24.魔法の利用方法と目標達成
頂上に到着したウェル達は手分けしてトルネードフラワーを探すことにした。
周りを見渡すと、オブラール山と似たような高さの山が連なっている。少し遠くにムシャールの街も見る事ができた。
ルード方面は周囲が高い城壁に遮られていて、王都内を見る事はできなかった。
「そっちはどうだ?」
ウェル達は少し深い雪の中を探しているため、探すのに手間取っていた。
グローブをしているが、手は冷たさで凍傷になる可能性もある。
「まったく見つかりそうにないよ。」
「こっちもですね、雪の中にはないかもしれませんね。」
探し始めてから半時間程経つが、花一つ見つけることが出来ていない。
「やみくもに探しても絶対に見つからない気がしてきた、限定的な場所にあるとか。」
「ロウさんはオブラール山頂にあると言っていたんですよね?」
「そうなんだけどな、でもこんな状況じゃあ厳しいな。」
雪の下から姿を現した土の茶色と雪の白色で、綺麗な模様が出来ているのには少し癒される。
「何か、探しやすい道具を持っていれば良かったが。」
「ティード、物を探し出す魔法なんてないのか?」
ウェルとルネは少し休憩しながら話す。
「知っていたらすぐ使ってますよ。あっ、でも、もしかしたら。」
ティードはリュックの中から一冊の本を取り出した。
「それは?」
「魔術書です。古代民族が使っていた魔法がこれに書かれていて、発動方法も少し記載されています。」
「それは便利だな。それだったら俺でも使えるんじゃないのか?」
「血筋が違う人が使えるわけがないですよ。そんな事より、えっと。」
ティードは見逃さないように、魔術書のページをゆっくりとめくりながら確認する。
「あっ、これが使えるかもしれない。」
ウェルが横から本を覗きこんで確認する。
「字は全く読めないが、この絵は何かを発見できそうな絵だな。」
本に書かれている文字は、古代民族が使っていた文字であると、ティードは説明した。
「探したい物をイメージしながら呪文を唱えると、それが近くにある場合に場所を教えてくれる魔法のようです。」
「この絵の通りの花だったら、場所を教えてくれるという事だな?」
ロウが描いたトルネードフラワーの絵を見て話すルネ。
「そういう事ですね。」
「この魔法は使えそうなのか?」
「えっと…おそらく使えると思います。」
「見つかるかどうかは、俺達の運気次第だな。」
「では、準備します。」
ティードは呪文を覚えるため、繰り返し読み始める。
「しっかしここまで寒いとはな。この辺りはずっと雪が積もっていたりするのか?」
「いや、夏のわずかな時間だけ雪が溶ける時がある。その時にはたくさんの花が咲き乱れるはずだ。」
「もしかしたら、トルネードフラワーも雪が解けた時にしか咲かないのかも。」
「……咲いているはずだ、信じるしかないな。」
「よし、大丈夫そうだ。お待たせしました、早速やってみます。」
「頼んだぞ。」
ティードは片膝を地面につかせ、両手を前に出した。ウェルとルネは魔法の唱え方にも色々とあるんだなと思った。
「…その繊細なる知能にて、正しき道を示す事を願う。」
両手より小さな青い光球が二つ発生し、ウェル達の周りを飛び交い始めた。
「その光が探してくれるわけだな。」
光は山頂付近を三、四周旋回すると、ウェル達からは見えない所へと降りていった。
「あっちにあるのか?」
三人は光が飛んで行った方向を確認しに行ってみると、そこは崖になっていた。
崖下を覗き込むと崖下には川があり、勢い良く水が流れていた。
「光はどこにいった?」
「あそこだ、右下で光っている。」
ルネは四つん這いになり崖下を指差した。指差した先は随分と下の岩が突き出た場所で、その上で光が回っていた。
「花は直接見えないが、あそこに降りていくのは大変だぞ。」
「ウェル、鉤爪とロープを使えば取りに行けるんじゃないか。」
「あの場所までは…ロープが届かないな。」
「花を確認する事が出来れば、採取可能と思います。」
「そういう魔法があるという事か?」
「はい。」
「ふと思ったんだが、魔法は何度でも使えるのか?」
「基本的には僕の体力が続く限り使えるはずです。ですが、契約魔法のように約束事をしなければいけない魔法は制限があります。」
「そうか、限りなく使えるのは頼もしい半分、恐ろしくも思えるな。」
「でも、魔力という奴も関係するんだろ?」
「そうですね、僕達の長はとても強い魔力を持っていましたが、強すぎる魔力の為、体力の消費も激しいと聞きました。」
「なるほど、魔法を持つ者どうしは魔力を感じ取れるのか?」」
「僕は相手の力量まで読み取る事は出来ません。でも強くなれば感じれるのかもしれません。」
「黒騎士達がどれくらい強いかは、ルードに行けばはっきりするはずだ。そこには親玉もいるはずだ。」
「ウェル、それは何をしているんだ?」
ウェルは会話をしながらロープの先に輪っかを作っていた。
「投げ縄さ、こいつを使って、あの切り株に引っ掛ける。」
ウェルは少し左下に見える、自然に折れて出来たと思われる切り株を指差した。
「なるほど、それからどうするんだ?」
「俺とルネがロープを引っ張っておいて、切り株の所までティードが降りていく。あそこまでいけば花が見えるんじゃないかと思ってね。」
「そうだな、あそこなら岩の陰に隠れている花が見えるかもしれない。」
「僕が行くのですか!?そんなの無理ですよ。」
「一番軽いティードしか出来ない事だ。シェリーちゃんの命が懸かっているんだ、やるしかないだろ。」
「そういう事だな。」
ウェルは、出来た投げ縄を頭上で回転させ、切り株めがけて投げ放った。
投げ縄は見事切り株に引っ掛かり、ウェルは引っ張って問題ないか確認した。
「大丈夫そうだ、頑張れティード。」
「…わかりました。ロープ、ちゃんと持ってて下さいよ。」
「まかせとけ。」
ティードはしっかりとロープを掴み、一度崖を見下ろし深呼吸をした。
「こんな所で死ぬ人生なんて御免です。」
ティードは崖にゆっくりと足を掛けて下り始めた。
「もっと足に力を入れろ、壁に立つような感じで下りるんだ。」
下りる事にとても集中しているのか、ティードはウェルに返事をしなかった。
「空を飛べる魔法が使えたら、簡単に採りにいけるのにな。」
「そんな事もできるのか?」
「ああ、この前ティードがそんな魔法もあると言っていた。そんな事が出来たら反則だよな。」
「一体どういう原理で飛べたりするんだ…。」
ティードは切り株がある足場まで、あと半分の位置まで下っていた。
「あいつ、意外と度胸があるじゃないか。」
「妹を守らなければいけない立場だからな。あんな身体でも結構苦労してきたと思うぜ。」
「そんな苦労がない世界に変えていかないといけない。」
「俺にはそういう事向いてないけど、少しは良くしていかないとだな。」
「そうだ協力し合う事が大切だ。」
「皆が幸せと感じる世界ね…」
「ウェルさん、なんとか着きましたよ!」
崖下を確認するとティードが手を振りながら声をかけていた。
「よくやった、そこから花は見えるか?」
ティードは光が回っている方向を向いて確認する。
「あ!」
「あるのか?」
「見えます!竜巻みたいな螺旋状の形をした花が!」
「よし、早速ゲットしろ。」
「はい!」
ティードは呼吸を整え、呪文を唱える体勢になった。
「頑強なる茨よ、その自在に動く蔓を用いて、万物を捕えたまえ!」
呪文を唱え終えると、ティードの手先から何本もの茨が現れ、一直線にトルネードフラワーを目指した。
トルネードフラワーに到着した茨は、花に巻き付いてそっと抜き取り、それをティードのもとへと運んできた。
「よし、やったぞ。」
ティードは茨が持ってきた花をそっと手で掴み取った。
「よくやった、ティード。じゃあ慎重に上って来い。」
「またこれで上るのですか…。」
数分後、ウェル達がいる場所まで戻ってきたティードは、トルネードフラワーを二人に見せた。
ウェルはロウに描いてもらったイラストと花を照らし合わせた。
「よし、間違いないな。」
「これでシェリーが助かりますね。」ティードはとても喜んだ。
「まだ決まった訳じゃない、急いで山を下りよう。せっかく花を手に入れたのに、天気が悪くなって帰れなくなるといけないからな。」
三人が山を下りようとした時、目の前に封筒が落ちているのに気がついた。
「こんな物、さっきはなかったぞ。」
ウェルは封筒を拾い上げると、封を破って中に入っていた手紙を読み上げた。
「少女は確保した、少年と共にルードへ。」
「少女ってシェリーの事でしょうか?少年は僕?」
「だとしたら、シェリーちゃんは攫われてしまった訳だな。ロウは何をやっていたんだ。」
「ルードはオブラールから近い。急いで行こう。」
「まあ待て、シェリーちゃんを救い出せても薬がないと意味がないだろ。ロウも一緒に攫われていたら話は別だけどな。」
「そうか…。」
三人は少しの間考え、知恵を絞った。
「じゃあ、二手に分かれるしかないな。」
「俺もそう思った。」
「え?どういう事ですか?」
「シェリーちゃんを助けに行くのと、ロウさんに薬を作ってもらいに行くのとで、分かれるという事だ。」
「確かにそうですね、僕は指名されていますからルード行き確定ですよね。」
「少年と共にという事は、一緒にいる俺も指名されてそうだな。」
「そうだろうな、じゃあロウさんの方に行くのは私だな。」
「巻き込んで悪いが、頼めるか?」
「ロウさんは村に行くとすぐに分かるんだな?」
「村の皆が知っている、誰かに聞けばすぐ分かるはずだ。」
「そうか、なら問題なさそうだ。わかった、私が薬を取りに行こう。」
「ロウがいなかったら、自分の街に帰っていいからな。」
「ここまで関わったんだ、ルードにも行ってやるさ。」
「ありがとうございます、じゃあ急いで山を下りましょう。」




