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希望光をさがして  作者: 須雄田 脩二
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27.一時の休息と薬の完成

ヘムリット洞窟道のムシャール側入口には兵士の姿が見えなかったので、ルネは容易にムシャールに辿り着く事が出来た。

「ここを抜けたらもうすぐだな。」

太陽はすでに降りてきていた。ルネは街の人に警戒されないよう、平静を保って街の中を歩いた。

街の人を窺ってみると少し話し声が多い気がした。せっかくなので女性三人で話している所に情報収集を持ちかける事にした。

「…なんか物騒よね。」

「ほんと、何かが始まるのかしら。」

「こんにちは、はじめまして。私、田舎村から来たのですけど、皆さまが話している内容が気になりまして。見知らぬ者が割って入ってすみません。」

ルネが話しかけると、三人は「おかしいんじゃないの?」とでも思っているかのような表情でルネを見ていた。

「あら、はじめまして。あなた、黒ローブ集団を知らないの?」

警戒されずに話してくれたので内心助かったと思うルネ。

「黒ローブ集団ですか?」

「そうよ、昨日のお昼前に、大通りをリッカ村の方に歩いていったのよ。十人位はいたと思う。」

「私はルード方面から来ましたけど、すれ違った事は無かったですね。(昨日のお昼か、手紙を拾った時は夕方近かったから辻褄が合いそうだな。)」

「とても不気味だったから、誰も相手にはしていなかったわ。」

「それでね、また夜に現れたのよ。今度はルードの方へ向かっていったわ。」

「そうなのですか、それは不安になりますね。(黒ローブ集団が妹さんをさらったのか。)」

「何か起こりそうだと思わない?ほんと、気味が悪いわ。」

「でも私達にはどうする事も出来ないし、気にしてても仕方がないのよ。」

「確かにそうですね、私達に危害が及ばないと良いですよね。」

「もしかして、あなたはこれからリッカ村に行くの?」

「あっ、そうでした。急いでいる事を思い出したので私はこれで失礼します、貴重なお話の時間を失礼しました。」

「気を付けてね。」

ルネは三人の女性に会釈し、リッカ村方面へと向かった。無事にムシャールの出口に辿り着くと少しため息を吐いた。

「昼間から行動する連中なのか、手強い相手だろうな。」

リッカ村へと続く道に入ると、ルネは急ぎ足で歩き始めた。


「さてと、あとは夜を待つだけだな。」

ウェル達は支度を済ませて、小綺麗なレストランで食事を摂っていた。

他の席には、少し着飾った人達が食事をしているのが見える。

「いよいよだと思うと、食事が喉を通ってくれなくなってきました。」

「そういう時はこれを食べればいい、癒しの効果があるって言われている。」

「このサラダがですか?色とりどりで美味しそうですけど。」

ティードは目の前に置かれたサラダを一口食べた。

「うわ、すごく香りが広がりますね。喉までスゥーっと通ってきます。」

「どうだ、リラックスしてくるだろ?」

「はい、落ち着いてきます。一体何が入っているのですか?」

「この葉っぱはカンシーといってな、西の国シェルロイで栽培されている野菜だ。香辛料としても使えたりする。」

「へぇ、勉強になります。」

「この肉だって美味しいぞ。」

ウェルが差し出してきたステーキ肉を食べるティード。

「すごく柔らかくて、すぐ溶けました。ソースが良い感じで美味しいですね。」

「これはモグラの肉だ。」

「えっ、あのモグラですか?」

「食べる為に飼育されているモグラだから、肉が美味しくなるように管理されている。野生のモグラなんて食べてみたけど、相当マズかった経験をした事がある。」

「ちゃんと管理したら食べられるようになったという事ですね、すごいです。」

「ルードには色々な食材が集まってくるから、飯が楽しくなる。明日にも良い物食べさしてやるよ。」

「はい、楽しみにして頑張ります。」

「作戦が終わった後の飯は何倍も美味しいぞ。さてと、実行時間まではまだ少しあるな、ちょっと宿に戻って仮眠でも取るか。」

「いいですけど、寝過ごさないでくださいよ。」

「ちゃんとお前が起こしてくれるだろ。」

「もう、まったく。面倒な人ですね。」

「じゃあ一人で起きれるような仕掛けでも用意するか。」

「危ない事はやめてください。」


「なんとか今日中に着く事が出来た。」

ルネがリッカ村に着いた時は、日が沈んでから随分と時間が経っていた。

「この時間は人気がないから、自分で探すしかないか。」

小さい村なので、少しうろうろしていると看板がかかっている家を発見した。

「安らぎの診療所、ここで間違いないな。明かりが点いていないが、ロウさんはここに住んでいるって聞いていたが?」

診療所のドアを確認する。鍵がかかっていないようなので、ルネはそっとドアを開き、中の様子を窺った。

「(特に気配を感じないな。)」

忍び足で中に入り、もう一度周囲を確認した。真っ暗なので、特に問題なさそうだと判断し、奥へと進む。

「ロウさん、いらっしゃいますか?ロウさん。」

とりあえず明かりを用意しようと思い、ルネはカバンの中から小さなランプを取り出して、火を灯した。入口周辺は特に荒らされた形跡もない。

玄関を抜け、待合室の異常もない事を確認し、ルネは診察部屋のドアを開けた。

診察部屋に入ると仰向けに倒れている人を発見したので、ルネはすぐにそばへと駆けよった。

「あの、大丈夫ですか!?」

揺さぶってみるが反応はない。倒れている人は男で長身、それと白衣を着ていたので、この人がロウさんだとルネは判断した。

外見には特に傷は無い。呼吸をしているのを確認したので、眠っているだけかなと考え、もう少し対応する事にした。

「あの、しっかりして下さい!」

少し大きく身体を揺すると、男の身体がピクリと動いた。

「……、どうやら随分と眠っていたみたいですね。」

「よかった、気が付いて。」

男は目を開くと、すぐにルネの姿を確認した。

「助けて頂きありがとうございます。えっと、どちら様でしょうか?」

東方の生まれと聞いていたので、話し方が違うだろうとルネは思っていたが、全然違和感無い言葉だったので少し驚いた。

「そんな事より、お身体は問題ないですか?」

「まだ少し眠気がある位ですね。それ以外にやられた形跡は無さそうなので大丈夫でしょう。」

呼吸の乱れも特に無さそうなので、大丈夫なのだろうとルネは思った。

「寝たままでは話し辛いですよね、失礼。」

ゆっくりとした動作で男は起き上がり、近くにあった椅子に座る。

「どうぞ、あなたも腰かけて下さい。」

男は手を差し出してルネに勧めた。ルネは自分だけが立っているのも変なので、椅子に座る事にした。

「えっと、あなたがロウさんで間違いないでしょうか?」

「ええ。はじめまして、ロウといいます。ここで医者をやっています。」

「会えて良かったです。では、さっそく本題に入りますが大丈夫ですか?」

「はい、お話ください。」

ルネはこれまでの事をしっかりと伝える為、考えながらゆっくりとロウに伝えた。

「なるほど、ウェル達のお世話をしてくださりありがとうございます。」

「ロウさんはどうして眠っていたのですか?」

「不意打ちをもらいましたね。後ろから何かを吹き付けられたと思います、なぜ殺されなかったのかが不思議です。」

「本当に良かったです。急に色んな事が起こって驚いています、ルードで何が起こっているのか…。」

「魔界とを繋ごうとしているのかもしれないですね。」

「えっ、魔界?」

冗談だろうとルネは思った。

「そんな事よりも薬を作りましょう、さぁ花を。」

「そうでした、すみません。」

ルネはリュックの中からトルネードフラワーを取り出して、ロウに渡した。

「トルネードフラワーで間違いなさそうです。早速作業に入りますので、あちらで待っていて下さい。」

ルネは素直に従って隣の部屋へと入った。

部屋の中は本で埋め尽くされており、中央にはリラックスできそうなソファが置かれている。

書斎か勉強部屋だろうとルネは考えた。

ルネはちらっと本を眺めてみた。ほとんどが歴史に関する本で、医療関係の本は少ししかなかった。

一通り見た後、ソファに座って目を瞑った。そういえば、睡眠が足りていないなとルネは思った。

気持ち良かったので、眠りに入ろうとした時にロウが入ってきた。

「お待たせしました、恐らくこれで治るはずです。」

「お疲れ様です、早速ルードに届けに行きます。」

「ウェルさんは私を連れて来いとか言ってませんでした?」

「そういえば、そんな事を言ってました。」

「相手はなかなか手強いと思います。少しでも戦力は多い方が良いでしょう、すぐに用意しますので、これでも飲みながらお待ち下さい。」

「あ、ありがとうございます。」

ロウから渡された飲み物を飲むと、少し元気が出た様に感じた。

「話に聞いていた通り、頭が良い医者だな。」

ルネはそっと呟いて、また目を瞑った。

また少し経った後、身支度を終えたロウが入ってきた。

「少しは疲れが取れましたでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。」

「でも眠たそうですね、少し休んだ方が良い。」

「時間がありません、すぐに行かないと。」

「大丈夫。あなたが休んでいる間、私が運びます。」

「えっ、どういう事ですか?」

ロウはルネの目の前に立つと、ルネの額に手を当てた。

「なっ、何を。」

少し警戒はしたが、ルネは拒む事はしなかった。

「そのままじっとしていてください。」

ロウの手から淡い光が発生したかと思うと、すぐにルネは眠りに落ちた。

「では、行きますよ。」

ロウは眠っているルネを抱き上げ、診療所から出た。

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