28.深夜での作戦
街の西端にベルドイ達が集まっていた、ティードもここに集合している。
満月が空高く昇っている時間である。
人数はティードを含むと七人で、それぞれ得意の武器や道具などを持参している。
「あと少し経ったら作戦を開始する。野郎ども、準備はいいか?」
ベルドイの言葉に集合した皆がコクリと頷く。
「坊主、今回の主役から何か激励の一言を言ってやれ。」
「え、主役?それと激励ですか、そうですね…。」
ティードは少し言葉を考える。皆はティードが言い出すまで静かに待っていた。
「皆さん、くれぐれも自分を大切にして下さい。自分を一番に優先して、明日も元気でいましょう。」
「気合の入る言葉じゃないが、まあいいだろう。よし野郎ども、やってやるぞ!」
「おうよ!」「まかせとけ!」
いよいよシェリー奪還作戦が開始された。それぞれ準備していた道具を背負いながら、先ずは城壁へと向かう事になる。
ベルドイの後ろをティードはついていく事にした。向かうのは城壁を越えた先にある武器庫だ。
武器庫を制圧しておく事で短期決戦に有利と考えたからだ。
城壁の手前も街の周りを囲っている様な堀があり、そこには毒素を含んだ水が溜まっているとの情報を聞かされていた。
その噂が本当かどうかは分からないが、掘の奥にある城壁には兵士が立っておらず、手薄になっていた。
「連中は、ここを越える事なんて出来ないと思って、呑気でいやがる。」
「どうやって城壁へと渡るのですか?」
ティードが質問する。
「まあ見ていろ。よし、やれ!」
仲間の一人がロープをくくり付けた矢を、城壁に向けて放った。
矢じりはかぎ爪のような加工が施されており、矢は城壁の溝にザクっと刺さった。
引っ張り確認をして、強度に問題無い事を確認すると、ロープをつたい始めた。
「一発で決めるなんて凄いです。」
「これ位の事、少し鍛えたら誰でも出来る。ウェルからもっと凄いやつをいっぱい見させてもらってるだろう?」
「え?ウェルさんは強いと思いますけど、凄いとは感じませんが…」
「あいつ、楽な生き方しているからな。随分と衰えているに違いねぇ。よし、お喋りはここまでだ、お前も続け。」
仲間達は数本ロープを用意して、それぞれのロープにぶら下がりながら進んでいた。
ティードもしっかりとロープに掴まり、恐る恐る慎重に進み始めた。
「まさか、すぐにまたこんな事をするなんて…。」
「下を見ないように前だけを見て進め、落ちる事を考えると本当に落ちるぞ。」」
後ろからベルドイの声が聞こえてくる。ティードはその声で、掘に溜まっている水が余計に気になってしまった。
慎重に進み、なんとか城壁の上に辿り着いたティードは、もう休憩したいと感じていた。
仲間達はサッと矢とロープを回収し、城の中へと続く扉に進み始める。
少し進んだ先に見張り台があり、そこから侵入する事になっていた。
「階段上と右奥にいます。」
見張り台の扉を少し開けて、中を覗いて確認した仲間の一人が言った。
「狙えそうか?」
ティードの肩越しにベルドイが声をかける。
また、矢で対応するのかな?とティードが思っていると、仲間は小型の銃を用意している事に気が付いた。
「まさか殺すのですか?」
「それは麻酔銃だ、さすがに血を見るのは好きじゃない。」
ティードは心の中で良かったと思った。
「距離は問題なさそうです、やりますか?」
「一撃で頼むぞ。中に侵入したら、ボイとシックはこの塔の確保を頼む。」
「たった二人でここを?中に何人いるか分からないのに危険じゃないですか?」
ベルドイの指示にティードが反論する。
「情報ではここの塔は六人らしい、そのくらいの人数なら大丈夫だろ?」
ベルドイはボイとシックに向いて確認する。二人は迷う事なく頷く。
「情報って、内通者がいるのですね。すごいです。」
「お前を無事に妹さんの所に連れて行ってやる、俺達にまかせておけ。」
「……すみません、少し出しゃばりすぎました。」
ティードは顔を俯かせながら答えた。
「よし、いけ。」
「了解。」
麻酔銃を持った仲間は、両手でしっかりと銃を構えて、慎重な動作で一発放った。
放たれた弾は階段上にいた兵士の首元に命中し、兵士はすぐに眠りに落ちた。
続いて奥にいる兵士も一発で対応し、フロア内にいる兵士達は行動不能になった。
「問題なさそうです。」
「よし、突入開始だ。やばいと思ったら各自判断で撤収しろよ。」
「了解!」
ベルドイ達は勢いよく城内に突入する。ティードは次々と初めての体験が起こるので、ドキドキが大きくなってきた。
ウェルはベルドイ達とは正反対の東端に来て、仲間達と合流していた。
こちらの数はウェルを入れて三人と少なめであるが、南側に五人、北に八人と計二十二人でこの作戦が行われている。
とても少人数での作戦にみえるが、情報によるとルード城内にいる兵士は二、三十人程度との話なので、ウェル達は対応可能と判断している。
ウェル達はベルドイ達の合図の後に対応する事になっているので待機中である。
「ウェル、どうしてこんな厄介事を引き受けたんだ?見て見ぬふりも出来たんだろ?」
仲間の一人がウェルに話しかける。この仲間とウェルは、数年前に知り合い、ある出来事で意気投合した仲である。
「あの場面で助けに行かないなんて選択肢が無いだろ。俺はまともな男になったんだよ。困っている人を助けるのは当然さ、お前だって引き受けているじゃないか。」
「まあ、そうだな。お互い変わったな。」
「それだけ大人になったんだ。」
「外への門は制圧した。」
三人のうちの一人が走ってきて、そう話す。
「仕事がはやいことで。あっ、火の矢が上がったぞ。」
その仲間が城の方を指差して答えた。火の矢はベルドイ達が武器庫を確保したという合図である。
「よし、俺らもやりますか。」
「派手にできないのは残念だけどな。」
ウェル達の役目は黒幕を確保して、悪事を暴く事である。それ以外の仲間達は、外への門の確保や街でのかく乱などの役割に当たっている。
「よし、俺らも始めるとするか。この国の平和を取り戻すために。」
「おうさ。」
ウェル達も城を囲っている堀を越えて、城への侵入を開始した。




