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希望光をさがして  作者: 須雄田 脩二
29/45

29.幻想とルードに向けて

ルネは雪が積もっている原っぱに立っていた。厚着をしているわけでもないのに不思議と寒くはなかった。

「ここはどこだ?」

起きたばかりの貧血の様に、少し意識が朦朧としている。とりあえず周りを確認するが、真っ白な雪が広がっているだけで他は何も見えなかった。

背後には大きな木が一本だけ立っており、それにもたれていた事が分かった。

木には沢山の枝と葉をつけており、大きく手を伸ばしてるように見える。

木の全体を確認していると、一本の枝に人が座っているのが見えた。その人は、ルネをじっと見ていた。

「あんたは誰だ?」

「そっか分からないんだね、僕は君をいつも見ているのに。」

見たところまだ10歳くらいの少年だが、ルネの記憶にはまったく存在していなかった。

「遠くて顔がはっきりと見えない、下りて来い。」

「それはまだ出来ないよ。」

ルネは「まだ」という言葉に引っ掛かった、からかっているのだろうかと思う。

「大丈夫、僕は君の味方だよ、ずっと君のそばにいる。少し助言しておくけど、今から行く場所には君が知ってはいけない事がある。でも知った方が良いとも思う。」

「何を言っているんだ?わけがわからない。」

「そうだね。知りたくないと感じたら、すぐに引き返した方が良いよ。さっきも言ったけど、僕は君の味方だから、危険な目には合ってほしくないな。」

こいつはよく分からない奴だと思ったので、話を変えようと考えた。

「この雪原はどこなんだ?なぜ寒くない?」

「君の感情の中とでも言っておくよ、想いが強くなると現れる。」

「私の感情の中?まったくわからない。じゃあ夢というわけか、どうしたら覚める?」

「そうだね、夢と思ってくれていいかも。ただ、僕の話は受け入れてほしいな。」

「そんなのは私が決める事だ。だから、ここから出るにはどうしたらいい?」

「久しぶりに会ったんだし、もう少し会話したかったけど。仕方がないなぁ。」

枝から身を乗り出した少年は、真っ逆さまにルネへとダイブしてきた。

「ちょ、危ないぞ!」

「また会えた時はもっと話そうね。それまでは、どうか無事で。」

少年はルネに近づき、人差し指をチョンとルネの額に置いた。触れたとたんにルネの姿は消えていった。


ウェル達が作戦を開始する少し前、リネアはルードの近くまで来ていた。

「単独で出来る事は限られている。事を起こさずにラウバに会わないと。」

外堀を囲う城壁まで辿り着いたリネアは静かに詠唱し、スッと城壁の上まで飛び上がった。

城壁の上には兵士が一人いたので、リネアはサッと相手を眠らせる。

「こんなにも手薄な所とは…、よほど自信があるのだろう。」

外堀も簡単に飛び越え、街の路地裏にそっと入り込む。

「ここを通ればすぐ内壁に出るはず、一気に仕掛けよう。」

ルード城を囲む内堀に来た時、中で火の矢が飛んでいるのが見えた。

「他の組織が動いている?これは好機かな。」

リネアは先ほどと同じ様に、人目の付かない所から内堀を越えていった。


ルネは重たそうなまぶたを開いた。

風がビュービューとすごい音を立てている。そして、今度は随分と寒く感じた。

服装を確認するが、特に変わった様子はなかった。目の前にロウがいるのがわかった。

「起きましたか、そのまま座っていてください。あと少しでルードに着きます。くれぐれも落ちないでくださいね。」

どういう事だ?と感じたルネは周囲を確認した。

「まさか、空を飛んでいる!?」

自分が座っている場所をよく観察してみると、ふさふさの毛の上という事がわかった。

この毛のおかげで凍える寒さにはなっていないのがわかる。

ロウの前を確認してみると、大きな顔が見えた。

「えっ、ドラゴン…!!」

「ああ、この方は龍神様です。無理をお願いして、私たちを運んでくれています。」

先ほども理解できない状況だったが、今も全然分からない状況という事をルネは感じた。

「龍神様?この様な存在を従えるなんて、ロウさんって何者ですか?」

「あ~、これについてはまたの機会でお願いします。それとこの事は内密でお願いしますね。」

空から地上を眺める事なんてなかったルネは、この信じられない出来事をちゃんと記憶しておこうと思った。

「世の中には説明出来ない事が沢山あるんだな…。」

「ルードが見えてきました。降りますので、ちゃんと掴まっていてください!」

そう言われたので、ルネは龍神の身体をぎゅっと掴んだ。龍神と呼ばれた存在はグゥっと鳴き声を上げて、ルードの近くにある広場へと降下していった。

「ここからは歩いてルードに入りましょう、さぁ降りてください。」

龍神から広場に飛び降りる二人、それを確認すると龍神はまた空へと飛び立っていったので、ロウ達はそれを見送った。

「貴重な体験だった…。」

「体調は大丈夫でしょうか?ルードに入ったら一度休憩をとりましょう。」

「はい、急ぎましょう。」

ロウを改めて確認してみると、フード付きのコートに肩掛けの鞄と、軽装なので大丈夫かなとルネは思った。

「…風の息吹を与えたまえ、ウィンドブーツ。」

「わっ。」

ロウとルネの足元につむじ風が発生して絡みついた。

「これで小走りでもスピードが段違いになります、行きましょう。」

小走りで移動すると、普通に走っているかの様なスピードが出た。

「(この人といると、何でも可能にしてくれそうな気がするな。)」

ルネは当たってくる風を気持ちよく受け止めながら走り、ルードへと急いだ。


スムーズに武器庫を確保したベルドイ達は、大広間に出て兵士達と交戦していた。

大広間にいる兵士の人数は5人、それぞれ中々の腕を持っていて、互いの連携によりベルドイ達は押され気味だった。

「ちっ、上手いことやられて、決定打を出せねぇ。」

ベルドイは大斧を振るうが、兵士達はサッと躱して小剣で反撃してくる。それを腕に巻きつけた盾で防ぎ、弾き返した。

隙を狙って、距離を置いている仲間が矢を放つが、兵士達が身に着けている鉄鋼の鎧を貫く事が出来なかった。

ティードはその仲間の後ろで待機をしていたが、魔法の使用について迷っていた。

「このままじゃ、やられてしまうかもしれない。どうしようか…、そうだ。」

ベルドイ達が打ち合っていると、背後から水が降りかかってきた。

「なんだいきなり?おっ、身体が軽くなってきたぞ。」

素早く動ける様になったベルドイは、相手の頭に渾身の拳をぶつける。急に速くなったベルドイの攻撃を避けることが出来ず、拳を受けて弾き飛んだ。

「よっしゃあ!!一気にいくぞ!」

陣形を乱された兵士達は、そのまま立て直す事が出来ず、ベルドイ達の攻撃によって次々と倒された。

最後の一人になった兵士は交戦を止めて逃げ出していった。

「よし、やったな。それにしてもさっきの水は何だったんだ?」

「後ろから水が入ったビンが飛んできたから、こいつでしょう。」

仲間はティードを指差していた。

「はい、僕がやりました。気付け薬を皆さんにと思って。(上手くいったぞ。水と一緒に魔法を使ったら、誰も気付かなかった。)」

「そうか、ありがとよ。だが今度は合図でもくれや、後ろには目が無いからな。」

「あっ、わかりました。」

「ここを確保しつつ、次は客室だ。そこに異国の野郎がいるという話だ。」

「(ここまでは順調ですが、ウェルさんは大丈夫でしょうか…。)」

大広間で二人が待機する事になったので、残る三人で客室に侵入する事になるが、途中でウェル達と合流する事になっていた。

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