き飛ばした。
「大丈夫か!?」
「くっ!!な、なんとかな。」
「これでもくらえ!!」
もう一人の仲間が黒騎士に向けて丸い物体を投げつけた。その物体は黒騎士の頭上を越えて背後に落ちるが、そこで大爆発が発生し、大量の煙も広がった。
「ぬぁ!!」
爆発の勢いは大きかったが、爆発した場所が幸いしたのか、建物を破壊する事はなかった。
大爆発に巻き込まれた黒騎士は壁に激突するが、すぐに体勢を整えた。
「その様な物を持っているとは。ん?」
煙が消えて周囲を確認すると、ウェル達の姿は消えていた。
「逃がしてしまったか。しかし、追いかけるのみ!」
黒騎士はウェル達が自身を横切ってフロアを抜けたと判断し、食堂へと走っていった。




